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【「本が好き!」レビュー】『ニコラ・テスラ 秘密の告白 世界システム=私の履歴書 フリーエネルギー=真空中の宇宙』二コラ・テスラ著

提供: 本が好き!

テスラコイルで有名な発明家の自伝です。
電気の発明をした人くらいしか知らなかったのですが、巻末に略歴がのっていたのでそちらを読んでから本文を読んだ方がわかりやすい。
1943年1月の夜のこと、マンハッタンの中心にそびえたつニューヨーカー・ホテルの一室でそこに十年以上住んでいた老人が孤独な死を迎えた。
翌朝メイドに発見され、心筋梗塞という検視結果も出ていたため、それだけなら身寄りのない老人が一人死んでいったというだけだっただろう。
だが老人が最後の時を迎えたホテルでは、FBIが徹底的に部屋を捜索してすべての書類を持ち去るという事件が起こっていた。
この老人こそニコラ・テスラ、レーザー光線や素粒子ビームの威力をはるかに超えた重力波兵器である「世界システム」の理論を打ち立てたがゆえにマークされていた人物だ。

第一章「天才発明家はこんな少年だった」では少年時代の家族との思い出や亡くなった兄について、そして繰り返し現れる幻覚についても語っている。
炎の幻覚や暗く青い背景に緑の煌めく剥片と美しい帯が出てくる幻覚は、頭の中で図を組み立てて操作できるという能力の代償だったのだろうか。
まるで脳内でCADを操作するような能力だが、これが親に聖職につくよう望まれていたテスラを発明家にさせたのかもしれない。
自ら語っている精神病の症状もさることながら、独特な語り口調にも今なら自閉スペクトラム症と言われそうな個性が現れているように思える。

エジソンとの出会いと別れ、そしてモーターや真空管の発明、無線システムの構想など次々に湧き上がるアイデアが語られていく。
テスラにとって重要なのは自分の発明品が作られて世界に広まっていくことで、どこの会社と契約するとか利益が得られるということは些事に過ぎなかったというのは伝わってきた。
世界システムがどのようなものなのかは読んでいてもよくわからなかったが、十九世紀前半に進展した電気の研究を、十九世紀後半から二十世紀にかけて電気の実用化にテスラが大きな貢献をしたのはよくわかった。

兵器にもなりうる世界システムを構想したテスラは、「どんな強力な兵器が出現しても戦争はなくならない」と語り頭脳を持つ機械による代理戦争についてこの話を発展させている。
原子力は不幸しか生まないと考えており、二十世紀の歴史がテスラの正しさを証明しているように思えた。
純粋にエネルギーというものを追求した人生が見える本だった。

(レビュー:DB

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ニコラ・テスラ 秘密の告白 世界システム=私の履歴書 フリーエネルギー=真空中の宇宙

ニコラ・テスラ 秘密の告白 世界システム=私の履歴書 フリーエネルギー=真空中の宇宙

フリーエネルギー、スカラー電磁波、人工地震、歴史の闇に葬られた異才ニコラ・テスラ、回顧録に隠された超天才の頭の中

いまこそ耳を傾けるべき、超天才発明家の未来予測! ―「人類は恐るべき問題に直面している。その問題は、物質的にいくら豊かになっても解決しない。原子のエネルギーを解放したとしても恩恵などない。人類にとってはむしろ不幸になりかねない。不和や混乱が必ずもたらされ、その結果として最後に行きつくのは、権力による憎むべき支配体制なのだ」

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