普段、あなたは「自分をほめる」ということをしているだろうか。
谷口さんは本書の中で「自分ホメ」を提唱しているが、「自分をほめるなんてナルシストじゃない?」「謙虚さがないのでは」なんて思う人もいるはず。しかし、「自分ホメ」はただ単に自分自身をホメるのではなく、もっと奥深いところで自分をコントロールするための方法であるといえる。
今回は谷口さんにインタビューを行い、「自分ホメ」について詳しく聞いてきた。
―まず本書を手に取ったとき、1996年のアトランタオリンピック女子マラソンで銅メダルに輝いた有森裕子さんが「初めて自分で自分をほめたい」という言葉が頭に思い浮かびました。その言葉はその年の流行語大賞にも輝きましたが、その言葉が流行するくらい、自分をほめるという文化が日本人の間にないのかなと思ったんですね。谷口さんから見て、現代人の間で「自分ホメ」は足りていると思いますか?
日本人は全体の調和を重んじるところがありますから、どうしても自分より他人を優先してしまい、自分は疲れ果ててしまうということが多いと思うんですね。自分を犠牲にして家族のため、会社のために無理をしてしまって、自分のことを大切にできていない方が多いように感じます。そういうところから、自分をほめる、つまり『自分ホメ』が足りていないのではないかなと思いますね。
―スポーツ選手のコメントも勝利したのに「自分はまだまだです」といった具合に、非常に謙虚なコメントが多いように思います。そういう部分を見ていると、自分をどのタイミングでほめるべきなのか迷うところがあると感じるんですね。成功したのに「次も頑張ります」と言ってしまったり。そういった「自分ホメ」を行うベストなタイミングはどういったところなのでしょうか。
『自分ホメ』はいろいろな場面で使うことができますが、効果的なのは朝、出かける前にセルフイメージを高めるようなホメ言葉を自分にふり注ぐことですね。『今日の自分はイケてる』『今日はすごく良い仕事ができる』と自分に言い聞かせると良いと思います。
また、夜寝る前も有効ですね。睡眠前の精神状態は潜在意識に影響を与えますから、その潜在意識にどんなセルフイメージを刷り込むのかによって人生の質は大きく変わってきます。寝る前に上手くいったことや成功体験を思い浮かべることが大事ですね。
―私はもともとネガティブな性格をしているので、あまりイメージの切換えができないんです。一度へこむと夜寝るまでずっと引きずってしまうことが多いんですが、どうすればいいのでしょうか。
相手の視点に立って自分を考えてみるのもいいですね。例えば遅刻をしてしまい申し訳ないと謝罪しているところを、相手の視点で想像してみる。そうすると、その相手から自分がどう写るのかが分かってくると思いますし、申し訳なさそうに何度も謝っている自分を見ると『この人は誠実だな』と写るかも知れませんよね。そうすると『大切な約束に遅刻するなんて、なんて自分はダメな人間なんだ』と引きずることもなくなるでしょう。
―本書を読ませていただいて非常に印象的だったのが、谷口さんの持っているポジティブさです。読んでいるだけでも元気になれる一冊だと思うのですが、そのポジティブの源泉はどこにあるのですか?
ちょっと話が長くなってしまいますが、コーチングの技術を身につけたということが一番だと思いますね。
もともと私は新卒で広告制作会社に就職したのですが、そこでは落ちこぼれコピーライターでした。しかもコミュニケーションが苦手で他人に関心を持てない、いわゆる“あまり友達になりたくない”タイプだったんです。で、自分のことばかりアピールするからどんどん人間関係も上手くいかなくなった結果、27歳のときに対人恐怖症になってしまい、人と話すことが怖くて仕方なくなっちゃったんです。
―それは大変でしたね。
何とか打開しようと思って、神経症の患者さんたちを支援するサークルにコンタクトを取って、そっとドアを叩きました。実はそのとき「この経験は自分の中で封印して墓場まで持っていこう」と思っていたのですが、そこで自分の思考の習慣を客観的に知ることができたり、コミュニケーションの技術を身につけることで人生の質を変えられることに気づきました。そして、メンターやコーチングとの出会い、そのあとに学んだカウンセリングや心理学の手法を通して、自分自身がすごく変化したという経験をしているんですね。
コーチングと出会って何が面白かったかというと、自分の行動次第で人生を切り開いていくことができる、という気づきをもらえたことです。それに自分自身のコミュニケーション能力もすごく上がるんですよ。それまでとは全然違って人に関心を持って話を聞くようになりましたし、良い人間関係を作れるようになりました。よくセミナーでネタにするのですが、コーチングを学んでから半年後に3人の男性に告白されたんです(笑)。すごく人生が変わったと思いましたね。その自分次第で人生を変えられるという経験が、ポジティブの源泉ではないかと思います。
―「自分ホメ」は自分自身を盛り上げていくという点で、自分に対するコーチングともいえると思うんですね。谷口さんご自身は「自分ホメ」によって得られる効果はどのようなものがあると思いますか?
