著者:太田 彩子
定価:1,365 円(税込み)
ISBN-10: 4479793704
ISBN-13: 978-4479793700
■―働く女性を支援している太田さんならではの書籍だと思ったのですが、まずは本書を執筆した経緯から教えていただけますか?
「今の時代、働く女性の環境が変化し『ずっとこれからも働きたい』と思う女性が急増しています。その背景には、労働人口の減少や長引く不況によって女性の社会進出が進んでいます。ずっと働きたい。しかし、この先、仕事とプライベート、家庭との両立は本当にできるのかな・・・。そう不安を抱く女性は多いです。いや、多いどころかむしろ、ほとんどの女性が先の見えない将来が心配でならないのです。
なぜ私たちはそこまで未来に不安を覚えるのでしょうか? それは、女性は男性と違って「就職」「結婚」「出産」など、「ライフイベント」によって働き方が大きく変わるからです。つまり、ずっと「今のままの働き方」では、実際問題難しいからなのです。
そんな、まだ経験しない「将来のライフイベント」をできる限り準備し、そのときそれぞれの働き方を知っておけば、今の不安をやわらぐことができる。そう信じ、筆をとりました」
―本書の中には太田さんのご経験もふんだんに反映されていると思いますが、そのためかすごく読みやすい印象を受けました。この本を書くにあたり、気をつけた点はありましたか?
「今まで私は、「営業」というジャンルをテーマに、主に「スキル」を中心にビジネス書を出版させていただきました。今回は、「これからも働く女性」を意識して、スキルというよりも、読み物やエッセー風に仕上げてみました。
そして何よりも大切にしていたのは、「あなたのために」と、読者お一人おひとりと共有したい想いがあることです。
あなたのために書いた本であり、この本を自分のものとして末永くあなたの側において欲しいと考えたからです。今までの本では、装丁に私の写真がありましたが、今回はその意味で私の写真をのせませんでした」
■―ここからは順を追ってご質問をしていきます。12月1日に就職活動が始まりました。女性として働きやすい職場に就職するために、女子学生は企業のどのような点を見るべきなのでしょうか。
「先日も女子大生向けに『ライフイベントに合わせた働き方』セミナーを開催し、ありがたくも大きな反響を頂きました。「就活前にこの話をきけて良かった!」という感想ばかりでした。これからは、私たちは自己成長のためにも、経済的にも、「長く働きつづける」という選択がメインになってきます。そんなときに、どれだけ女性が活躍できる環境があるのか、女性もリーダーになれるチャンスがどれだけ整っているか、出産した後も多様な形で働き続けられる環境があるかなど、ライフイベントも考慮した働き方が実現できる企業が必須条件です。
実際、あるデータによると女性の活躍が進んでいる企業は、そうでない企業よりも倍の利益を生み出しています。
では、どうやって見分けるのか? 企業のトップメッセージに注目してください。女性活躍が進んでいる企業は、間違いなくトップダウンで全社的に女性を応援していこうとする風土があります。そのような会社では女性はもとより、男性も活気づけられ、お互いの個性を尊重できる風通しがよい文化が存在します」
―女性が「自分らしく働く」ために、どのようなことに気をつけるべきですか?
「ほんの少し前までは、女性にとっての「幸せのかたち」は均一的でした。昔は、『いい女子大を出て、いい会社に入って、背が高くてたくさん稼ぐ彼とつきあい、結婚を機に会社を辞めて、30前には子供をつくる・・・』
ところが今の時代、このパターンは完全に崩れ去っています。社会が変化し、これからも働き続けたいと思う女性が増えると、選択肢が増えて、「幸せのかたち」も多様化しました。その「幸せのかたち」を考えて、自分らしく働くためには以下の3つのポイントを押さえることを薦めています。
1 どういう自分になりたいのか
2 どういう「仕事」をしたいのか
3 どういう「プライベート」にしたいのか
あくまでも答えは自由です。大きな会社に入ってキャリアを極めるのもいいでしょうし、自分は舞台女優になりたくてあえて正社員にはならないという選択肢もあります。
20代はバリバリ仕事をしたいでもいいでしょうし、30代になったら子育てをするために仕事をセーブするのもいいです。何を重視するかによって、おのずと働き方は変わってきます。
最初はぼんやりとしていて自分でも掴みきれないでしょうが、模索するなかで、きっとあなただけの「幸せのかたち」が見えてくるかもしれません」
―本書にも書かれていましたが、大学生の頃に子どもを出産されて、その後就職をされたそうですが、仕事と子育てを両立する上で最も大変だったことはなんですか? また、どのようなことに不便を感じましたか?
