ほとけ様に教わった 毎日をハッピーにする90の方法

ほとけ様に教わった
毎日をハッピーにする
90の方法

定価: 1,470円
著者: 南泉和尚
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN-10: 4799314114
ISBN-13: 978-4799314111

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インタビュー

― 『ほとけ様に教わった 毎日をハッピーにする90の方法』について、まずはこちらの本をお書きになった経緯について教えていただければと思います。

南泉和尚(以下、南泉):僕はお寺の住職なのですが、そのお寺で幼稚園を経営していて、それが非常に苦しい時期があったんですね。要するに子どもが集まらなかったりとか、何かトラブルが起こるとか。それを何とか乗り越えることができて、同じような幼稚園・保育園の経営者にその経験を話していたんですけど、だんだん話を聞いてくれる人が増えていって一般の会社員の方などからも「すごく勇気をもらえた」などと言ってもらえるようになったんです。
それで「もしかしたら自分の経験や考えてきたことは、他の人の役に立つのかもしれないな」という気持ちが少しずつ出てきて、本として出せたらいいなと思うようになりました。

― 本書には、お釈迦様の説話をベースにした、心を軽くしてくれるお話が90個集められていますが、本当は載せたかったけど今回の本には入れられなかったお話もあるのではないですか。

南泉 : それはもう、本当にたくさんあります。今回の本ではお釈迦様の説話のなかからわかりやすいものをピックアップして、各章のテーマに沿って書いていきました。

― 執筆時に注意した点がありましたら教えていただければと思います。

南泉 : 一般の方は、仏教というと「お経は何が書いてあるかわからないし、難しい」というイメージがあると思うんですけど、実はそんなことはないですし日常生活からかけ離れたものでもありません。
そういうことを伝えたかったので、できる限りわかりやすく伝えるというのはすごく意識しました。

― 確かに、この本はかなりシンプルな言葉で書かれていますね。

南泉 : なんで仏教に難しいイメージがあるのかというと、やはり仏教には長い歴史がありますから、時には天才的な人が出てくるわけですよ。そういう人の中にはお釈迦様の教えを哲学的にとらえて難しくまとめ上げようとする人もいたんです。もちろん、それはそれで仏教のひとつの形ですし、修行に修行を重ねて仏教の摂理を研鑚し続ける人も必要なんですけど、それだとお釈迦様の教えが一部の人のものになってしまう。
でも、ほとんどの人はそんなことはしていなくて、普通の生活をしているわけですし、僕にしてもお寺の中にはいますけど生活自体は一般の方と変わりません。それを考えると、もっと別の伝え方があるのではないかと思いました。

― 南泉和尚が理事長をされている幼稚園も仏教に基づいた教育が行われているのでしょうか。

南泉 : そうですね。僕が直接教えているわけではないのですが。

― 子どもたちにお釈迦様の教えを聞かせたりするとどんな反応があるのでしょうか。

南泉 : お釈迦様の子どもの時の名前を知っているかと、子どもたちに聞くと、みんな「ゴータマ・シッダールタ」と返してくれますね。
「花祭り」というお釈迦様の誕生日を祝うお祭りがあるんですけど、その日にはお釈迦様の有名な「天上天下唯我独尊」という教えについて園長が話して聞かせています。
これは誤解されがちなんですけど、天にも地にも我一人ということで、ひとりひとりがとても大切な存在なんだよ、ということ。だから、「私も大切、あなたも大切、お互いにみんな大切なんだよ」というようなことを子どもにもわかるように伝えるのですが、私よりも園長の方が上手ですね。実は園長は僕の妻なのですが。

― この本は「人生をハッピーにする」という目的で書かれています。しかし、現実には多くの人が生活のなかに幸せを見つけられずにいます。「ハッピーに生きられない」原因は一体なんなのでしょうか。

