―小玉さんの新刊『あなたはまだ本気出してないだけ』についてお話をうかがえればと思います。この本を読むと、『クビでも年収1億円』から小玉さんが一貫して言い続けてきた主張がよりクリアになった印象を受けます。まず、本書をどんな本にしたかったかというところからお聞かせ願えますか。
小玉:『クビでも年収1億円』の時から、僕は「サラリーマンとしての生活にはこんな特徴があって、その中で何かをやっていくためにはこんなことをやっていきましょう」ということを、かなり具体的に書いてきました。だから、必然的にターゲットというか、想定している読者の層は狭かった。
ただ、今回はもう少し広い層の方に参考になるように、具体的な方法論というよりは考え方に近いような、汎用性の高い内容になっています。
―本書のテーマとして「本気で生きる」ということが挙げられます。小玉さんにとって「本気で生きる」というのはどのようなことですか?
小玉:シンプルに言ってしまえば、やらなかったことに対して後悔をしないように、「あれをやっておけば良かったな」と思わないように過ごすことです。
―小玉さんはサラリーマン時代は「本気で生きている」感覚はなかったのでしょうか。
小玉:会社というのは、やったことが評価されなかったり、結果を出していない人間が自分と同じような給料をもらっていたりというところで、構造上本気を出しにくいといえます。がんばってやっても無駄だなと思うことが多かったのは事実です。
―会社勤めをしている人の中には、自分で面白いと思えない仕事に忙殺されているうちに毎日が過ぎてしまっているという人が多いのではないかと思います。こういう人はどんなところから自分を変えていけばいいのでしょうか。
小玉:忙殺されているのならいいじゃないですか。一生懸命やっているということですから。
ただ、それでも過ごしてきた時間に後悔があるようなら、やりたくない仕事をやめるべきだと思います。これはいきなり会社をやめるということではなくて、会社の中にある「自分がやるべきでない仕事」「面倒くさくてやる気が起きない仕事」から離れてみるということです。自分ではなくてもできる仕事を自分がやっているのは自分だけではなくて会社にとっても不利益ですから、そういうのは他の人に任せてしまえばいいんです。
そうやって、自分でなくてもできるような仕事から離れるように仕向けていけば、忙しいだけで一年が終わってしまったということはなくなりますし、仕事に達成感と充実感が伴うようになると思います。
―Part2で書かれていた「身の周りをイエスマンで固めよう」が印象的です。自分に批判的な人とも付き合った方がいいという意見が多いなかで、小玉さんがこうした考え方を持っているのはなぜですか?
小玉:大きな会社で広い層の人を相手に仕事をしているというのであれば、多種多様な人と接して自分と相容れない意見も聴くことが必要かもしれません。ただ、今は個人の仕事が多様化して、インターネットを使ってビジネスをする人も増えています。
インターネットを使えば、それこそ全世界を相手にビジネスができるわけで、自分の意見に賛同する一部の人しか顧客にならなかったとしても、全世界だとそれでもかなりの数になりますから、ビジネスとして成立してしまう。自分に批判的なものを無視してもやっていけるんです。
これは自分勝手にやれということではなくて、批判的な意見に萎縮してしまうのなら、自分の好きなことを主張して、そこに共鳴してくれる人を募った方がみんな幸せになるということですね。
―ビジネスに限らず、一般的な人間関係にも当てはまりそうですね。
小玉:そうですね。自分の主張をしっかりしておけば、嫌いな人は近寄ってきませんし、その主張に共鳴できる人は近づいてきます。近づいてきた人とだけ付き合った方が幸せということは言えると思います。
1万人に嫌われても、10人の親しい友達がいれば人生はとても楽しいですよ。
―しかし、1万人に嫌われる勇気をほとんどの人は持つことができません。小玉さんは、その勇気が元々あったのでしょうか。
小玉:僕も、元々は会社の中で気をつかって、どうやって周りの人みんなと上手くやっていくかを考えている人間でした。
でも、ある飲み会の時に、嫌いだった上司に酒を飲むことを強要されて、ついその場にあったビール瓶をひっくり返しちゃったんですよ。ガシャンと。
相手が上司ですからひと悶着あるかなと思うじゃないですか。でも、結局何も起こらなかった。その時に、嫌いな奴に嫌いと言ってもいいんだと思えたんです。たとえ上司であっても大丈夫なんだなと。
