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本が好きっ! ブックナビゲーター矢島雅弘のインタビューラジオ

『矢島雅弘の「本が好きっ!」』は、ブックナビゲーター矢島雅弘が、話題の本の著者をゲストに招いてお送りするインタビュー番組です。本についてはもちろん、ゲスト著者の人となりや、成功体験、考え方、ビジネスのちょっとした気づきやなどを、矢島が自身の持ち味である軽妙な対談形式でお聞きし、リスナーの皆さまに「軽くて楽しい」けれども「知的」な時間をお届けします。

ゲスト: タベアルキスト マッキー 牧元さん

『出世酒場 ビジネスの極意は酒場で盗め』

マッキー牧元さんと矢島雅弘ツーショット写真

「感謝」の心で人を惹きつける女将

矢島: 早速なんですけども、マッキーさんは「タベアルキスト」という肩書をお持ちですよね。これは一体どういうものなんですか?

マッキー: 「タベアルキスト」というのは、毎日食べ歩いていれば、毎日生活ができるという夢のような職業です。

矢島: 食べ歩くのが好きな人にとっては本当に夢のような職業ですね!

マッキー: そうですそうです。

矢島: さて、そんなマッキーさん、もちろん日々ただ食べ歩いているだけではなく、「味の手帖」の編集長として色々なグルメスポットや飲み屋を紹介されていますよね。そんな中、本書の執筆に至ったきっかけみたいなものはあったんですか?

マッキー: これまであちこちの酒場を回ってきて、各店のご主人や女将さんと話をしているうちに、彼らに興味が湧いてきたんですよ。この人はどうして今の仕事をしているんだろう?どんな人生を送ってきたんだろう?そもそもどんな人なんだろう?って。そこで彼らにインタビューしてみようと思ったんです。それが最初のきっかけですね。

矢島: なるほど。僕はこの本を、初めはお店の紹介本かな?と思って開いたんですけど、第1章でフォーカスされていたのはお店の女将さんでしたね。個人的には大阪の食堂街にある「森清」というお店のお話が印象的でした。僕が言うのもなんですが、ここの女将のキヨさん、いい女ですねえ。

マッキー: 「いい女である」という事は、それ以前に「いい人間である」という事なんですよ。キヨさんは「感謝」の方ですね。1つエピソードを挙げますと、僕の還暦パーティの記念ビデオを撮る時に、どうしてもキヨさんに出てもらいたくて、お店へ収録しに行ったんです。「お忙しいところ申し訳ございませんね」ってお願いしたら、キヨさんなんて言ったと思います?「あんたの大事な記念ビデオの収録にうちの店を選んでくれて、こんなにうれしい事はない。ありがとう」と、心から喜んでこうおっしゃったんです。

矢島: とても人情味溢れた方なんですね。

マッキー: 人間としてこんなに素敵な方ってなかなかいませんよ。もちろん彼女だけではなく、女手1つで居酒屋を始められて、苦労されてる女将さんは他にもたくさん見えます。ある女将さんは、それでも「昔の事は水に流しちゃいました」と言って、素敵な笑顔を向けてくれます。

矢島: そんな女将さんと出会える居酒屋に是非行ってみたいですね。

マッキー牧元さん写真

誰も見ていなくても「格好をつける」

矢島: さて、第2章では「出世の極意は、いい常連から盗め」という事で、視点を女将さんからお客さんの方へ移されていますよね。僕は居酒屋にいるとき、他のお客さんを観察するという事をあまりしてこなかったのですが、マッキーさんはお客さんをよく観察されているんですね。

マッキー: よーく見てますね。素敵な振る舞いをするお客さんなんかは、見ていて勉強になりますよ。逆に変わったお客さんが見える事もありますが、それはそれで勉強になります。全てが勉強です。

矢島: 僕が個人的に勉強になったなぁと思ったのはおちょこの持ち方でしたね。おちょこってコップと同じように親指側を口につけて飲むものだと思っていたんですが……

マッキー: それはみっともないですねえ。貧乏くさいですよ~。

矢島: みっともない!貧乏くさい!ここまで言われてしまった!(笑)

マッキー: おちょこは持ったら手首を90°内側に曲げて、口元が隠れるように飲むとかっこいいですね。誰も見ていないかもしれませんが、普段からこういう細かいところ気を遣っていると、「格好良さ」がしみついてくるものなんです。

矢島: 一人飲んでいるからといってだらけない!という事ですね!

マッキー: そうですね。その意味でも一人飲みというのは、酔って暴れるわけにはいかないし、程よく緊張している状態なので、作法を意識しつつ、きちんと飲めていいですよ。

矢島雅弘写真

酒の飲み方で仕事の出来不出来が分かる

矢島: 本の中で珍しくマッキーさんが若者に苦言を呈されている箇所がありました。焼き鳥の焼き方についてでしたね。どのような場面だったんですか?

マッキー: 焼き鳥を焼き台に乗せるのはいいんですけど、話しこんでいる間に肉を焦がしてしまったりするんです。しかもそれを平気で食べていたり。さらには生の状態でタレにつけてから焼き始めたりする子もいましたね。

矢島: それは危ないな!(笑)

マッキー: 危ないですよ~。危ないし他の人にも迷惑が掛かってしまいます。焼く前にタレをつけちゃうと、タレが先に焦げてしまって上手く焼けないんですよ。

矢島: ここで少しビジネスの話に絡めますけど、マッキーさんはそういう酒場での仕草や仕切りを見て、その人の仕事の出来不出来が分かってしまうんですよね。仕事が出来ない人がついやってしまいがちな例として、他にどんな事がありますかね?

マッキー: 頼んだ料理をいつまでも食べない、もしくは半分だけ食べてずっと喋っている人……これはダメですね。

矢島: ふむふむ。その理由とは……?

マッキー: 料理というのは出来上がった瞬間からどんどん劣化していく訳ですから、その料理を良い状態で食べられないというのは、「マネジメントが出来ていない」という事なんです。つまり、目の前の事に対していい加減という事ですね。

矢島: たしかに……。注文したものを食べないというのは、作り手に対して礼儀を欠いてますね。

マッキー: 一人飲みをしているうちに、そういう事も全部分かってくるようになりますよ。

矢島: 一人で飲む事で、周りの様子を見るようになって、人の気持ちが分かるようになる。ここが仕事に繋がってくるわけですね!

著者プロフィール

マッキー牧元

1955年東京都出身。立教大学卒。「味の手帖」編集顧問、タベアルキスト、ポテトサラダ学会会長。日々旺盛に飲み食べ歩き、雑誌、ラジオ、テレビなどで妥協のない真の食情報を発信。著書に『間違いだらけの鍋奉行』『ポテサラ酒場』『東京・食のお作法』などがある。

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