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ディズニー・USJで学んだ 現場を強くするリーダーの原理原則

ディズニー・USJで学んだ 現場を強くするリーダーの原理原則

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本書の解説

さっき説明したよね? しかも「わかりました」って言っていたよね?
ちゃんと人の話聞いてた? なんでやってないの?

部下を指導したり、マネジメントをしている人は、「きちんと説明したのにやってくれない・できない部下」にイライラしたことは一度や二度ではないはず。もしかしたら毎日イライラしっぱなし、という人もいるかもしれないし、本当は冒頭のセリフよりももっと強い言葉で怒鳴りたいが、我慢しているという人もいるだろう。

しかし、やるべきことをきちんと説明したから自分は悪くない、と考えるのは早計というもの。もし、あなたがそういう風に考えがちなら、上司として問題があるかもしれない。

部下はわかっていないのに「わかりました」と言う生き物

上司がもっとも苛立つのは、仕事を頼んだ時「わかりました」と言っていたにもかかわらず、やっていない時だろう。

本書の著者で、ディズニーやUSJなどのキャスト育成経験を持つ今井千尋氏は、「新人スタッフは、本当は言われたことの半分くらいしかわかっていなかったとしても、十中八九『はい、わかりました!』と答えます」としている。

新人に限らず、上司から「能力が低い、ダメな奴」と思われるのは怖い。だからこそ、実際はあまり理解していなくても「わかりました」と答えてしまうのだ。上司に必要なのは、部下の「わかりました」を妄信せず、本当にわかったのかを見極め、不明なところがないかを確かめる姿勢なのだ。

「指示が雑な上司」は案外多い?

そもそも、上司が指示を出した時点で、部下の頭の中に「?」が残っていることは、上司が考えているよりずっと多い。

たとえば、上司は「この部屋を掃除しておくように」と指示した時点で自分の役割を終えたと考えがちだが、部下の方は「いつまでに?」「この部屋のどこを?」「どの程度?」といった詳細がわからないまま、なんとなく掃除を始めてしまう。

その結果、いざ来客がやってきたときに、部屋が上司の望む状態になっていないということが起こりうる。上司としては腹立たしく思うかもしれないが、これで叱られた部下の方は「言われたことをやったのに叱られた」と受け取ってしまう。これでは上司と部下の信頼関係にも影響を及ぼしてしまうだろう。

仕事の詳細とゴール、そして目的までを部下に理解させてはじめて上司は指示を出したことになる。これを踏まえると、「指示振りが雑」な上司はかなり多いはずだ。

「自分が快適なタイミング」で指示を出すのはNG

さらにいえば、指示は「タイミング」も大切になる。

全体を見る上司と違い、部下の多くは「今、目の前のこと」に集中しているため、一度受けた指示でも、刻々と変わる職場の状況によってその優先順位が下がってしまうということが珍しくない。

しかし、上司の方は必要だからこそ指示を出しているわけで、それをきちんとこなしてもらうためにも、指示は自分の快適なタイミングで一方的に出すのではなく、相手の状況を見ながら、そして必要なら何度も出す必要がある。

気配り、心配り、目配り、そして根気。これが部下に自分の指示を徹底させる近道なのだ。

ディズニー・USJで学んだ 現場を強くするリーダーの原理原則』は、部下の育成やコミュニケーショントラブル、そして信頼関係の醸成まで、上司が抱えがちな人材育成とマネジメントの悩みにキメの細かいアドバイスを送っている。

また、こうしたマネジメント上の問題に限らず、職場で起きるあらゆる問題は「コミュニケーションのギャップや行き違いによって起こる」と今井氏は語る。

では、上司も部下も、職場の皆がモチベーション高く、向上心を持っていきいきと働ける環境を作るためにどのようなコミュニケーションが必要になるのか。

本書はその答えを教えてくれるばかりでなく、自身のマネジメントのためのコミュニケーションから、より雰囲気のいい職場・会社づくりのためのコミュニケーションへと、リーダーのコミュニケーションを一段高い視野のものへと導いてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)

