だれかに話したくなる本の話

衝撃の私小説『夫のちんぽが入らない』 大ヒット後の夫婦の関係は?

第一印象は「なぜこのタイトル?」。しかし、読み終ってみれば「このタイトルだからこそ」という本がある。

『夫のちんぽが入らない』(扶桑社刊)だ。本作は著者であるこだまさんの実体験に基づく私小説で、まさにそのまま夫の性器が「入らない」、普通とは違った夫婦の営みを描いた一冊だ。

なぜ「入らない」のに2人は夫婦関係を続けるのか。孫を望む親たちからのプレッシャー。夫以外の男性の性器は受け入れることができる妻…。そして交際20年、紆余曲折を経た2人の結論。
本作は出版前から書店員を中心に絶賛を浴び、時には広告拒否を受けることもあったが、口コミを中心に13万部を突破した。

5月30日には本書のオーディオブック版(音声での読み上げ版)が発売され、次のようなコメントを寄せたこだまさん。

「下品な言葉」を超えて、読者にさまざまな感情をもたらす賛否両論作『夫のちんぽが入らない』の成り立ちについてお話をうかがった。

■最初は不安だった。でも、評価してもらえた。

――『夫のちんぽが入らない』の内容を文章に落とそうとしたきっかけから教えて下さい。

こだま:原作は「文学フリマ」というイベントで出品した同人誌『なし水』に収録したエッセイです。

「普段、ブログに書かないような内容にしたほうがいい」と同人誌のメンバーに言われ、思いついたのはずっとまわりに隠してきた「あの問題」しかありませんでした。仲間の助言がなければ踏み出せなかったと思います。

――語られているのは、こだまさん夫妻の「性」の話であり、プライベートな部分にも絡みます。実際書くうえで抵抗感はなかったのですか?

こだま:原作となったエッセイを書いたときは「ここまであからさまな性の話は嫌われるだろうか」と不安でした。でも性的な部分だけでなく、仕事や夫婦の精神的なつながりなど、全体で評価してもらえたことが励みになり、本書においても抵抗なく描くことができました。

――本書の中でもブログを運営されているこだまさんの姿がうかがえます。文章で何かを表現することはお好きだったのですか?

こだま:子どもの頃から人と話すのがかなり苦手でした。面と向かうと焦ってしまい思っていることが言えません。でも、ブログを始めてから、心に溜めていたことを文章にする面白さを知りました。文字なら言いたいことが伝えられるので、この方法が自分には合っているのだと思います。

――実際に本が完成し、書店に並んだ時の感想を教えて下さい。

こだま:感動でした。一番初めに目にしたのは地元の小さな書店です。田舎にもちゃんと2冊置いてあり、嬉しくて表紙を何度も撫でてしまいました。

東京の書店を何軒かまわった際にはPOP付きで大々的に展開されていて、「何かの間違いじゃないだろうか」と思いました。

■本が出版されてから、生活に変化はありましたか?

――作中で悩み続けるこだまさんの姿が印象的でした。この問題と、そして自分と向かい合い続けたことで今、良かったと思うことはありますか?

こだま:思い悩んできた日々は決して無駄じゃなかったんだなと思いました。自分は性的なことも仕事も満足にできない情けない人間だと卑下していたけれど、その気持ちが極端だったからこそ書けたのだと、今は思います。

――性器が入らないことで悩むことや辛いこともあったと思いますが、旦那さんと結婚して良かったなと思うこと、ここが好きと思うところをお聞きしたいです。

こだま:夫婦というよりも兄妹のような血縁関係に限りなく近いです。同じ家にいることに違和感がなく、関係が終わることも想像がつかない。お互いあまり干渉し合わず、別々の趣味や世界を持ちつつも帰る場所は同じ、というところが良いです。

夫は私と違って、誰にでも思っていることをはっきり言う人。そして仕事ができる。そういうところを尊敬しています。

――セックスレスとはまた違うお話だと思いますが、夫婦の問題として胸に迫るものがあります。こだまさんにとって、恋愛や結婚において「セックスをすること」の意味をどう捉えていますか?

こだま:ずっと「しなければいけないもの」だと思っていて、子供を産みたいと思わないのもおかしいと、自分を責めていました。

セックスも出産も夫のためにしようと思っていました。夫のことが嫌いではないのに、どうしてもセックスに対して「悪」の感情が抜けず、精神的にも苦しかったです。

――また、出会い系サイトで出会い、体を重ねた人たちについてもお聞きしたいです。振り返ってみて、彼らはこだまさんにとってどんな存在だったのでしょうか。

こだま:死に向かっていた自分を食い止めてくれた存在です。本人たちにはそんな自覚はないと思いますし、私も特別な感情は持っていませんでした。でも、あのとき誰かに会っていなければ本当にふらっと死を選んでいたような気がします。身内にはどうしても言えなかったんです。

――本が出版されてから、生活に変化はありましたか? また、夫婦間の関係についてはいかがでしょうか?

こだま:同じような「入らない」カップルや人間関係に悩む方から共感や励ましの声をいただき、反響の大きさに驚いています。また、執筆の依頼をいただく機会も増え、急に活動の幅が広がりました。

執筆の面ではがらりと変わりましたが、夫婦関係は今まで通りです。夫はもともと他人への関心が薄いので、私が何をしているのか気にならないようです。

――こだまさん自身は今後、どんな作品を書いていきたいと思いますか?

こだま:実体験をもとにした話しか書いたことがなく、それ以外は書けそうにありません。引き続き身近な出来事を題材にしたエッセイやコラムを中心に書いていけると嬉しいです。

(了)

夫のちんぽが入らない

夫のちんぽが入らない

衝撃の実話――。好きなのに入らない夫婦の物語。

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新刊JP編集部

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