ページトップへ

アンガーマネジメント×怒らない体操 たった6秒で怒りを消す技術

解説

対人関係のために知っておきたい
性格別「怒りポイント」6タイプ

物事が思うように運ばなかったり、理不尽な目にあったりすると、私たちは怒りやイライラを感じます。仕事やスポーツなど、情熱を注いでいることであればなおさらです。

「怒り」も「イライラ」も人間本来の感情ですからなくすことはできません。でも、その怒りがいつまでも収まらなかったり、あまりに激しかったりすると、人間関係に支障が出ますし、平常心が失われ、物事がさらにうまくいかなくなってしまいます。

必要なのは「怒りをコントロールすること」

アンガーマネジメント×怒らない体操 たった6秒で怒りを消す技術』(安藤俊介、デューク更家著、集英社刊)によると、必要なのは「怒りを感じないようにすること」ではなく「怒りをコントロールすること」。

その第一歩として有効なのが、自分の「怒りのタイプ」を知っておくことだとしています。

正義感が強くルール違反が許せない「公明正大」タイプ

性格が人それぞれ違うように、「どんなことに怒るか」も人によって様々です。たとえば「ルールを守らない人やマナーを気にしない人が大嫌い!」という人は「公明正大」タイプかも。

このタイプの特徴は「正義感の強さ」です。道徳や秩序を愛する実直な人だけに、曲がったことや倫理に反することに強い怒りを覚えます。

しかし、ルール違反もマナー違反も世の中にあふれていますから、いちいち怒っていたらストレスが溜まって仕方ないはず。「本当に怒るべきこと」の線引きをするためにも、「自分にとって大事な問題か」「怒ることで何か変わるのか」という視点を持ってみましょう。

自分にも他人にも厳しい「博学多才」タイプ

ストイックな完璧主義者は「博学多才」タイプ。
向上心が強く自分に厳しいタイプだけに、物事に白黒をつけないと気が済まない性分で、「グレーゾーン」が大の苦手。優柔不断な人やあいまいな態度を取られるとイライラしてしまいます。

世の中にはあいまいなままにしておいた方がいいこともありますし、良いか悪いか、好きか嫌いかで決められないこともたくさんあります。このタイプに必要なのは、そのことを理解するために、物事を一歩引いて見ることです。

「威風堂々」タイプはリーダー気質

「威風堂々」タイプはリーダーに多く見られます。
プライドが高く、人から頼られることに慣れているため、自分が大切に扱われていないと感じた時や、欲しいものが手に入らない時に怒りを感じます。

武器でもあるプライドを少し引っ込めて謙虚になることは、自分を卑下することではありません。他人からのアドバイスや苦言にまで怒りを感じてしまうようなら、それは感情に支配されてしまっています。

自分のルールが一番「外柔内剛」タイプの怒り方

温厚そうに見えて、一度決めたことは誰になんと言われても譲らないのは「外柔内剛」タイプです。自分のルールを強く持っていて、そこから外れたことをしたりさせられたりすることに憤りを感じます。

「自分のルール」「自分なりの判断基準」というと聞こえがいいですが、それが他人のルールと衝突しないとは限りません。「相手には相手のルールがある」ということを知って相手を尊重しないと、人間関係が難しくなってしまうかも。

冷静沈着な人がストレスと怒りを感じる場面とは

いつでも冷静沈着で、物事を落ち着いて考えられる慎重な人は「用心堅固」タイプ。一見すると、そもそも怒ったりすること自体あまりなさそうですが、そんなこともありません。

このタイプにありがちなのが「この人はこういう人」と他人の性格にレッテルを貼って、ゲームのように行動を計算すること。しかし、他人が単純なレッテル通りに動くはずもありません。そして、想定通りに進まないストレスが怒りに転じてしまうのです。