―それができるのがすごいですよ。
小玉:案外大丈夫ですよ。ただ、その分仕事はできないとダメです。仕事はしっかりとやって、誰にも負けないという自負があるからこそ、不条理なことに対しては嫌だと言えるわけですから。
あまりに強い自己主張は周りに嫌われると思っている人が多いですが、仕事はしっかりやりつつ、納得いかないところは納得いかないと主張するという態度でいる限り、共鳴してくれる人は必ず出てくるものです。
―また、自分への批判に対する耐性をつけることは、今まさに必要とされていることです。他者からの批判に強くなるためにはどうすればいいのでしょうか。
小玉:批判されたからといって何が起こるわけでもないということを知ることでしょうね。
結局、この後に何が起こるかわからないから「怖い」と感じるわけで、「これをした結果こうなりますよ」とわかっていれば怖くもなんともない。
どうなるかわからないから、会社を辞めるのは怖いし、ネットで炎上するのも怖いし、批判されるのも怖いんです。他人から集中的に批判された後になにかえらいことが起こるのではないかという恐怖がある。でも、他人から批判されたくらいで何が起こるわけでもないんですよ、実際は。
―「あとがき」で、しばらく本は書かないという趣旨のことが書かれていて、驚きました。これはしばらく本を書くネタを溜めるための充電期間と捉えていいのでしょうか。
小玉:そうですね。本を書くというのは、自分のなかにあるものを削り取っていくような作業でしんどいんですよ。いつのまにか執筆のスピードに自分の成長のスピードがついていかなくなって、次の本に書くべきものが自分のなかに残されていないという状態になってしまったので、一旦本を書くのをやめることにしました。
―言葉は悪いのですが“粗製乱造”的に本を出しまくる著者の方が多い中で、小玉さんの選択は異例というか、いささか生真面目すぎる印象すら持ちました。
小玉:ただ本を出したいのであれば、自分で書かずに半日インタビューしてもらった内容をもとに、執筆自体はライターに任せるという方法もあります。
でも、10冊本があるうちの3冊は真面目に書いて、残り7冊はそうやって自分で書かずいい加減に作った本だったとして、その7冊の方を手に取る人もいるわけじゃないですか。その人は、いい加減に作った本を読んで僕を評価する。僕はそういうのが我慢ならないんです。
―『あなたはまだ本気出してないだけ』をどんな人に読んでほしいとお考えですか?
小玉:主には20代、30代の若い方なのですが、「もっと自分はできるんじゃないか?」「もっといい人生があるんじゃないか?」と思いながら生きている人に、特に読んでいただきたいです。
よく「自己啓発書は栄養ドリンクみたいなもので、読んだその時はテンションが上がるけど、持続しない」という言われ方をされるのですが、僕はそれでいいと思うんです。
1000円ほどの本でテンションが上がるならもうけものじゃないですか。そこからどうするかは本人次第ですが、それは自己啓発書に限らずどんなことであっても同じわけですから。
―最後になりますが、読者の方々にメッセージをいただければと思います。
小玉:ほとんどの人は、自分の人生は敷かれたレールの上を進むだけで、変えることはできないと思っているのですが、決してそんなことはありません。
今、自分の人生がうまく行っていないなら、それは能力が低いわけでも、環境に恵まれていないわけでもなくて、本気で何かに取り組んでいないからです。本気を出せば自分の人生は変えられますし、今の生活に納得がいっていないのなら、思いきって好きなことをやってみたほうが楽しくなるはずです。
思う存分やってみてダメだったら仕方ないじゃないですか。もしそうなっても、今の日本で食いっぱぐれることなどまずなくて、仕事は探せばいくらでもあるわけですから。
(新刊JP編集部)
1981年、秋田県生まれ。2003年、新潟大学卒業後、キヤノンマーケティングジャパン株式会社に入社。就職後、趣味で行っていたバンド活動が業界関係者の目にとまり、2008年にサラリーマンのままメジャーデビュー。同時期に社内では優秀社員として表彰され、花形部署であるマーケティング部に異動。デジタルカメラの国内マーケティングを担当する。2011年、インターネットを使った副業の収入が1億円を超えると、これが会社にバレてしまい退職