インタビュー

人の行動を決めるのは「規則」ではなく「雰囲気」だ

著者 今井千尋氏写真

――ディズニー・USJで学んだ 現場を強くするリーダーの原理原則』について。かつて今井さんは、自分の指示が部下に行き届いていないことに苛立つことが多かったそうですが、それが変わったきっかけになったできごとがありましたら教えていただきたいです。

今井:自分で言うのもなんですが、かなりの熱血漢でして、情熱だけでぶつかってしまうタイプだったんです。情熱と勢いさえあれば人はついてくると思っていたところがあって。

それでうまくいく時もあるのですが、熱量だけで突き進む人が苦手な人もいるじゃないですか。だから空回りしてうまくいかないことも少なくありませんでした。

転機になったのは、今勤めている「コミュニケーションエナジー株式会社」に入ったことだと思います。「人はルールではなく、場に影響される」というチーム作りの原理原則を、身をもって理解できるようになりました。こういうことは、以前に在籍していたディズニーやUSJで学んで、感覚的にはわかっていたのですが、より意識的に上記原理原則を研究し、分析し、独自理論として理解できたといいますか。

―― 「場」というのは?

今井:雰囲気(空気感)とか環境です。何でも言い合える雰囲気ができていれば、本来引っ込み思案な人でも、その雰囲気に流されて意見を言いやすいですし、逆にピリピリした雰囲気だと思っていることがあっても言えなかったりしますしね。

「場」の持つ力については、ディズニーランドを思い出していただけるとわかりやすいと思います。入園した瞬間からキャストがものすごくフレンドリーに迎えてくれて、挨拶ひとつとっても、外ではありえないくらいに明るくて、ものすごくいい笑顔でしてくれる。それにお客さんはまず圧倒されるんです。

キャストとお客さんは友達でもなんでもないんですけど、それこそ園内のキャストは皆昔からの友達みたいな感じで接してくるから、そのテンション(=場の力)に引き込まれてしまうんですね。そうなると、普段は絶対出さないような感嘆の声が園内では自然に出たりする。雰囲気に飲み込まれるというか、場の力に乗せられてしまうんです。

―― ディズニーランドやUSJではそういった「場」づくりを意図的に行っているように見えます。そこでお聞きしたいのは、場の雰囲気というのは何でできているのかということです。

今井:それはもうコミュニケーションです。日頃からいい言葉を使っていたらいい場ができるし、ネガティブな言葉ばかり使っていたらネガティブな場ができてしまう。

おもしろいのが、そういう場の雰囲気って「記憶」されるんですよ。つまり、一度雰囲気(=空気感)ができてしまえば、その雰囲気を作った張本人がいなくなっても余韻として残るんです。「人はルールに影響されるのではなくて、場に影響される」というのは、そういう意味もあります。

―― なるほど。

今井:ただ、コミュニケーションといっても話をすればいいだけではありません。表情も仕草も、もっといえば自分自身との会話も全て含めてコミュニケーションなんです。最後の「自分自身との会話」は「思考」と呼ばれますが、それだって立派なコミュニケーションです。

大事なのは、コミュニケーションは「良い場」を創る為の「手段」だということです。これを忘れて、コミュニケーションがただただ自動反応的な何の目的も持たない「手段」になってしまっている人は意外と多い。

「手段」が「目的」にすり替わると、物事はうまくいきません。これもチーム作りの原理原則です。今回の本ではリーダーが理解しておくべき原理原則をまとめています。

―― 今井さんが「原理原則」にこだわる理由はどんなところにあるのでしょうか。

今井:これは仕事に限ったことではないと思いますが、原理原則を理解することが高いクオリティを維持することと、仕事に再現性を持たせることにつながるからです。
原理原則とは既に今ここにあるものであり、目に見えにくいものです。この原理原則が理解できるようになると、良い場でも悪い場でもその場がなぜ起こっているのか、理解できるようになり、意識的に良い場を再現できる力が高まり、「良い場」が出来上がります。

