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アマゾンへのリンク『3秒で顧客をつかむ!コスト効果“3300%”の「展示会営業」術!』

本書の解説

新規顧客の獲得や販路の拡大を狙う企業にとって、業界各社が一堂に集う展示会は大きなチャンスだろう。特に限られたリソースで新規顧客を増やしていかなければならない中小企業にとっては、

  • ・体感させながら、積極的に自社商品の価値を伝えることができる。
  • ・事前集客に必要以上の労力を割かなくていい。
  • ・展示会来場者は、特定のテーマに平均以上の関心を持っている。
  • ・決裁権のある人間と接点をつくることができる。

など、メリットが多い。

「展示会でモノは売れない」その真意とは?

しかし、単に展示会にブースを出すだけでは高確率で失敗する。つまり、新規顧客を捕まえることもできないし、当然売上が伸びることもない。

そう語るのは、本書
の著者で中小企業診断士の清永健一氏だ。展示会を利用した営業スタイルのコンサルタントとしても活動する清永氏は、「来場者、ブースに立ち寄り、たくはない」「展示会、その場で売れる、ことはない」の二つが、展示会の真実だという。

来場者は特定の企業のブースを目当てに来ているわけではなく、限られた時間でできるだけ多くのブースを見たい。その場で商談をする気などさらさらない。そうした相手に対して、企業側はなんとか自社のブースを見て欲しいと手ぐすねをひいて待ち構えているわけである。この両者のテンションの違いがわかっていないと、展示会はうまくいかない。

「せっかくの機会だから」が客足を遠ざける

では、どうすれば展示会出展を有意義なものにできるのか。清永氏は本書でそのノウハウを明かしていく。

企業側がまず改めるべきは、「一人でも多くの来場者を自社のブースに呼び込んで、とりあえず名刺交換をする」という姿勢である。来場者にどんなに熱心に商品の魅力を説明して、相手の反応が悪くないものだったとしても、「展示会でどんな人と出会いたいか」というビジョンや、展示会に出展するにあたって準備からアポ、受注までのプロセスが明確化されていないと、後日渡された名刺に連絡してアポが実現する確率は相当に低い。

これらを事前にはっきりさせた上で、清永氏は『1ブース=1アイテム=1ターゲット』を、展示会成功のカギとして挙げている。「せっかくの機会だから」と自社製品をすべてプッシュするのではなく、自分たちがターゲットと定めた人の問題を解決できる商品を一つプッシュするのが、成功の決め手なのだ。

ここでは展示会成功のための考え方やスタイルについて触れたが、本書では具体的なブースの作り方、来場者が足を止めたくなる仕掛けの作り方、受注までのプロセスまでを詳しく解説している。

どの企業にとっても喉から手が出るほどほしい新規顧客や新たな販路。それを見つけるために清永氏のノウハウは役立つところが多いはずだ。
(新刊JP編集部)

インタビュー

マネすると失敗する 展示会出展でお手本にしてはダメなブースの特徴

―― 清永さんは今回の本で、展示会を利用した営業手法を提唱されています。この手法は訪問や電話、ダイレクトメールといった一般的な営業手法と比べてどんな点が優れているのでしょうか。

著者、清永健一さん写真

清永: 展示会の一番いいところは「見込み客のリストを作れる」という点です。通常、見込み客を作ろうと思ったら、それこそ飛び込みで営業をかけたり、電話をかけたり、ダイレクトメールを送ったり、ホームページやSNS、ブログで集客したりといった方法がメインになりますよね。

これはこれでいいのですが、特にウェブでの施策となると、効果が出るのはBtoCで直接消費者にアプローチする企業なんです。たとえば工作機械を工場に売るなどといったBtoBのビジネスをやっている企業がウェブで見込み客を作るのは難しい。そうなった時に展示会が有効になります。

展示会は優良な見込み客に出会いやすいんです。テーマが決まっていますから、来場者はそのテーマに関心がある人ですし、その中には役職が高くて決裁権があるような人も多くいます。そうした人と知り合って後の営業につなげられるという意味で、展示会は有効な営業手法なんです。

―― 確かに展示会は大きなものでは数万人規模の来場者がつめかけます。そこから自社の見込み客を一気に獲得できると考えると効率がいいですね。

清永: そうですね。もう一ついいところは、中小企業でも成果を出しやすいところです。やっぱり来場者は大手企業のブースを目当てにしてるんですよ。上手にやればその人たちを自社の見込み客として取り込むことができる。大手の集客力を使って自社の顧客を作れるので非常に効率がいい方法だといえます。ぼくはこのやり方をコバンザメ戦法と呼んでいます。