「特に子どもが小さいときでしたね。学生時代の結婚でしたので、親に心配をかけるわけにはいかないので頼れず、ママ友達も皆無で、本当に孤独でした。しかも、子どもが生後6か月のとき、難病であることが分かり、そのときはガーンと奈落の底に突き落とされたような気がしました。しかし、悲しみや孤独で長く引きこもっているわけにもいかず、働き始めようとするのですが、まず仕事が見つかりませんでした。小さな子どもがいる、親と同居ではない。何かあったときに仕事は本当に続けられるの?と採用面接者から幾度となく厳しい質問が続き、ことごとく面接も蹴り落とされました。
そしてやっとありがたくも営業職という立場で採用され、その嬉しさで絶対に今度は頑張ろうと覚悟を決めるのですが、やはり大変だったのは『常に時間が限られている』ということでした。子供が小さいうちは、特に持病があったため、幼稚園や保育園から呼び出されるのは日常茶飯事。今日は絶対に大切な商談があるから、という日に限って、子どもが高熱を出す…。お金もなくベビーシッターにお願いできる余裕などなく、しかも当時は病児保育サービスなんてありませんでしたから、途方にくれました。私が休んだり、早退したりすると、必ず職場の皆さんに迷惑や負担がかかります。そして営業でしたから、お客様にアポイントキャンセルをせざるを得ないときに、『またか・・・だったら独身の身軽な人に担当変えてほしい』と言われるのが怖かったときもありました。自分の都合で周囲に迷惑をかけているのではと、『仕事を本当に続けられるのだろうか。けれど、私はこの子を育てるために仕事は辞められない・・・』何度も夜ひっそりと涙を流していました」
―子育てと仕事を両立できていない人にはどのような悩みが多いのですか?
「私もまさに悩んでいたことですが、主に『時間が限られている』『自由でない』『ストレスが大きい』の3つです。
まず、時間はとても限られているということ。たとえば独身時代は思い切り残業もできたし、休日も好きなことに熱中していたのが、今度はそうもいかない。限られた時間で多くの仕事をこなさないといけないので、独身時代と同じ働き方では無理ですよね。
そして自由ではない。今までは一人で稼いで好きな洋服を買い、好きな旅行先へ遊びにいけたのが、そうもいきません。何か決めるのも家族会議が必要ですし、朝の身支度だけでも子どもに朝食を食べさせて洋服を着替えていく、倍かかります。
そして最後は、育児ストレスです。ただでさえ仕事でストレスが大きいのはもちろん、家にかえっても子どもが小さいうちは戦争なので、子どもが寝付くまでは休まるときはありません。そうすると、ストレスがたまり、さらに追い打ちをかけるように、子どもの我儘やトラブルがあると、ため息をつくばかりの日々。言ってはいけないことなのに、『ママだって一生懸命あなたのために働いて、頑張っているのだからね!』と幼稚な言葉を言って猛烈に反省したり…。
たくさんの苦労や悩みはあるけれど、それでも出産して育児することはこのうえない幸せです。何よりも自分よりも大切だと思える尊い命とともに、自分も成長します。一人だった幸せも、家族が増えると何倍もの幸せに膨らみます。結果的に、育児しながら働くことの幸せを私は経験でき、今もこうして働ける喜びを身に染みて実感しています」
―女性が出産後も働き続けるために必要な周囲の支援や制度について、どのようなものが必要だと感じましたか?
「まず、多くの人を巻き込むことです。というよりも、多くの方の協力を得ざるを得ないのかもしれません。保育園にも入るのが大変な今日、そこから職場復帰してからも周りの協力なしでは働くことは難しいでしょう。
いま、出産後も働き続けられるような育休制度やユニークな休暇制度など『制度面』では充実してきた会社も増えてきました。しかし多くの女性は、「制度はあるけれど、それを実際活用して働き続けているロールモデルがいない」という現状にも不安を抱えているのです。
本書にもあるのですが、そんなときは『自ら職場を変えていく』と女性側も働きかけていくことが大事です。つまり、『制度がない』『制度を使える環境がない』と会社に不平を漏らすのではなく、『私は会社のためにここまで貢献したい!』という成果をだし、会社からも『早く戻ってきてね!全力で応援するから』と会社側からも温かく迎えてくれるような環境を自ら創り出すことのほうが大切です。
制度はあくまでも制度。その制度を創るのも、人間ですから」
―子育てのストレス、仕事のストレスと上手く付き合っていくために、太田さんはどのようなことをしましたか?
