だれかに話したくなる本の話

『どんなことからも立ち直れる人』加藤諦三著【「本が好き!」レビュー】

提供: 本が好き!

加藤諦三さんと言えば、私が学生時代によく見た名前である。人生相談のような内容のものが多かったと思うが、あまり私には縁がなかったので正直な話、当時読んだことはなかった。久しぶりに加藤さんの名前を見たので、つい懐かしくなって手を出してみたという訳だ。この書評を書く前にちょっと調べてみたのだが、ずっとコンスタントに本を出しておられる。加藤さんといえば、著者略歴によると1938年生まれということで、私よりずっと年上なのだが、80歳を過ぎても本を出せるくらいなのだから、その知的好奇心の旺盛さはせいぜい見習いたいものである。

 本書のキーワードは3つ。それは表題にある「レジリエンス」と「プロアクティブ」、「リアクティブ」というものである。レジリエンスとは、こう書いてある。

「レジリアンスの定義はなかなか定まっていないようであるが、困難な環境にあっても正常な発達をすることである。」(p28)

 たぶんほとんどの人は、これを読んでもよく分からないのではないかと思う。そして、この定義だと、成長段階に限られる思われそうだが、要するに精神的にタフなことを表すこととして使われることが多いと思う。同じことを経験しても、酷く落ち込む人もいれば、なにくそとそんなことなど跳ね飛ばしてしまう人もいる。レジリエンスのある人とは後者のことを言うのである。そして、レジリエンスのある人とは、プロアクティブな人だという。

 本書では、プロアクティブとは起きたことに対処すること、リアクティブとは、ただ嘆くだけで、対処しないことと述べている。(p28)しかし、色々調べてみると、プロアクティブとは何か起こる前に積極的、自発的に問題と関わること、リアクティブとは何か起きたときに、問題に対処するという意味で使われることが多く、この本とは少し意味が違っていることには注意が必要だろう。

 加藤さんは、プロアクティブ、リアクティブであることをその人の特性だと思っているようだが、私はそれには反対である。これは問題に対する対処の仕方であり、場合に応じて、2つの態度を使い分ければいいと思う。いないだろうか、昔のお父さんで、普段は奥さんの尻に敷かれて、リアクティブに見えるが、いざ一家の大問題ということになれば、前に出て、一転プロアクティブに行動するような人を。まあ今は、一度尻に敷かれればずっと敷かれっぱなしなんだろうけど(笑)。

 本書を読むと、誰がこう言ったとか、こういうことがこの本に書いてあるといったような表現が目立つ。どうも横のものを縦にしたような感じが拭えないのだ。注と言う形で巻末にあげられた参考文献リストも外国の物ばかり(一部翻訳されたものはあるようだが)である。そして古い。こういうところに、我が国の文系分野の貧弱さを感じるのは私だけだろうか。

(レビュー:風竜胆

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

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どんなことからも立ち直れる人 逆境をはね返す力「レジリエンス」の獲得法

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生きづらさを抱えるすべての人が「自ら幸せを得る力」を取り戻すための一冊。

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