―― 一方で「単に出展するだけではうまくいかない」ということも書かれています。来場者をどう振り向かせるかという工夫が必要だというわけですが、あまりそういった工夫はされていないのが現状なのでしょうか。

清永: 「毎年出展しているから」という惰性で出展している企業が大部分です。展示会にもよりますが、見ていて「ちゃんと考えているな」と思うブースは100社出展していたら1つか2つではないでしょうか。だからこそきちんと受注までの導線を考えて取り組めば成果が出るわけですが。

―― 私もいくつか展示会に行ったことがありますが、大きな企業ほどブースも大きく内装もきれいで、コンパニオンが迎えてくれたりしますし、お金がかかっているなという印象でした。

清永: 確かに大企業のブースは広くてきれいですが、営業成果はそこでは決まりません。

大企業はお金をかけてきちんとしたブースを作るのですが、基本的にそこで受注をとろうとはあまり思っていません。テレビCMを打つのと同じ感覚で、広告宣伝費の一環で出ているだけのところがほとんどと考えた方がよいでしょう。展示会で成果を出そうと思ったら、そういう大企業の「きちんとやっているっぽく見える」ブースをお手本にすると失敗しやすいんです。

―― タイトルにある"コスト効果3300%"の意味を教えていただきたいです。

清永: 僕が展示会出展を手伝った大阪のITシステムベンダーさんで、200万円弱の出展料で半年後にその33倍の売上があった企業があるんです。その事例が象徴的だったのでタイトルに入れました。

―― いったいどのようにそれほどの成果を出したのでしょうか。

清永: 成果を決定づけたのは「特典」です。かといってノベルティのようなものではなく、次のアポに繋がりやすい特典をつけたんです。

その会社はIT関係のセキュリティツールが商材だったのですが、ブースに来て名刺を交換した人の会社を訪問して社内のセキュリティのレベルを無料で診断して差し上げるというサービスを特典にしたんです。「通常3万円かかるのですが、今回の展示会に限り先着●名様まで無料でやります。みなさん申し込まれますがどうしますか?」と言うと、ほとんどの人がこの特典に申し込みました。

この特典に申し込んだ先には、必ず次回アポが取れますし、その際の診断の結果を見て問題を解決する商品を提案できるというわけです。

―― それは上手なやり方ですね。

清永: はい。出展のコンセプトから出展後のアポイントや受注までの流れをあらかじめ考えて当日を迎えるという発想が大事です。今回の本ではその一連のプロセスをすべて解説しています。

コーヒー展示会で注目を集めたのは意外にもコーヒーではなく〇〇のブースだった

―― 展示会は年間を通して様々なものが開催されています。どの展示会に出るかというところで迷いそうです。

著者、清永健一さん写真

清永: 展示会の選び方は大きく二つあります。一つめは、どの業界にも「定番」と言われる展示会があるので、それに出るという方法。食品業界なら「FOODEX」、美容なら「ビューティワールド」、製造なら「ものづくりワールド」などですね。こういうものに出れば「ハズレ」はなく、一定の成果は出しやすい。

二つ目のやり方は、若干ずらす方法です。「スペシャルティーコーヒー展」という展示会があって、どこを見てもコーヒー豆にコーヒーシュガーにコーヒーカップに、という感じでコーヒー関連のブースばかりなのですが、その中で、あるブースに一番人が集まったんです。

何かというと「紅茶」のブースです。展示会場は閉鎖された世界ですから、異質なものがあると注目を集めやすい。しかも、コーヒーのバイヤーはおおむね紅茶のバイヤーでもあるので、異質ではあるけど的外れではないんです。的外れどころか、むしろズバリですね。こういう風に自社の業界から少しずらした展示会に出展する方法もありです。

―― また、展示会成功のポイントとして、自社製品を全部見せるのではなく一つに絞ることを挙げていました。この理由を教えていただきたいです。

清永: 一つのブースに自社製品が全部並んでいると、見に来る人は何のブースだかわかりません。わからないものに人は立ち寄らないんです。

わざわざ展示会場まで足を運んでいる一方で、展示会に来る人というのはブースに立ち寄りたくないと思っています。そういう人を立ち寄らせるためには、とにかくわかりやすくしないといけません。ならばあれこれ並べるよりも、一つの商品に絞る方がいい。「ワンブース・ワンアイテム・ワンターゲット」を心がけていただきたいです。

それと、展示会では商品そのものを見せても意味がないということも理解しておくべきです。顧客の悩みに対してどういう解決をするのかというところを見せないと、展示会では人が自社のブースに立ち寄ってくれません。

―― それはどのように表現すればいいのでしょうか。

清永: ブースの看板部分に書くキャッチコピーです。といっても変に凝る必要はなくて、自社が展示会で出会いたい層の人が日頃心の中でつぶやいているだろうことをそのまま書けばいい。「〇〇で困ったとお悩みの方へ」という感じです。

それが相手の思っていることそのものだったりすると、やはり無視はできないはずです。

―― 清永さんが「展示会営業」のコンサルティングの道に入ったのはなぜですか?

