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すべてが見えてくる飛躍の法則 - ビジネスは、〈三人称〉で考える。

著者: 石原 明
定価: 1,470円
出版社: アスペクト
ISBN-10: 4757220936
ISBN-13: 978-4757220935

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対談 <第3回>株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充 氏

 『すべてが見えてくる飛躍の法則』(アスペクト/刊)の著者である石原明さんの対談連載“人称対談”第三回となる今回は、株式会社ユーグレナの代表取締役社長である出雲充氏をお迎えした。

 ユーグレナはミドリムシの学名。ミドリムシは栄養素が豊富なことから食用としても期待されているほか、プラスチックの生成やバイオ燃料、医療技術まで幅広く使われる、奇跡の微生物。出雲氏は、それまで不可能とされていたミドリムシの食用屋外大量培養を世界で初めて成功させ、製品化、事業を展開している。
 今回の対談では、そんな出雲氏に石原さんが深く切り込んでいく。
(以下敬称略)

■ ミドリムシへの執念が世界初の快挙を生む

石原 「まず、ミドリムシを使ったビジネスをしようという出雲さんの斬新な発想に驚きました。でも、ミドリムシはとてつもない可能性を秘めた微生物で、近い将来、社会を変えてしまうかもしれないすごい存在なんですよね。
もともと社会人になる前からそういったビジネスへの嗅覚みたいなものを持っていらっしゃったんですか?」

出雲 「いえ、そうではないですね。多摩ニュータウンに育った普通の子どもでした(笑)普通の核家族で父親はサラリーマン、周囲にはもちろん経営者もいないし、資産家もいなかったですから、ビジネスというものに触れる機会もなかったです」

石原 「じゃあ、今、こうして社長をされているのは…」

出雲 「当時から考えれば、まさに想定外ですよ(笑)」

石原 「でも、その中で上場されたのだから、ビジネスの才覚があったとしか思えませんよ(笑)」

出雲 「私の性格的な部分もあるかも知れませんね。負けず嫌いとよく言われるのですが、実はそうではないんです。他人に負けることはあまり気にしていません。ただ、最初から不可能だとか、無理と言われるとカチンとくるんですよ」

石原 「ミドリムシの屋外大量培養もそもそも不可能と言われていましたからね」

出雲 「そうなんですが、不可能であるということも実証されていないんです。なのに、無理だ、不可能だと決めつけられる。そんな不快なことはないですよ」

石原 「そこから培養を成功させてしまったのは本当にすごいことだと思います。それで、出雲さんは大学卒業後に一度銀行に就職されるのですが、銀行に一度就職された出雲さんの片腕となる方がずっと研究開発を進めていらっしゃったそうですね」

出雲 「そうなんです。鈴木という人物なのですが、彼はすごいヤツです。私が銀行に勤めていた頃は、毎日夜と土日に鈴木の家に行ってずっとミドリムシの話をしていたんです。それで、全然ミドリムシが増えていないじゃないかとポテチを食べながら発破をかけていたんです(笑)」

石原 「ポテチを食べながらですか(笑)でも、非常に面白いですよね。おそらく鈴木さんは、出雲さんのそういった声がなければ、ミドリムシの屋外大量培養を成功させるのは難しかっただろうし、もし培養に成功できても、実用化に結び付かなかったと思います」

出雲 「そうなんでしょうかね(笑)でも、今でも会社内で一番仲良いのは鈴木ですね。弟みたいな存在です。彼はよく研究を続けられたと思います」

石原 「今はどのような体制でユーグレナという会社を経営しているのですか?」

出雲 「私を含めて5人、取締役がいるのですが、私以外全員専門分野を持っています。毎週行っている経営会議では、私以外の4人がそれぞれ自分の担当分野から課題と解決策を出して、私が最終的な意思決定を行っています」

■ 自分の周囲に仲間たちが集まってくる

石原 「そういったマネジメントスタイルになったのはいつ頃からなんですか?」

出雲 「ユーグレナを立ち上げたのが2005年で、最初は3人でやっていたのですが、2年前に新しく2人が加わりましたから、その頃からですね」

石原 「すごくユニークなマネジメントの方法ですよね。僕も仕事柄、さまざまな経営者とお会いするんですが、どうしても自分が中心になって活躍する組織をつくりたがるんですよ。でも、実際に成功しているのは、出雲さんのような、ある程度の部分までは人に任せてしまって、自分は意思決定をするというスタイルなんです。僕がプロの経営者だと思うのは、まさしくそういうタイプですね」

出雲 「ありがとうございます(笑)私の場合は、さっき言ったように経営に関しては素人からスタートしているので、周囲の助けがあってこそのものだと思っているんですよ。
今、『ワンピース』という漫画が人気ですけれど、まさしくその主人公のルフィみたいな感じなんです。まず、自分の大きな夢を語って、その言葉に共鳴した優秀な仲間たちが船に乗り込んでくる。私も同じで、ミドリムシで世界を救いたいという夢を話して、それを実現するために必要な人材が集まってきてくれたんです」