まずは「レッテル貼り」を見直して、物事をすぐに決めつけないように心がければ、少しずつ他人を受け入れられるようになり、イライラすることも減っていくはずです。

「天真爛漫」なカリスマが最も嫌うこと

人間的な魅力に長けて、他人をどんどん巻き込んで引っ張っていく「天真爛漫」タイプは、表現力と自己主張力に長け、カリスマ的なタイプ。

このタイプは自由に自己主張できなかったり、やりたいことを封じられることにフラストレーションが溜まります。自分が他の人より優れていることを疑っていないぶん、こんな時に自分の意見に従わない人に対して高圧的な態度をとりがちです。

魅力でもある自己主張の強さも、あまりに高じると周囲とのトラブルになりますし、そうなっては余計にイライラも募るはず。力づくで意見を通す、以外の方法も模索することが、このタイプには必要なようです。

◇ ◇ ◇

いかがでしたか?
ここで取り上げた6つの怒りのタイプに心当たりがある人は、もしかしたら怒りに振り回されて、自分の人生を自分で窮屈にしてしまっている人かもしれません。

「怒りに振り回されないために、どうマネジメントするか」
本書では、このテーマについてさらに詳しく解説されるとともに、共著者であるデューク更家氏による、「心の器」を大きくして怒りを感じにくくするためのエクササイズも紹介され、「怒り」に心身両面から対処するノウハウが明かされています。

怒りで人間関係が壊れたことがある。
怒りのせいで仕事が手につかない。
こんな経験がある人に、「怒りをコントロールするメンタル」と「怒りを感じにくくする体づくり」をつづった本書は参考になる部分が多いはずです。

著者インタビュー

毎日を穏やかな気持ちで過ごしたいという思いは誰もが同じ。でも私たちの心はつい「マイナス感情」に支配されてしまいます。

なかでもやっかいなのが「怒り」です。朝感じた怒りを引きずって、一日中イライラしながら過ごした経験はありませんか?

ただ、『アンガーマネジメント×怒らない体操 たった6秒で怒りを消す技術』(集英社刊)によると、「怒り」は自分でコントロールできる感情でもあるようです。

今回はその秘訣を探るため、本書の著者で日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介さんと、ウォーキングトレーナーとしておなじみのデューク更家さんにお話をうかがいました。

―― まず、お二人の組み合わせが意外だったのですが、一緒に本を作ることになったいきさつからうかがえればと思います。

安藤: 僕が代表理事をしている「日本アンガーマネジメント協会」にはファシリテーターという、アンガーマネジメントを教える資格を持っているメンバーがいるのですが、その一人がデュークさんのお弟子さんでもあったんです。

そのメンバーは以前から、デュークさんが提唱している「デュークズウォーキング」とアンガーマネジメントは相性がいいと言っていました。僕の方も体を使う方向にアンガーマネジメントを展開していきたいと思っていたので、このご縁を生かして企画を進めよう、となったんです。

デューク: 僕のところには「師匠、アンガーマネジメントはいいですよ。うちのエクササイズとものすごく合います」って言ってきました(笑)。その縁がきっかけでしたね。

―― 共通のお弟子さんが縁をつないだんですね。

安藤: そうですね。それで、昨年の8月に初めてお会いして、デュークさんの活動の観点から、「怒りを感じにくい体質づくり」をテーマにエクササイズを作ってもらえないか、という話をしたところ、思い浮かんだものがあったようで、すぐに引き受けてくださって、本のための新しいエクササイズを考えてくださいました。

―― デュークさんの活動は基本的に体にアプローチするものですが、「怒り」は精神面の問題です。「怒り」と「体の動き」にはどのような関係があるのでしょうか。

安藤: よく知られているところだと「表情フィードバック」がありますよね。

悲しい時に無理矢理にでも笑顔を作ることで、笑っているという信号が脳に送られて、脳が「楽しい」と錯覚するという。そうなると実際楽しい気持ちになってくる、というものです。

「楽しいから笑顔になる」というのはもちろんそうなのですが、「笑顔を作るから楽しくなる」ということも言えるんです。そこから考えると、心を整えれば体も整うのと同時に、体を整えることで心も整うはずです。それがこの本でやりたかったことでした。