対照的なのが、ルールやマニュアルといった細則で、これに縛られると人が活きないんです。製造業などは別として、対人業務ではマニュアルというのはあくまで迷った時に立ち返るものですので。

こういうものでスタッフを縛る会社ほど、何かあって上司に対応を尋ねると「おまえ自分で考えろよ」って言われたりする。でも、普段マニュアルでガチガチなんだから、そこからはみ出す出来事があったらフリーズしてしまうのは当たり前でしょう。

臨機応変に対応させようと思ったらマニュアルでは限界があって、もっと普遍的なものが必要になります。それがこの本で書いているような原理原則なんです。

それに、ルールもマニュアルもその職場だけのものです。どの職場でも、どんな環境でも高いパフォーマンスを見せられる、仕事の再現性が高い人というのは、ルールやマニュアルではなくもっと根本の原理原則を理解しているといえます。

「褒めて育てる」ためには上司自身が変わるべき

著者 今井千尋氏写真

―― 人の育成についてですが、最近では「叱るより褒めて伸ばせ」という風潮があります。これが案外難しくて、褒めたところ部下が「現状維持でいいんだ」と思ってしまい、向上心が薄くなってしまうことがあります。上手に褒めるポイントがありましたら教えていただきたいです。

今井:コミュニケーションは相互的なものですから、「褒める人」がいれば「褒められる人」もいますよね。もし、褒め方がわからないなら、まず自分が「褒められる準備」をすべきです。

「俺って部下(上司)にとって魅力的で、褒められるような人間なんだろうか。そういう上司(部下)でいるための準備を今日はできているだろうか」ということを部下も上司も考えられていたら、褒めるという行為は自然発生的に生まれます。

「褒めて育てるのがいいと言われているから褒めよう」というのは不自然ですし、たまに企業などである「今週は褒める月間です」みたいなのはもっとダメです。これもまた手段が目的にすり替わってしまっているパターンですよね。第一そんなので褒められてもうれしくないでしょう(笑)。

自分が相手のことを考えて心から褒めたいと思うから褒めるのが本当であって、それが自然に生まれるようにするには、まず自分のあり方を整えるべきです。

―― 本書では「個人のがんばりに頼らないチームづくり」の大切さについても取り上げられていました。これはすごくよくわかる一方で、実際の職場ではどうしても「仕事ができる人」に仕事が集まり、忙しい人とそうでない人で二極化しがちです。これを避けるにはどのような取り組みが必要になるのでしょうか。

今井:これはリーダーの問題で、下手なリーダーはたとえば部下が10人いたら、「1対10」と考えるのですが、上手なリーダーは「1対1が10組」という考え方をします。

この考え方だと、仕事ができるできないにかかわらず個々人の持ついいところに目がいくようになってきます。その良さを掬い上げて、どうチームとして機能するシナジーを作っていくのかがリーダーの腕の見せ所なんです。

だから、「部下が仕事ができなくて」という上司は、自分の力量のなさを訴えているようなもので、「部下のことを言う前に自分はどうなんだ」という話なんですよ。

―― また、働くモチベーションも多くの人が悩むところです。給料以外に「働く理由」が見つかれば仕事は幸せなものになると思いますが、今それらが見つかっていない人はどう考え、どう行動すべきなのでしょうか。

今井:なぜ今の場所で働いているのかという理由が見つからない人は、まず目の前の「自分の現在地」をもう一度見つめなおしていただきたいです。

転職も選択肢の一つだというのは否定しませんが、転職を考える前に今の職場、今の仕事の価値だとか醍醐味はどんなところにあるのかということをもう少し考えてみる。じゃあそのいいところを見つけるために何が必要かというと、「言葉」を変えることです。

言葉を変えると、物事の見え方は変わりますし、自分の考え方、捉え方も変わります。まずは目の前の仕事や職場に対して「いい言葉」を使ってみてください。そうすると、返ってくる「ありがとう」の数は増えます。そうして受けた「ありがとう」はその人のモチベーションを日々、少しずつかもしれませんが確実に、着実に上げるはずです。
そして、その積み重ねによって考え方が変容し、いつの間にか日々の仕事に対する捉え方が変わっていくのです。

―― 本書を通して今井さんが一番伝えたかったことは何ですか?