―そうなると周囲の人たちとの関係も変わってきますよね。
そうなんですよね。自分のことを認めることができないとどうしても他人と比較したり、他人を疑ったり、批判的になりがちだと思うのですが、自分を認めることで純粋に他人のことも認めることができるようになりますね。
―そうですよね。ただ、私なんかは自分をどうほめていいのか分からない部分があるんですね。普段ほめることがないものなので…。そういった人にピッタリなホメ方を教えていただけないでしょうか。
そうですね。例えば仕事のモチベーションを上げたいときには、過去の成功体験を思い出すという方法がいいですね。『今日は大作家さんのインタビューで緊張してしまいそうだ』というときは、過去に自分が手がけて大成功だったと思っているインタビューをイメージするんです。
―なるほど。確かに、良いイメージを持つとそのインタビューに前向きに取り組むことができますね。
ちょっと話はそれますが、緊張する相手に電話をするときに、効果的な方法があるのです。まず電話をかける前に笑顔をつくって『話をするのが楽しみだ』と思いながら電話をかけるのです。するととても良い雰囲気で話ができるようになります。また、緊張する相手と仕事をするときは『粗相があったらどうしよう』などとネガティブな方向に想像してしまいがちですが、そういうときは『こんな風になるといいな』という妄想をしたりすると良いですよね。
また、過去の成功体験でいえば、その体験の中から自分の良さに気づいて自分自身をほめてあげて欲しいなと思います。
―本書の中に「ネガティブな感情を受け止める」ということが書かれていますが、それが何よりも重要なのではないかと私は思いました。まず自分の好きになれない部分を受け止めて、その上でそんな自分も含めてほめることが大切なのではないかな、と。
それはおっしゃる通りで、ネガティブな自分を含めて認める、あるがままの自分を認めるという部分を特に読み取って欲しいと思いますね。能力が高い自分は誰でも好きじゃないですか。でも、ダメなときの自分を愛せるかどうかというのがポイントです。
私自身も、講師をしているとき『自分ってイケてるな』と思うこともあれば、『ああ、噛んじゃった』とへこんでしまうこともあります。そこはまだまだ修行中ではありますが、かなりそんな自分も受け入れられるようになってきました。どんな自分も愛せるようになれば、気持ちの切り替えも早くなっていいですよね。私自身、この『自分ホメ』というテーマで本を書き始めてから、より自分としっかり向き合うようになりましたよ。
―また、ネガティブな自分を含めて自分自身を認めている人は自信を持っていますよね。
そうですよね。セルフイメージや口調は態度に如実にあらわれてきます。ただ、そんな風に自分自身のセルフイメージが外に反映されているということに気づいている人は意外と少ないのではないでしょうか。自分を客観的に見られるようにならないと難しいのかもしれませんね。私自身、コーチングや講師の仕事をすることで、そういった視点を身につけることができました。態度や話し方が魅力的な方が有利ですから、セルフイメージが高いほうが商談やプレゼンなどにも効果的ですね。
―そういった意味でいうと、本書はたくさんの人が読むべき本ですよね。ビジネスパーソンからリーダー的立場、男性女性限らず。谷口さんご自身はどのような方に読んで欲しいとお考えですか?
書き始めた時は20代、30代の働く女性を想定して書いていたのですが、もっと幅広く、いろいろな方に読んでほしいですね。特に向上心が強くて一生懸命頑張って生きている、けれどそのぶん自分を責めてしまったり、まだまだダメだなと思ってしまいがちな方にはぜひ読んでいただきたいです。それから昔の自分と同じようなつらい想いをされている方々にもぜひ手にとっていただきたいと思います。
―では最後になりますが、インタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。
この本は、自分をほめる習慣を身につけて、ご本人に幸せになっていただくことを目的として書きました。そして『自分ホメ』が出来るようになったら、『自分ホメで人生が楽しくなるよ』ということを周囲にも広めていただけたらうれしいです。一緒に明るく元気な日本をつくる、“自分ホメ隊”の一員になってください(笑)
―ありがとうございました!
ほめ方の伝道師・コミュニケーションスキル講師・プロコーチ
1967年生まれ。京都府出身。
同志社大学文学部卒。
広告制作会社でコピーライターとして活動後、ITベンチャーにて携帯コンテンツ事業の立ち上げに参画。30代前半まで自分の話ばかりして人の話を聞かないコミュニケーション音痴だったが、コーチングに出合い、人間関係や人生観の劇的な変化を体験。その喜びと感動を多くの人に伝えるべく、2004年、プロコーチ・セミナー講師としての活動をスタート。現在は「ほめ方の極意セミナー」を主宰するほか、講演、執筆など幅広く活動中。「ほめ方の伝道師」として、 新聞、テレビ、ラジオなどの各種メディアに出演。
発行しているメールマガジン「1日10秒・人脈力コーチング」は、「まぐまぐ大賞2008」ミニまぐ部門 第1位を獲得。著書に『図解入門ビジネス 最新 コーチングの手法と実践がよ~くわかる本』(秀和システム)、『あたりまえだけどなかなかできない ほめ方のルール』(明日香出版社)『自分のスゴさにまだ気付いていないあなたへ』(アメーバブックス新社)『口ベタでもうまくいく!ほめ方の極意』(講談社)がある。米国NLP 協会認定NLPマスタープラクティショナー。CTIジャパン・応用コース修了。日本コーチ協会・正会員。ハバード・ダイアネティックスR認定オーディター。
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