だれかに話したくなる本の話

若手注目作家は「決めセリフ」を書かない 小山田浩子 新刊『庭』を語る(1)

若手注目作家は「決めセリフ」を書かない 小山田浩子 新刊『庭』を語る(1)

気取りのない率直な文章を辿っていくと、いつの間にかどこかわからない未知の場所にいる。どこにでもある日常の描写が気づくと裏返り、異世界が口を開けている。

小山田浩子さんの小説にはこうしたマジックがある。そのマジックはデビュー作の「工場」や、芥川賞を受賞した「穴」で高く評価されてきた。

この特異な才能が存分に発揮されているのが、今年3月に発売された新刊『庭』である。
ありふれた田舎の風景や動植物、生活音、人の声が、何かとてつもなく奇妙でおもしろいものに変わっていくこの短編集について、小山田さんご本人にお話をうかがった。
(インタビュー・文/山田洋介)

庭

それぞれに無限の輝きを放つ、15の小さな場所。待望の短篇集。
ふきのとう。ヒヒ。彼岸花。どじょう。葦。鶴。おたまじゃくし。
ままならない日々を生きる人間のすぐそばで、虫や草花や動物たちが織り成す、息をのむような不可思議な世界。
暮らしの中にある不条理と喜びを鮮やかに捉え、風景が静かに決定的に姿を変える瞬間を克明に描き出す、15篇の物語。
芥川賞受賞後初著書となる作品集。