経営コンサルタントとして活躍している洲山氏だが、事業再生の現場とは一体どのようなものだろうか。相談に来る経営者たちの実像とは? 書籍の出版を記念し、インタビューを行った。
■「当事者意識」がない経営者もいる
-2011年は国内外において様々な動きがあり、日本経済に影響を与えることも少なからず起きました。この1年を通して経営者の皆さんにはどんな変化があったと思いますか?
「やはり意識が変わったのではないかと思いますね。特に3・11以前と以降では、大きく変化したと思います。直接、もしくはテレビなどを通じて被災地の様子などを見て、自分たちの生活が一瞬でああいう風になるということは感じたと思いますし、また、ほかにも原子力発電所の事故にともなう風評被害ですとか、海外からの観光客が減ったりとそういった部分からもリスクを感じたと思います」
-現在、経営コンサルタントとして様々な事業再生の現場に携わっていらっしゃると思いますが、ご相談に来る経営者の方々の数は年々増えているのでしょうか。
「一時期は減っていましたね。理由は2009年、当時の亀井金融大臣のもとで返済猶予法案、正式には「金融円滑化法」という法律が施行されたのですが、これはリ・スケジューリングといいまして、借り入れの元本返済を猶予することを、金融機関に努力義務として課したんですね。それで非常に助かった中小企業が多かったと思います。 ただ、時限立法なので来年の3月でこの法律が終わる可能性もあるんですよ。そういうこともあるので、業界の識者の予想としては、来年はかなり厳しい年になるだろうといわれています。もし法律が延長したとしても安易なリスケはなかなか認められにくくなるでしょう、と。また、3・11の影響や原発の風評被害、円高など五重苦、六重苦といわれているようにマイナス要因がたくさんあるので、来年は企業の倒産件数がかなり多くなるように思いますね」
-なるほど。ここから本書の話をお聞きしたいのですが、非常にユニークだと思ったのが、事業再生を病院になぞらえている部分でした。そういったことも含めて本書を執筆したきっかけを教えていただけますか?
「毎月、大阪と東京でセミナーを開いているのですが、セミナーの限られた時間だけでは全部伝えきれないんですね。だから、そのセミナーで伝えきれない部分をカバーするという意味で執筆しました。また、事業再生というのはある意味で人間の病気と一緒なんですよ。人間が病気になったら病院に行って、まず問診を受けて、検査。重症であれば検査入院をしますし、そこから症状によって内科、外科、緊急でオペが必要であればICUに入ることもあります。そういう形で人間の身体に例えると、事業再生も分かりやすいのではないかなということで、“事業再生総合病院”というコンセプトで書いてみました」
-洲山さんに相談に来られる方で、最も多い症状はどのようなものですか?
「やはりほとんどは金欠病ですね。要するに、資金繰りがショートしてしまっている、もしくはショートしかけている。重症度合いはさまざまですが」
-完全にショートしてしまっている方もいらっしゃる。
「そうですね。この本には書いていなけれど、もう給与遅配が半年間続いている会社もありますよ。さすがに社員にとっては限界を超えていますよね。そんなところでも事業再生をしたことがあります」
-「これは困った」という相談事例はありますか?
「全く自社の数字を把握していない社長もいらっしゃるので、何を答えても『分からない』と言われたり、経理もどんぶり勘定でわけが分からなくなっているという状態になっている人もいらっしゃいます。あとは当事者意識がない社長もいますね。自分の会社なのに、何がなんでもこの会社を継続していきたいという想いがない、と。事業再生はまず自分の会社への想いがないと難しいんです。それが一番困りますね。当事者意識がなくて人任せなのはね」
-「気づいたときには手遅れ」という状態にならないようにするには、経営者はどういったところに気をつけるべきなのでしょうか。
「経営においては資金管理が大事ですから、資金繰り表を作ってお金の動き、キャッシュフローをしっかり把握することが大事です。大阪府の財政改革に成功した橋下徹大阪市長は、ずっと赤字続きだった府の財政を、入ってくるお金の中でまかなうという方針を決め、すぐに職員の賃金をカットしたり、補助金をカットしたりしていましたが、そういったことが大事です。あとは、橋下市長のように使命感を持ち、経営を良くするというミッションを掲げて、その上でアクションプランを立てて実行に移らないと効果は絶対に出ません」
■優先順位をいかにつけられるか、それが再生への道の一歩
-本書の中で述べられている「即、入院」とはどんな状態なのですか?