南泉 : ひとついえるのは、他の人と自分を比べてしまうことです。そして「人より劣っている」「人とずれている」などと考えてしまう。まずそういう比較をなくすことが大事だと思います。「自分は自分、他人は他人」でいいじゃないですか。
そして、今あるもの、今持っているものに感謝することですね。自分の持っていないものを追いかけるのではなく、自分の中の宝物に目を向けましょう、ということです。
仏教には「仏法僧」という3つの宝物があって、一般生活に置き換えて話すと「仏」は先生とかメンターで、「法」は計画です。5年後、10年後に自分は何をしているかというライフプランですね。最後の「僧」は「仲間」です。この3つはハッピーに生きるためにとても大事です。
ただね、この3つがあっても困難や苦労は必ずやってきます。その時に逃げてしまうのか、 それとも「これは俺が成長できるチャンス」と思えるかというのは大きな違いですよね。
つまり、みんな自分の受け止め方次第なんですよ。プラスに受け止めるかマイナスに受け止めるかで答えは変わる。だとしたら、ハッピーに生きたいのであればもう自分でハッピーだと思ってしまえばいい。「自分はハッピーで、この先どんなことがあっても必ず乗り越えられる」って自分で信じ込んでしまえばいいんです。

― しかし、将来のことについては恐らく誰でも不安で、「必ず乗り越えられる」とはなかなか思えないものです。そういった未来ヘの不安にはどのように対処していけばいいのでしょうか。

南泉 : どんなものであれ「不安」っていうのは将来のものです。つまり、まだ実際には起こっていないわけです。
「お金がなくなったらどうしよう」も「仕事がなくなったらどうしよう」も、みんなまだ起こっていないことです。そんなことは起こってから考えればいい。
そして、もし不安が現実になってしまったら「チャンス」ととらえればいいんです。

― そういった考えが持てるようになるにはやはり修行が必要なのでしょうか。

南泉 : そんなことはありません。僕が坊さんだからできるわけじゃなくて考え方を変えれば誰でもできることです。

― 自分のコンプレックスが原因で幸せを感じられないという人もいます。コンプレックスとの折り合いのつけ方について何かアドバイスをいただけませんか。

南泉 : コンプレックスはあっていいものですよ。他人と比べて自分はダメだと思っているだけで、とらえ方ひとつで武器にもなる。もしかしたら自分の人生を変えてくれる武器かもしれない。
僕だって背は低いし足は短いし、何で女の子は自分に振り向かないんだ、と思っていたことはあります。でも「俺は俺でいいや」と思って人と比べるのをやめたらすごく楽になりました。

― そうやって生きられるとすごく楽ですよね。

南泉 : 本当に楽です。もちろん、それで一切の悩みがなくなるわけではないのですが、少なくとも迷いはなくなります。

― 仏教的価値観の中での「いい生き方」とはどのような生き方なのでしょうか。

南泉 : 毎日同じ時間に同じことをすることですね。その規則的な生活の中に、毎日ちょっとだけ自分への課題を設けてあげるといいと思います。
この本ではそれを「ティッシュ一枚の成長」と書いているんですけど、毎日少しずつ自分の成長につながるようなことをする。そうすれば、それは昨日と同じ一日ではありません。これは大きなことを成し遂げるコツでもあります。

― これは簡単そうでとても難しい。

南泉 : それでいいんです。僕もできませんでしたし、今でも難しい。でも、課題といっても本当にちょっとしたことでいいんですよ。あとは意識ですね。毎日「昨日よりティッシュ一枚分は成長するぞ」って自分に言うようにする。そうすると後は脳が勝手にやってくれます。
脳は言われた通りのことしかしません。マイナスのことを脳に指示したらマイナスのことをしますし、「成長しろ」と指示したら成長します。

― では、「悪い生き方」とはどのような生き方ですか?

南泉 : 自分で自分をダメだと思ってしまう生き方ですね。自分のことを好きになれないと命に対して失礼じゃないかと思います。
歳をとっていようと、肩書きがなかろうと、体が不自由だろうと、ではその人が劣っているかというとそんなことは全くありません。「俺は俺、私は私」でいいんですよ。

― こちらの本をどんな人に読んでほしいとお考えですか?

南泉 : これは特に想定していません。難しいことは書いていませんので、若い方からお年寄りまで読んでみていただきたいですね。
今あまり元気がない人に読んでいただいて、勇気をもらえたとか、少し元気になったと言ってもらえたらうれしいです。

― 最後に、読者の方々にメッセージをいただければと思います。

南泉 : 僕は、どうしたらみんながハッピーになれるのかとずっと考えてきたのですが、思うのは、幸せの種は実はほんの小さな日常の中にこそたくさんあるということ。この本を通してそれに気づいていただけるとありがたいですね。
苦労のない人生なんてありません。それならその苦労を楽しんでしまう。そうやって自分の命を遠慮なく使い切ってほしいと思っています。
何をしたか、何ができたかではなく自分自身を精一杯生きること。それこそが実はとっても幸せなことなんですから。