―― デュークさんにもご意見をうかがいたいです。

デューク: 体って縮こまったり固まったりすると、思い切り強く動かしたくなるじゃないですか。怒りはまさに体が固まる典型で、怒りが爆発するというのは、怒りによって固まった体を元に戻そうという動きでもあるんです。

ならば、普段から体全体をゆるめて、固まりにくくしておけばいい。これが怒りにくい体を作るための考え方です。腕も背中も日頃からよく伸ばして可動域を広げておくのはもちろん、リズムよく声を出しながらそれをやることで呼吸も整いますから、試してみていただきたいですね。

―― 主にメンタルにアプローチするアンガーマネジメントの手法も紹介されています。これは「怒り」だけでなく「不安」や「悲しみ」など、マイナス感情全般に効果がありそうです。

安藤: 怒りというのは二次的な感情なんです。その前には不安や悲しみ、苦しみといった一次感情があって、何かのきっかけでそれらが怒りに変わる。

なので、怒りをコントロールできるようにするということは、第一次感情である不安や悲しみをコントロールすることに通じるものがあるはずです。

―― タイトルにある「6秒で怒りを消す」というフレーズですが、この「6秒」にはどんな意味があるのでしょうか。

安藤: 怒りは脳の扁桃体というところで生まれるのですが、その後に前頭葉の働きで理性が介入しようとします。怒りの情動に対して「いや、ちょっと待て」ということですね。

この理性の介入までに数秒かかると言われていて、それまで我慢できれば、怒りはだんだん収まっていきます。秒数については諸説あるのですが、僕たちは「6秒」としています。

―― この6秒を耐えるためにどんなことをすればいいのでしょうか。

安藤: もちろん「ただ待つ」というのでもいいですし、手を握ったり開いたりを繰り返して気を逸らすという方法もあります。怒りをやわらげるツボを押して6秒間をやり過ごすという方法も紹介しています。

アンガーマネジメントが上手になってくれば、頭の中だけで6秒間待てるようになるのですが、慣れるまでは体を動かすやり方の方がいいかもしれません。「6秒間の過ごし方」については本の中で詳しく解説しているので、自分に合いそうなものを選んで試してみていただきたいですね。

―― お二人にも、怒りを感じる瞬間があるかと思いますが、そんな時はどうしていますか?

安藤: 心の中で自分を落ち着かせる言葉を使いますね。僕の場合は「まあ、何とかなるかな」が多いです。本でも書いているのですが、これはどんな言葉でもいいんです。自分が落ち着く言葉を持っておくと、いざという時に役立ってくれると思います。

デューク: 僕は何を言われても、一度全部飲み込むようにしていますね。

奥さんによく怒られているのですが(笑)、やっぱりムカッとくることもあるんですよ。だけど、そんな時でも「うん、そやな」と受け入れると、自分も相手もそれ以上は怒りが広がりません。

―― カッとした瞬間に爆発してしまう「瞬間湯沸かし器」のような人は、どのようにして怒りをマネジメントしていけばいいのでしょうか。

安藤: そういう方は「カッとなる前」が大事です。というのも、カッとなって爆発してしまうにしても、その予兆は必ずあるんですよ。爆発する前にはイライラしている時間があるはずで、どんな時にイライラするかは、人によって必ず傾向があります。

その傾向がわかれば予防ができますから、まずはイライラしたときのことを記録して、自分の傾向を知るところから始めるのがいいのではないでしょうか。

―― 怒りをどう表現していいかわからず、結局我慢してしまう人もいますね。このタイプはストレスを溜めがちですが、どのように改善していけばいいのでしょうか。

安藤: こういう人は、言語能力に原因があるのかもしれません。というのも、怒りというのはとても幅の広い概念で「イライラする」や「ムッとする」「頭にくる」「腹が立つ」「腸が煮えくり返る」など、段階や程度ごとに様々な言葉がある。