石原 「素晴らしいですね。でも一つ気になっていることがあって、まだ30代前半と非常に若いんですよね。その年齢からそのような立場にいることに、プレッシャーを感じることはないのですか?」

出雲 「それは全くないですね。私は、研究やマーケティングができる人、ビジネスができる人が私の考えに共鳴して、助けに来てくれたと思っていますから、彼らにできることを託して、頑張っていこうという気持ちの方が強いです。それが私にとって一番大事な仕事であることも理解していますよ」

石原 「それが出雲さんにとって大事な仕事だと理解したのはいつ頃のことですか?」

出雲 「最近のことです。東証マザーズに上場させていただいたのが昨年の12月20日だったのですが、その後にふと思い返すことがあって、弊社には大木という人物がいるのですが、彼が入ってきたのがちょうど2年ほど前のことでした。もともと証券会社にいたんですが、上場のお手伝いをさせて欲しい、2年で上場させると彼は言っていたんですね。それで数えてみたら、ちょうど2年で上場していて(笑)そこから周囲の人たちができることをしてくださったから、ユーグレナは上場できたんだと気づきました」

石原 「僕は今のお話を聞いて、出雲さんにある質問をしてみたくなりました。マネージャーという存在は今あるものを磨く人ですよね。では、リーダーどんな存在だと思いますか?」

出雲 「そうですね…。同じことを繰り返し言っている人でしょうか。『ワンピース』のルフィならば、『海賊王に俺はなる!』と繰り返すように」

石原 「僕は、リーダーという存在は誰も見たことのないところに人々を導く人だと思うんです。また、その存在はなりたくてもなれない」

出雲 「それは何故ですか? リーダーという天命を授かったからでしょうか」

石原 「それは出雲さんらしい答えですね(笑)リーダーはついてくる人がいなければダメなんですよ。リーダーという存在は、言葉は悪いですが、実は最初はただの変人なんです。そこから共鳴する人を惹きつけていって、応援してもらえる立場になっていく。そのステージが上がっていくたびに人格が変わるんです」

出雲 「なるほど、確かに変わりますね」

石原 「どんどん目線が高くなっていくんです。私の本の話になりますけど、『人称』という概念がまさしくその目線の高さを示すんですよ。出雲さんはミドリムシで世界を変えようとしていらっしゃいますけど、それは同時に未来をも変えることですよね。空間・時間ともに変えていこうという目線の高さは、本当のリーダーではないと持ち得ないんです。
自分のことしか見えていないという一人称からみんなスタートして、応援する人たちがどんどん集まってくると、それによって人称が上がり、人格も変わっていく。出雲さんはすでに七人称、八人称クラスの目線の高さを持ち合わせていると思いますよ」

出雲 「大変ありがたいお話ですが、八人称クラスとなると、恐れ多いですね(笑)」

■ 2030年には世界中でミドリムシが使われる

石原 「出雲さんのビジネスはものすごくインパクトあります。公共的ですし、これまでにない挑戦をしていらっしゃいます。それはすごいことですし、着実に成功に向かっていますよね」

出雲 「ただ、使命感や責任感はすごくありますし、世の中の皆さまの期待に答えないといけないというプレッシャーは感じています。ただ、自分自身は欲があまりなくて、お金を儲けるということより、ミドリムシで世界を豊かにしたいという想いが強いんです。ユーグレナの仲間たちもそう思っています」

石原 「これから会社にあるもの使って、どんなことを実現していきたいと思っていますか」

出雲 「私は2018年までに、ミドリムシ社会を日本に根付かせたいんです。ミドリムシがいるとこんなに生活が豊かになるということを知って欲しいんですよ。地球温暖化対策はもちろん、飛行機の燃料にもなるし、栄養豊富で食用にもなる。それを2018年までに知ってもらうのが最初の目標です。
その後、2030年までの12年間は、日本でミドリムシがじわじわと実用化していって、さらにそれが海外にも広まる。そして2030年には世界中で日本のミドリムシが欲しいという声があがり、ミドリムシが地球全体で使われるというわけです」

石原 「すごく壮大ですけれど、実現できそうなのがこれまたすごいことで(笑)また、僕は出雲さんに大きな期待をしているんですよ。それは、次の世代の経営者たちのリーダーになることです。是非、次世代のリーダーを育成する役目を担っていただければ嬉しいですね」

出雲 「ありがとうございます。それはワクワクしますね」

石原 「最後にお聞きしますが、そのような人生を達成できた秘訣を教えてくれますか?」

出雲 「そうですね。運…ですかね」

石原 「なるほど。そう思ってしまいますよね。努力とともに、運をちゃんとつかめるか。それは大事ですよね」

出雲 「自分自身、とても引きが強いということは自覚していますから(笑)」

石原 「では、今日はどうもありがとうございました!」

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著者: 石原 明
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