清永: 僕は以前、大阪のケーブルテレビの会社で営業をしていまして、民家に一軒ずつ飛び込んでケーブルテレビを売り込んでいたんですけど、まったく売れなかったんです。

そんな時にたまたま展示会に出展しなさいという話が株主の大阪市から会社に来ました。当時ちょうど地上デジタル放送が始まる頃で、ケーブルテレビの会社として地デジについて説明しなさいということだったんですけど、数字にもならないし面倒だしで誰もやりたがらないんですよ。それで「おまえやっとけ」ということで全然売れてない僕のところにお鉢が回ってきた。

僕は当時あまりにも売れないから営業させてもらえずに集金係をやっていたくらいだったので「その仕事よりはマシかな」くらいの気持ちでいろいろ資料を作って、展示会に出展したんです。80人くらいブースに来まして、その人たちに地デジについて説明しました。一切、自社商品の売り込みはせずに、ただ教えただけです。

そうしたら、展示会の後に「ケーブルテレビを買いたい」、しかも「清永君から買いたい」という電話が会社に殺到したんです。

―― 何が良かったのでしょうか。

清永: 今思うと、ブースで売り込まずにただ親切に教えてあげるだけだったところだと思います。

人は教えてもらうことは好きだけど、売り込まれるのは大嫌いなんだとその時に思いました。といっても、営業マンが、単に「教えてあげますよ」と連呼するだけだと押し付けになってしまいますし、結局は「売り込み」になってしまいます。「教えてあげること」と「教えてもらうこと」が自然に成立する場をつくることが大事で、それが展示会だと気づいたんです。

これが自分の原体験になっていて、最初はケーブルテレビ会社の中で展示会を利用した営業をやり始めました。そうしたら売れに売れたので、この方法を伝えるコンサルタントになろうと思ったんです。

―― これまで様々な会社の展示会出展に関わってこられた清永さんですが、企業側から出る質問や悩みで多いものはどんなものですか?

清永: やはり出展コンセプトのところですね。どう考えていいかわからないというのがあるんだと思います。

といっても難しい話ではないんです。基本的には「展示会で誰に会いたいか」「その人は日頃どんな悩みを感じているか」「その中のどの悩みを解決できるのか」「なぜ解決できるのか」といった問いへの答えを考えるだけなので。これらを僕も一緒になって練り上げていくという形でやっています。

どんな会社でも顧客がゼロということはないわけで、必ず顧客がいます。顧客の中で自社の商品をすごく喜んで使ってくれているところに行って、聞いてみればいいんです。「なぜ喜んで使ってくれているのか」をつかむことが出展コンセプトづくりには大事なんです。

―― 最後に、展示会出展に興味を持つ企業や、すでに出展してはいるもののなかなか成果が出ていない企業にメッセージをお願いできればと思います。

清永: まずは「ワンブース・ワンアイテム・ワンターゲット」を心がけて出展コンセプトを練り上げること。そのやり方も本書で公開しました。出展コンセプトが固まれば、本書に記載している手順で、受注までの導線をきっちり設計しましょう。そうすれば必ず成果が出ます。ぜひやってみていただきたいですね。
ぼくは、「展示会は自社の想いや志を世の中に堂々と発信する最高の場だ」と信じています。
この記事を読まれた方の展示会の成功を心から応援しています!
(新刊JP編集部)

書籍情報

目次

  1. ●展示会初心者でも3秒で顧客を獲得できる10の出展ステップ
  2. ●「展示会営業」術で3300%の費用対効果を出す企業の舞台裏
  3. ●大金や美人コンパニオンを使っても「売り上げゼロ」失敗事例!
  4. ●様々な業界での「展示会営業」術・売り上げ爆増事例 ほか

プロフィール

清永健一

展示会営業Ⓡコンサルタント、中小企業診断士。奈良生まれ、東京在住。株式会社展示会営業マーケティング代表取締役。
神戸大学経営学部卒業後、リクルート映像、メガバンク系コンサルティング会社など複数の企業で手腕を発揮し、2015年に独立起業。
現在は、展示会に出展する企業に出展コストの33倍売るノウハウ伝える日本唯一の展示会営業Ⓡコンサルタントとして活躍中。
著書に『飛び込みなしで「新規顧客」がドンドン押し寄せる「展示会営業」術』(ごま書房新社)『営業のゲーム化で業績を上げる 成果に直結するゲーミフィケーションの実践ノウハウ』(実務教育出版)ほか。