今井:仕事の現場に光を当てたいという気持ちが大きかったです。「一燈照隅」

今、疲弊しているリーダーが多いじゃないですか。自信を失っていたり、仕事に意義を見出せなかったり。この本を通してそういう人に光が当たり、彼らが勇気を持ち、一歩、昨日とは違う行動につながることができればいいなと思っています。
まずは、「行動」あるのみです!

ディズニーランドやUSJにいった時のあの楽しい感覚を仕事でも味わっていただきたいですし、そんな感覚を得られる職場であれば、間違いなく人は輝くんですよ。そんな「場」を作っていくのは、リーダーや上司一人ひとりですし、そんなリーダーや上司がたくさん生まれてほしいという思いで今回の本を書きました。

―― 最後になりますが、全国の職場のリーダーの方々にメッセージをいただければと思います。

今井:「部下が辞めてしまう」にしても「職場の居心地が悪い」にしてもそうですが、職場で起きる問題って、どんなことであれはじめはごくごく小さなコミュニケーションのズレなんです。そのズレを解消することなく放っておいたから、問題として表面化しているわけで。

そして、ズレを作ったのが自分なのだとしたら、そのズレを解消できるのも自分です。「自分も大事、他人も大事」最幸思考(=全体最適思考)という気持ちを持って、いい言葉を使っていれば、自分の想いが周りに伝わって、皆にとってすばらしい職場、すばらしい人間関係になると思います。ぜひ皆さんに自分の仕事に志を持って、行動する「志事」にして頂き、幸せなものにしていただきたいと思いますね。
(新刊JP編集部)

書籍情報

目次

  1. 1章 リーダーの「現在地」を知る3つの質問

    • ・あなたは、「なんでやってないの?」と言っていませんか?
    • ・あなたは、「ルールですから」と言っていませんか?
    • ・あなたは、「まだ本気出していないだけ」と思ったことはありませんか?
  2. 2章 最強のリーダーになる4つのステップ

    ・リーダーの抱える疑問に答えを示しながら、部下、チーム、あなたを変える
  3. 3章 部下が変わる! リーダーの原理原則

    • ・「わかりました」と答えたのに「わかっていない部下」。本当にわかるようになるには? など
    • ・身についているクセを変える、8週間チャレンジ
  4. 4章 チームが変わる!リーダーの原理原則

    ・目標を「また会社が変なこと言い出した」と、伝わっていきません。 など
  5. 5章 お客様が輝く!リーダーの原理原則

    ・お客様の要望はどこまでお聞きすればいいでしょうか? など
  6. 6章 自分が変わる! リーダーの原理原則

    ・現場のリーダーになって手応えの足りなさも感じています。 など

著者プロフィール

今井千尋

1975年神奈川県生まれ。立教大学卒。
子どもの頃の夢だった「ジャングルクルーズの船長さんになりたい!」を実現。
ゲストサービス、トレーニング業務に従事。東京ディズニーシー開業では、キャストを中心に数千人の導入研修の担当として育成業務に従事。
その後、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営する株式会社ユー・エス・ジェイに入社。トレーニングスーパーバイザーとして、飲食部、リテールセールス部(物販部)、エンターテイメント部、オペレーション企画部、全社人事部トレーニングチームにて人財育成・開発の専門職を歴任。V字回復施策となる「Magical Moment Program」の参画メンバーとしてゲストサービス力向上に貢献。また、企業内大学や、全クルーの模範となる人財育成専門のトレーナー制度の立ち上げに関わる。

現在は、この経験をもとに、人財育成・開発コンサルタントとして中小企業から一部上場企業、各経営団体、学校団体、中国上海など海外でも、講演、研修、コンサルティング、講義(授業)を行う。コミュニケーションエナジー株式会社取締役。