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本が好きっ! ブックナビゲーター矢島雅弘のインタビューラジオ

『矢島雅弘の「本が好きっ!」』は、ブックナビゲーター矢島雅弘が、話題の本の著者をゲストに招いてお送りするインタビュー番組です。本についてはもちろん、ゲスト著者の人となりや、成功体験、考え方、ビジネスのちょっとした気づきやなどを、矢島が自身の持ち味である軽妙な対談形式でお聞きし、リスナーの皆さまに「軽くて楽しい」けれども「知的」な時間をお届けします。

ゲスト: ライター・編集者 小山田 裕哉さん

『売らずに売る技術』

小山田 裕哉さん画像

矢島: 今回は、ソーシャルメディア時代におけるモノの売り方を考察した1冊なんですが、小山田さんは「企業が売ろうとして売るのが難しい時代になった」と評していますね。

小山田: 「企業が売ろうとして、売るのが難しい」というのはすこし補足が必要で、つまり「企業が一方的に売ろうとして売るのが難しくなった」ということなんですね。

矢島: たとえば、「新商品ですよ!」「おいしいですよ!」といった、直接的なアプローチが通用しなくなったということですか?

小山田: そうです。「安い」とか「新機能搭載」とか、そういう“企業側からの押し出し”を消費者に向けて訴求しても通じづらくなってきたということですね。

矢島: そうか、たとえば「おいしいですよ」という広告があっても、ツイッターやレビューサイトを見れば、消費者の生の声が出てきてしまいますもんね。「○○丼食べてみたけど、イマイチだった」なんていう書き込みが大量にあったら、偽物の広告がバレてしまうと(笑)

小山田: だからソーシャルメディアは、企業がイメージをコントロールするのがむずかしいんですよ。ネット上の口コミというのは、マスメディアの広告と違って企業がコントロールすることができないので。これを無理にコントロールしようとすると、ステマ(※)と言われますからね!
※ ステマ:「ステルスマーケティング」の略。宣伝であることを隠して商品の良さを伝えようとする行為。

小山田 裕哉さん画像

矢島: ソーシャルメディア上では、企業側が商品イメージやブランドイメージをコントロールが非常に難しい。そこを企業が、どうコントロールするか・・・うまく作り上げていくにはどうすればいいか、ということを高級ブランドに学ぶのが本書のテーマですね。

小山田: はい。

矢島: 高級ブランドはどうしてるんですか?

小山田: ひとことでは言えないですけど(笑)高級ブランドってこう言っちゃなんですが、ちょっと偉そうじゃないですか。でも、そうやって普通の生活よりもランクが高いところにポジションを取って、上昇志向に応えてきたわけです。これをソーシャルメディアで同じことをすると「なんか気に入らねーな」という意見が出てきてしまうので、ラグジュアリーブランドにとっては危機なんです。

矢島: そうですね。

小山田: なんでラグジュアリーブランドが高級ブランドとしてやっていけるかというと、みんなが認めてくれるからなんですよね。消費者の頭の中から、「このブランドの商品はモノが良い」というイメージが失われてしまったら、もうどれだけ良いものを作っても成立しなくなるんです。

矢島: そう考えると、ソーシャルメディア時代って企業にとってはかなり怖いですね。

小山田: こわいですよ!

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小山田: 高級ブランドは、「質の良さ」とか「本物の体験」を売りにしているから、ちょっとでも傷が付いたときの落差は大きいです。だから一般のブランドよりも、ブランドイメージを大切にせざるを得ない人たちなんですね。でもソーシャルメディアが普及した以上は、消費者と同じ目線でコミニュケーションしていかなきゃいけない。

矢島: 大上段で偉そうにもしていられなくなったわけですね。そのあたりをうまくやったブランドと言えばどこでしょうか?

小山田: たとえばバーバリーです。バーバーリーは日本においては若者にも親しまれていましたが、海外では“古いブランド”というイメージが強かったんです。そこで2000年代半ばくらいから、ブランドの若返りをさせるという方針がとられ、積極的にデジタルマーケティングを強めていくことが決められたんです。

矢島: ラグジュアリーブランドのソーシャルメディア活用の先駆けとなるわけですね。

小山田: そこで、まだ当時は高級ブランドが手を出していなかったTwitter だったり、Youtube だったりといったデジタルチャネルを使って、消費者と直接コミニュケーションを取ったんです。そうすることで若い世代にアプローチしていきました。ただ今までのように「どうだウチはすごいだろう」というやり方をしても、反発を食らうだけなんですよね。

矢島: たしかに(笑)急に偉そうなツイートが飛んできても困りますね。

小山田: そこで当時のバーバリーは、フランクなブランドとして振る舞い、親密感を演出していったんです。たとえば写真ひとつとっても、これまでは名のあるフォトグラファーに依頼していたものが、ソーシャルメディア上には、もう携帯で撮りましたみたいなものをばっと上げてみたり。権威よりも、熱狂が伝わるものを優先的に採用するようにしていったわけです。その他にも・・・・

著者プロフィール

小山田 裕哉

ライター・編集者。1984年生まれ。岩手県出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映画業界、イベント業などを経て、フリーランスのライターとして執筆活動を始める。扱うジャンルは幅広く、ビジネス・カルチャー・ファッション・広告・時事問題など、「アイドルからラグジュアリーブランドまで」をテーマに、さまざまな媒体で執筆・編集活動を行っている。本書は初の単著となる。

パーソナリティプロフィール

矢島雅弘

1982年埼玉県出身。2005年よりスタートしたPodcasting番組「新刊ラジオ」のパーソナリティとして、これまで約1800冊の書籍を紹介。ビジネス書から文芸、サブカルなどさまざまなジャンルの本を簡潔に分かりやすいナレーションで解説し、支持を得ている。また、インタビュアーとしても確かな腕を持っている。モットーは『難しいことを、面白く分かりやすく』。

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