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第一章

一流の部下は、上司の機能を知っている

 本書でいう「一流の人」とは、仕事を通じて自己実現や社会貢献をしたい人です。つまり「志や夢を持った人たち」です。
 では、そういう一流の人にとって「上司の機能」とは何でしょうか?
 一言でいうと、「銀行機能」です。つまり「人・モノ・金・情報・時間など、自分の仕事をスムースに行うための経営資源を引き出す銀行」です。
 例えば、次のようなものです。
 ●人=社内メンバーや社外取引先、自分が持っていない人脈など
 ●モノ=場所・机・電話・PC・ファイル・キャビネット・車など
 ●金=仕事を実行するための予算、果ては自分の給料など
 ●情報=社内外の情報、表に出てこない情報(ある人の性格や行動パターンなど)、ノウハウなど
 ●時間=業務遂行・情報収集・会議などの時間、特に制限時間
 これらはすべて「重要な経営資源」です。なぜなら「これらはあればあるほど、仕事がやりやすい」、逆にいうと「これらが不足すればするほど、仕事がやりにくいから」です。
 そして、その「経営資源の審査・決済権限を持っているのが上司」なのです。
 だから一流の人は、「できるだけ『自由』に『たくさん』経営資源を引き出せる関係を作ろう」と考えます。
「では、上司から経営資源を自由にたくさん引き出すため」には、何が必要でしょうか?
 それは「上司からの信用・信頼の獲得」です。
 銀行の取引は「信用・信頼に基づく取引」です。「信用・信頼できる人ならば貸す、そうでなければ貸さない」単純な方程式です。そして「信用・信頼」を積み重ねると、「好きなだけご用意しますよ」となります。そうすると「自由にお金を使える」ようになります。
 このプロセスは上司・部下の関係の場合も同じです。
 だからこそ、「まず上司の信頼を獲得して、自由に人・モノ・金・情報・時間を使わせてもらえる関係を作ろう」と考えるのが、一流の部下力なのです。

一流の部下は、上司からのインプット以上に、アウトプットを繰り返す

 では、「上司の信頼を獲得する」ためには、どうすればよいでしょうか?
 ここでは、最も大きな方向性だけ紹介しておきましょう。
 それは、「上司からのインプット以上に、アウトプットを繰り返す」ことです。
 銀行でも「お金を借りたら、利子をつけて返す」、当たり前の商取引です。もっと気の回る人ならば、「お金を借りるずっと前から、定期的に預金をし、先に相手にメリットと信頼を与える」、これくらいやれば完璧です。
 とはいっても最初は、
 ●挨拶されたら、それ以上に大きな声で挨拶する
 ●挨拶されていなくても、こちらから気持ちよい挨拶をする
 ●呼ばれたら、「ハイ!」と気持ちよく返事をする
 ●仕事を依頼されたら、言われなくても適宜報告する
 ●3日後までにと言われたら、2日間で完了する
 といった簡単なことから始めればいいのです。
 そのうち、「上司が言っていなくても、こういうことをしてほしいのだろうな、と察知して実行する」ことができれば、最高です。
 そして最後は、
「常に目標数値以上を達成する」
 などの、常に「期待値以上の返り」があれば、信頼は深まります。
 そうすると、「経営資源が上司からドンドン引き出せる」のです。つまり「やりたいことができる、やりやすい環境が整う」のです。
 常に「上司のインプット以上に、アウトプットを出すことを繰り返す」、このことを怠らないのが一流の部下力なのです。

一流の部下は、問題を「上司のせい」にしない

 部下力だけに限った話ではなく、「問題が起きた時、誰かや何かのせいにする」のを「他責型」というのですが、これはぜひやめたい危険な思考パターンです。
 例えば、上司に「○○の件、△日までに決済お願いします」とメールを送っていたとしましょう。しかし、期日になってもなしのつぶて。困った事態になりました。
 こんな時、あなたはどう思うでしょうか?
 もし、「この上司はいい加減だなあ。3日も前にメールしてあるのに!」と考えるとしたら、先の「他責型」です。
 もちろん気持ちはわかります。でもよく考えてみてほしいのです。
 あなたはそのギリギリの期日まで、「自分がやれること・やるべきことは全くなかった」と言い切れるでしょうか。
 ●送信する際に、「開封確認メール」にして送信する
 ●送信した後、確認の電話か、あるいは実際に相手のところまで行って、「△日までにお返事いただけますか?」とお願いする
 そんなことができたはずです。
 また、この「他責型=当事者意識が低い」ともいえます。
 なぜなら、もし先のメールに対して、「上司が期日までに返事のメールを返してきたら、あなたは10万円がもらえる」としましょう。あなたは当日まで放っておくでしょうか?
 たぶん、そんなことはしないでしょう。
 ということは、先のように「メールを送りっぱなし」にしていること自体が、「当事者意識が低い」ことの証明です。これはできる経営者や上司が最も嫌がるスタンスです。
「このひとつの仕事が完成すれば、自分は10万円もらえるとしたら、どうするだろうか?」と、いつも自問自答してみてください。きっと「ひとつのメールの送り方」も変わるでしょうし、「当事者意識が飛躍的に上がる」でしょう。
 問題が発生した時、「自分が原因だとしたら何か?」「自分は何をすべきだったか?」「自分はここから何を学べるか?」で考えられる。これが一流の部下力なのです。

