だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『《世界》がここを忘れても アフガン女性・ファルザーナの物語』清末愛砂編

提供: 本が好き!

パキスタンのアフガン難民キャンプで生まれ育ったファルザーナは、5年前に家族とともにアフガニスタンに戻ってきました。 2020年、理解ある家族の応援もあり、大学二年生となった彼女は、暴力や差別を受けてつらい生活を送っている女性たちを助けたいという思いから、法学を学んでいます。

大学へは幼なじみのナーディヤーと共にバスで。
文字が読めない母の分までと勉学にいそしむナーディヤーは、子どもの頃から優秀でしたが、最近町中でテロが相次いでいることから、心配する両親に学校に通うことを反対される毎日。
このままでは、大学を辞めて結婚をするようにといわれかねないと懸念しているのでした。

そんなある日、ファルザーナの目の前で、乗るはずだったバスが爆破され……

アフガニスタン女性革命協会・RAWAを支援する「RAWAと連帯する会」の共同代表で、長年にわたりアフガンの女性たちと共に活動を続けている著者が、現地の活動を通じて知りあった人々から聞いた話を“ファルザーナ”という一人の女子大学生のストーリーとして再構成して書き上げたという物語。
柔らかなタッチの中に力強さを感じさせる久保田桂子さんの絵とともに構成された、悲しみの中にも、美しさと力強さを兼ね備えた絵本です。

先日レビューをアップしたアフガニスタンの女性作家さんたちの作品を集めた短編集『わたしのペンは鳥の翼』を読みながら思い出して、本棚の奥から引っ張り出してきて再読しました。

本を開くたび、読者の「決して忘れない」という思いを強くする、そんな願いが込められた本です。

(レビュー:かもめ通信

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

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《世界》がここを忘れても アフガン女性・ファルザーナの物語

《世界》がここを忘れても アフガン女性・ファルザーナの物語

9.11後のNATO侵攻、タリバン政権の崩壊と混乱、そしてISの台頭…… 激動のなか、それでも国内で暮らし、あるいは難民キャンプで生活せざるをえなくなったアフガンの人々。 とりわけ、虐げられてきた女性たちは、その後どうなったのでしょうか? RAWA(アフガニスタン女性革命協会)を支援している日本の「RAWAと連帯する会」代表の著者が現地での活動を通して知り合ったアフガンの女性たちから聞いた話を「ファルザーナ」という一人の大学生のストーリーに再構成し、美しい絵とともに紹介する〈解説付き絵本〉を制作しました。 日本のメディアがあまり報じなくなった今も、そこで生き、考え続けている女性たちを知るための、糸口となる大人のための絵本です。

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