言語能力の高い人は、こういう言葉を使って、怒りを正確に伝えられるのですが、言葉を知らないとそれができないわけです。だから、黙り込んで我慢してしまったり、逆にやたらに怒鳴ってしまったりします。怒鳴るというのは、言葉の選び方で怒りの強弱がつけられない代わりに、声のボリュームで強弱をつけようとすることなので。

だから、「怒り方がわからない」という人は、本を読んだり映画を見たりして、怒りを表す言葉の引き出しを増やす訓練をするといいのではないかと思います。

―― 「自分の怒りのコントロール」だけでなく「他人の怒りの受け止め方」もアンガーマネジメントだとうかがいました。

安藤: そうですね。たとえば、ものすごく怒りっぽい上司がいる時、その上司を変えることはできませんが、その上司から受けるダメージを減らすことはできます。

遅刻をしてしまい「遅刻をするなんて、社会人失格だ」と怒られたとする。この言葉の中で「遅刻をした」は事実ですから、受け止めなければいけません。ただ、「社会人失格だ」は上司の主観であって、事実ではありませんよね。

だから、こちらは聞く必要はない。この切り分けが上手にできるようになれば、怒られても必要以上に落ち込んだり、ストレスを抱えることはなくなるはずです。

―― 自分の感情に振り回されるのは、精神的にも肉体的にも疲れます。最後になりますが、こういったことで疲弊されている方々にアドバイスやメッセージをお願いいたします。

安藤: 自分の感情のせいで疲弊している人は、感情にとらわれている状態です。つまり、自分のメンタルにばかり目が行ってしまっているんです。

だからこそ、心と体はリンクしているという視点を持っていただきたいと思います。気持ちを整えようとすると、どうしても瞑想や座禅という方向に行ってしまいがちなのですが、体を動かすことでも心を整えることはできるんです。

この本は、それがテーマになっていますので、ぜひ体験していただきたいですね。

デューク: 歩くときなどもそうですが、体というのは常に揺れていないとバランスが取れません。これは心もそうで、常に揺れているからこそ、人の意見に対しても柔軟に受け止められたりする。

これが固まってしまうと、かえって外からの刺激に弱くなるんです。人から言われたことに対して「ああ、そうなんや」と素直に受け入れられず、心が乱れてしまいます。

心も体も、常に力を抜いて、柔らかく揺らしておくことが大事です。この本で紹介したエクササイズはその役に立つと思いますので、心身のバランスを取るために日頃から取り入れていただければいいなと思います。

書籍情報

目次

  1. プロローグ 怒りに振り回される人生にサヨナラしよう!
  2. 第1章 たった6秒で怒りを消す「その場セラピー」を覚えよう!
  3. 第2章 怒りの正体を知れば、もう何も怖くない!
  4. 第3章 心の器を大きくする「怒らない体操」をマスターしよう!
  5. 第4章 怒りを増幅させない「マインドフルネス」を味方に付けよう!
  6. 第5章 アンガーマネジメント、怒りと上手に付き合うQ&A
  7. エピローグ いつでも心がラクになるために 対談:安藤俊介×デューク更家

プロフィール

安藤 俊介

1971年群馬県生まれ。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。アンガーマネジメントコンサルタント。
2003年にアメリカ「アンガーマネジメント」と出会い、日本に導入。第一人者となる。ナショナルアンガーマネジメント協会では1500名以上在籍するアンガーマネジメントファシリテーターの中で15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アメリカ人以外ではただ一人登録されている。

デューク更家

1954年和歌山県生まれ。大阪経済大学卒業。ファッションショーの演出およびプロデュース、モデルへのウォーキング指導を手がけた後、一般向けのウォーキングレッスンを始める。気功や運動生理学、武道、ヨガ、バレエ、ピラティス、呼吸法などの要素を取り入れた独自のエクササイズ「デュークズウォーク」を確立。簡単でユニークでありながら、美と健康に即効性があるとして、女性を中心に高く支持される。
カルチャースクール、企業研修、イベント等への派遣を行っている。

著者画像