一流の部下は、居酒屋で上司の悪口を言わない

 20代に絶対身につけてはいけない習慣があります。それは「居酒屋で会社・上司の不平不満・愚痴・悪口を言う」ことです。
 この行為の問題は、次の2点です。
 ・時間・お金を「浪費」している
 ・上司の耳に入るという「危機管理意識が低い」
 まずは、「・時間・お金を『浪費』している」です。
 これは、誰が考えても自明なことではないでしょうか。居酒屋で会社の愚痴や上司の悪口を言うことが、自分のスキルやキャリアを磨く上で、どんな役に立つでしょうか? また、それを続けることで、どんな夢や志が叶うのでしょうか? それを考えれば、おのずと答えが出るはずです。
 もちろん、居酒屋に行くこと自体を否定しているわけではありませんし、ストレス発散も大切なことです。しかし、それも度合いの問題です。もし週2回、3時間ずつ、3000円を使ってそのようなことをやっているとしたら、次のようになります。
 ●1カ月で、24時間、2万4000円以上
 ●1年では、312時間、31万2000円以上
 ●10年では、3120時間、312万円以上
 3120時間ということは、1日の実働を8時間としても390日分です。
 10年ごとに、13カ月年分という貴重な時間と、300万円以上という貴重なお金を「愚痴」に投資したことになります。それで得られることは何でしょうか?
 このことがいかに不毛かをわかっているからこそ、「一流の人」たちは、そんな仲間に加わりません。そしてその貴重な時間とお金を使って、本を読み・セミナーや交流会に参加し、情報・人脈・スキルを得ているのです。
 そのように「投資をしてきた10年」と「浪費をしてきた10年」が、取り返しのつかない差を作ってしまうのです。しかも「投資は複利」になっていることが常なので、その差はこの先もっともっと広がってしまうことになります。
 こんな当たり前の計算ができるから、「居酒屋で上司や会社の愚痴・悪口に参加しない」、そして「同じ時間を自己啓発や人脈形成に使う」、これが一流の部下力なのです。

一流の部下は、「上司や会社に不満がある時」こう対処する

 あなたが会社や上司に不満を感じたとき、その対処法にはいくつかの選択肢が考えられます。それは大きく分けて次の4つです。
A 会社に残る
 ・その中で会社や上司に対して感謝して、精一杯お役立ちすると決める
 ・先に大きな実績を上げてから、その会社や上司を自らの力で変える
B 会社を出る
 ・他に自分の理想としている会社や上司を探す
 ・自分で理想の会社を作る
 その中でも私は、まず・・・に着手することをおすすめします。なぜかというと、それが自分の「部下力」、さらには「ビジネス力」を伸ばすからです。
 そして「力」がついてくれば、次のステップとして、会社では実現できないより高い理想を叶えるために、・・・の方法を取ることも可能になるでしょう。
 ・から入る人は、それを実行したという勇気そのものに頭が下がります。またそうなれば、「自分でやるしかない」ので、失敗しても成功しても大変な学びと成長が起きるでしょう。ただリスクが大きすぎるので、・からやることをおすすめはしませんが敬意は持てます。
 最もおすすめしないし敬意も持てないのは、・から始めることです。実際にやってみるとほとんどの場合、それは叶わぬ夢であることに気づくことが多いと思います。
 ・・・をやっていないので、充分に力をつけてもおらず、またそのような姿勢を持たないような人間を採用し、やりたいことをやらせてくれるような「夢の楽園のような会社」は、この世にないからです。
 本当に「自分のやりたいこと(Want)」をするためには、「やるべきこと(Must)」をして「やれること(Can)」を増やすしかないのです。それが昔の言葉でいうと「下積み」となるのです。私は、今も昔もこの原則は変わらないと思っています。
 だから、今はまだその実力を持っていないならば、今の会社、今の上司に心から感謝して学ばせていただき、少しずつでも貢献しようとする。そうしながら実力を養っていく。このステップを確実に踏めるのが一流の部下力なのです。


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  • 書籍名:会社でチャンスをつかむ人は皆やっている!一流の部下力
  • 著者:上村 光弼
  • 出版社:ソフトバンククリエイティブ
  • 定価(税込み):1500円
  • ISBN-10:4797354968
  • ISBN-13:978-4797354966
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