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本が好きっ! ブックナビゲーター矢島雅弘のインタビューラジオ

『矢島雅弘の「本が好きっ!」』は、ブックナビゲーター矢島雅弘が、話題の本の著者をゲストに招いてお送りするインタビュー番組です。本についてはもちろん、ゲスト著者の人となりや、成功体験、考え方、ビジネスのちょっとした気づきやなどを、矢島が自身の持ち味である軽妙な対談形式でお聞きし、リスナーの皆さまに「軽くて楽しい」けれども「知的」な時間をお届けします。

ゲスト: 大串 亜由美さん

『ハイブランド企業に学ぶ 仕事が変わる「感性」の磨き方』

大串 亜由美さん画像

矢島: 仕事っていうとロジカルなければいけないと思われがちです。そんな中で本書は「感性」の重要性を解説していますが、感性がビジネスに重要だと気づいたのはどういうきっかけだったんでしょうか?

大串: 感情とか、思いが大事なことは前から思っていたことではあるんですけど、特に考え始めたのは、ハイブランド・ラグジュアリーブランド業界に対しての研修を行うことが増えてきたあたりからですね。

矢島: なるほど、ラグジュアリーブランドの販売員さんたちも悩んでいるんですね。

大串: みなさん自社ブランドが好きだし、ある程度の接客技術もマナーも知っている。でも、今ひとつお客さまを虜にできない、リピーターが増えない、売り上げあがらないということがある。そこってなんなんだろうと思ったんですね。

そこでミステリーショッピングで(※)、実際に私たちがお客さんの振りをして出かけて行ったんですけど、どうも心に刺さらないのが「感性に訴えかけられないから」なんですね。
こちらの「感性」を拾ってくださろうとする姿勢が、見えにくいからだと思ったんです。
※ 販売方法の問題点や改善策などをあきらかにするための覆面調査

大串 亜由美さん画像

大串: たとえば、100万円の予算をもって指輪を買いに行きました。すると、販売員さんは、「予算はいくらですか?どんな石がいいですか?サイズはいくつですか?」と聞きたくなるんですけど、そうじゃないんです。

矢島: 一般的な接客という感じですけど、足りないものがあると。

大串: そうです。実は、買い物に来ているお客さまは、「指輪」を買いたいわけじゃなくて、「人生に一度のエンゲージメント・リング」を探しに来ているわけで、あるいは、「大事な奥さんのお誕生日プレゼント」を買いに来ているんです。
だから、買い物に至るまでの背景とか、人生のハイライトに対する思いや、相手の感情を分かろうとしないと、結果、「あなたから買いたい」とはならないって気づいたんです。

矢島: なるほど。ハイブランド・ラグジュアリーブランドは特にそうですね。売ってるのは商品や品質だけではなく、物語や、商品を手にした時の体験も含めてですからね。そこが見えないと、ハイブランドに行く意味がないですね。ネットショッピングならいくらでも安く買えてしまうわけですから。

大串: そういうことなんです。わざわざ出かけて行って、販売員さんと1対1のコミニュニケーションをとる意味がなくなってしまうので、共感を示してくれたり、興味を盛ったり、心に近づいてくることが必要なんです。

矢島さん画像

矢島: このマインドはとても大切だと思います。ハイブランド・ラグジュアリーブランドに限ったことではなく、どこでも重要なことですね。

大串: すごく大事だと思います。たとえば上司から、「会議室予約してくれ」って頼まれたとき、「303号室取っておきました~」だったら、たぶん役に立ってないと思うんです。
何のための会議室なのか。顔ぶれは誰なのか、それによって空調の温度は上げた方がいいのか下げた方がいいのか。嬉しい話なのか、残念な話なのか。窓があったほうがいいのか、ないほうがいいのか。そういう相手の背景にも興味を示さないと、いわゆる合格点を超える一流の仕事にはならないですね。

矢島: なるほど。ちょっと変なたとえですけど、秀吉が「草履を温めておきました」って話がありますよね。あれも、「草履を温めておけばOK」なんじゃなくて、「信長様が足が冷たいだろうから温めておきました」っていうことなんですよね。これって感性の仕事ですよね。

大串: そういうことですよね。ところが「靴は温めておく」みたいなマニュアルになってしまうと、温めない方がいいときにまで温めてしまう。

矢島: そうですね、真夏も草履を温めておいたら、斬られても文句言えない(笑)

大串 亜由美さん画像

大串: 社会人になってきっちり仕事をしていると、感情とか感性に訴えかけるのが子どもっぽいんじゃないかと思いこんでいる人は多いですね。すべて論理的に、感情を押しころして、理性的でいなければならない、というような。でも、実際いろいろ思い浮かべてみると、「この人と仕事したいな」とか、「またあの人に声かけよう」と思うときって、どういう一言を言って下さったとか、こちらの感情にどれだけ近づいてきれくれたかっていうのは、すごく大事ですよね。

矢島: 僕もインタビュアーの仕事を始めてから、ようやくそれに気付きました。いわゆるトップセールスマンとたくさん会うようになって思ったんですけど、みなさん人懐っこい人ばかりなんですよね。年が離れている人でもまるで友達のように話してくれたりして。あ、こういう人だから営業ができるんだなって気づきましたね。相手の話を聞くときの態度って、すごく大事ですね。

大串: そうですね。相手の話を聞くというと、今、「傾聴」のトレーニングが大流行しているので、傾聴についてまったく学んだことがないっていう人は少ないと思うんですね。でも、技を知っていたり、技術は使えても、実際に、本当に相手に興味はありますか?ってことを考えないといけないんです。ここはむずかしい線引きだと思うんですけど、仕事だとしたら、個人的な興味関心ではなくて、「仕事として興味を示す」。

著者プロフィール

大串 亜由美

株式会社グローバリンク代表取締役。日本ヒューレット・パッカード株式会社にて14年勤務後、コンサルティング会社勤務を経て、独立。グローバリンクを創立。「国際的規模での人材活用、人材育成」をキーワードに、マネジメント、自己主張など、ビジネスコミュニケーション全般の企業・団体研修、各種コンサルティング業務を手がける。15年連続、年間250日を超える研修実績。

パーソナリティプロフィール

矢島雅弘

1982年埼玉県出身。2005年よりスタートしたPodcasting番組「新刊ラジオ」のパーソナリティとして、これまで約1800冊の書籍を紹介。ビジネス書から文芸、サブカルなどさまざまなジャンルの本を簡潔に分かりやすいナレーションで解説し、支持を得ている。また、インタビュアーとしても確かな腕を持っている。モットーは『難しいことを、面白く分かりやすく』。

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