「このままいけば資金ショートして挽回できなくなってしまう会社ですね」
-知識のない者の印象ですと、資金繰りができなくて追い詰められたらもう諦めるしかないのかなと思ったりもします。
「そんなことはありません。諦めたら終わりですから。お金が足りなければ、どこからか借りてくるか、支払いを抑えるしかありませんよね。支払いを抑えるとしたら、仕入先なり外注先なりに頭を下げて待ってもらうしかありません。もちろん迷惑をかけることですが、安易に会社をつぶしてしまったほうがもっと迷惑をかけるわけで、できる限り事業は継続したほうが価値はあります。ただ、待ってもらうにしてもやり方がありますから、やり方がわからない部分は私たちがアドバイスしますよ、ということですね」
-方法が分からないと、何をしてみようもないという風になってしまいますよね。洲山さんのところにもそういった悩みを持ってくる方が多いのですか?
「そうですね。事業再生のキーワードの1つが“プライオリティ”、つまり優先順位をどうつけるかということが大事なんですね。まず、資金ショートするのであればキャッシュアウトを止めないといけませんから、何から止めるのかを考えます。新たな売上をあげるために一番必要なものは仕入れや包装資材などになりますから、そこは削れない。そういう風に優先順位をつけて、優先順位が低いところは頭を下げて待ってもらおうというのが緊急対応になります。ただ、緊急対応を1、2年続けるわけにはいきませんから、どこかのタイミングで抜本的な再生スキームを組んで、動いていくことが必要です」
-一度ショートしかけた事業を立て直すために、経営者には何が一番必要ですか?
「言うなれば執念ですね。この事業を再生させる、継続させるという強い執念です。それがあるから仕入先や協力業者も応援しようと思うでしょうし、社員も社長を信じてついていこうと思うのではないでしょうか」
-では、経営者ではない人たち、つまり会社に勤めている人たちが本書を読むメリットはどこにあると思いますか?
「確かに企業を経営していなければ関係ない面もあるかも分かりませんが、人生においていつそういう立場になるのかも分かりませんよね。今はサラリーマンでも、将来社長しているかも知れない。また、事業というのは定年がないんですよね。気力と体力が充実している限りずっと出来ます。そう考えると、究極の自己実現を目指す上で経営者はとても良いんですよ」
-確かにその通りです。
「ただ、会社というのは基本的につぶれやすいように出来ています。例えば今年の1月1日に100社誕生したとしたら、今年の12月31日でそれが50社ほどになっています。半分つぶれるんですよ。さらに3年経てばその半分、10年経つと6社くらいですね、生き残っているのは。それだけ会社はつぶれやすいですから、いつ資金がショートしそうになっても、それを直す方法を知っていれば会社をつぶさずにやっていけますから、そういった意味でも本当に知っていて欲しい知識が詰まっていますね」
-本書をどのような方に読んでいただきたいと思っていますか?
「中小企業の経営者、もしくはこれから起業しようという方に読んで欲しいです。特に中小企業は、国税局の統計を見ると7、8割の会社が赤字なんです。余裕のある会社はほとんどないですし、将来に対して不安を抱えている経営者も多いと思うんですね。そんなときにこの本を読んで元気になってもらえるといいですね」
-では、読者の皆様にメッセージをお願いします。
「『社長に笑顔と勇気を与え続ける!』という旗印のもと、7年間、事業再生を中心としたコンサルティングを行い、その間に500社の再生に成功しました。社長が諦めない限り、少々は厳しくても必ず事業は立て直すことができますから、本書を読んでそれを知っていただきたいな、と思います。そして、もしものときでも大丈夫ということをまず感じていただいて、自社の経営に精を出して、地域経済の発展に寄与していただきたいと思います」
喜望大地会長。負債30億円で倒産寸前の危機から事業再生した社長。約7年間で約500社超の事業再生を成功させた辣腕経営コンサルタント。 ローカル小売業の3代目として家業に従事。年商1億から50億まで事業を拡大、ベンチャー・キャピタル4社から出資を受けIPOを目指すも、負債30億円を抱え破綻寸前の経営危機に陥る。 内容証明郵便300通・裁判所からの特別送達100通・所有不動産の競売9物件・数え切れない差押え等々、あらゆる修羅場を体験しつつ事業継続に奔走し、組織再編とスポンサーへのM&Aにて事業再生に成功