「上記のように、育児と仕事を両立する女性には、本当に大変でストレスフルな日々を送っていることでしょう。私の場合も、まさにそんな日々でした。
そんなとき、ダイエットと同じく
1 ストレスが入ってくる量を減らす
2 ストレスを出す量を増やす
3 ストレスをためにくいよう、体質改善をする
をお勧めします。赤ちゃんのときは原因不明の夜泣きで悩むこともあるでしょうし、子供が成長すると反抗的な態度をとられて途方に暮れる日もあるでしょう。また、父親がまったく育児を手伝ってくれず、自分ばかりに負担がたまって、「もういい加減にして!」と投げ出したくなる時もあるかも知れません。そんなときは、ダイエットと同じく、上記の3つのポイントでストレス解消すればいいのです。たとえば私の場合は、「育児から解放される日」をときどきつくっていました。実家に預けたりして、自分はめいっぱい自分の時間を楽しみます。
本書では、『ストレス・ダイエットをしよう~育児ストレスと上手につきあう方法~」にて紹介していますので、ぜひご覧ください」
―本書では女性に対する「仕事のススメ」についても書かれていますが、仕事の楽しさとはどこにあると思いますか?
「日頃働いている方なら、働くことは当たり前すぎて、その幸せにさえ気づいていないことがあります。私も一時期、専業主婦の時期もあったのですが、私にとっては育児もいいけれど、自分自身の自己実現できる場がほしい、と強烈な願望が膨れ上がりました。欲張りな女性はたくさんの夢を叶えることで自分自身のバランスをとっているのだろうと思います。
私の場合、仕事の楽しさは、稼ぐことはもちろん大切なのですが、それ以上に『周囲とかかわれること』『自己成長できること」『誰かの役に立てるということ』だと思います。
色々な価値や人間関係にもまれて、刺激を受け、ときには辛い仕事でも、それでも確実に社会と交わり、社会発展の小さな力を提供できる。そんな小さな喜びを感じられれば、これからも働き続けたいという、仕事のありがたさを実感できるようになるものです」
―読者の皆様に本書の読みどころやメッセージをお願いします。
「これからもずっと働き続けたい。けれど、本当にできるのだろうか・・・。本書の42つの処方箋を通じて、皆さま働く女性の不安がやわらいで、結果的に、働くことの楽しさや喜びが感じてもらえれば嬉しいです。
そんな、これからも働き続けるあなたへ、この本を贈ります」
人材育成コンサルタント。株式会社ベレフェクト代表取締役。
女性や女性営業職の人材育成が専門で、これまで延べ42,000人の働く女性を支援してきた経験を持つ。
1975年生まれ。早稲田大学法学部卒業。大学在学中に妊娠し、出産を決断。それ以降、育児をしながら、全力で仕事に取り組んできた。
㈱リクルートにおいてホットペッパーの企画営業として数々の賞を受賞した後、「一人でも多くの女性が輝きながら夢や目標を達成する」ことを支援すべく起業、㈱ベレフェクトを設立。
その取り組みがNHK「グラン・ジュテ」やNHKニュース、日経ウーマンなどテレビや雑誌含む様々なメディアに取り上げられ、多くの女性の共感を得る。
また、自らのライフワークとして「営業部女子課」を主宰し、営業女子を応援している。
2012年、更に全国にその輪を広げようと「花咲かプロジェクト47」をスタートさせる。
代表著書に「1億売るオンナの8つの習慣」(かんき出版)、「働く女性!リーダーになったら読む本」
(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。
東洋経済オンライン「こちら営業部女子課~女性を知ればチームは強くなる!」連載中。
●営業部女子課
●太田彩子Facebook
●株式会社ベレフェクト
著者:太田 彩子
定価:1,365 円(税込み)
ISBN-10: 4479793704
ISBN-13: 978-4479793700