―さっそくですが、私自身も休日は寝て過ごすことがほとんどだったもので、本書を読ませて頂きまして「あ、このままじゃヤバいな」と思うことばかりでした。ではまず、本書をまだ読んでいない方のために「休活」について教えて頂けないでしょうか。
大田
「もともと僕は勉強会や交流会に出席したり、主宰したりしていて、年間に1000人ほどの方とお会いするのですが、そうした方々の多くは、老若男女問わず仕事や人生に対して悩みや課題を持っていらっしゃいます。そうした不安や悩み事などを聞いているといつも思うのですが、AとBという2つの選択肢があったとき、どちら片方が崩れるともう片一方にも影響が出てしまうんですね。
つまり仕事と家庭しかない場合、仕事が上手くいかなくなると家庭にもダイレクトに影響が出てしまう。特にこんなご時世ですから仕事の影響がダイレクトに家庭にも響きます。だから、自分がいる場所として、AとB2つだけしかないと、すごく脆くなってしまうんですね。
じゃあどうするか。平日はとにかく仕事をする。では、休日は?と言ったとき、実は本書にも書いていますが、土日祝日合わせて1年間で119日の休日があるんですよね。1年の約3分の1が休日なんです。さらにこれをもう少し長いスパンで考えて、22歳で就職をして60歳の定年退職まで40年間働くとするとしたら、13年間が休日なんですよね。休日は基本的には誰にも縛られない100%自由に使える時間ですから、この13年間を有効活用するだけで、人生が大きく変わるのではないか、と。
自分にとっての第3の場所を見つけて、やりたいことをやる。A、Bではなく新しいCという場所を作り、自分の人生を見直して豊かにする。そういうことを皆さんにお伝えしたいと思って本書を執筆しました」
―そのお話でよく聞くのは、65歳で定年退職を迎えた方が、急にやることがなくなって突然呆けてしまうということですね。そういう意味では今のうちから仕事場でも家庭でもない、第3の居場所を作るのは、今働いている方にとっては重要だと思います。
大田
「実は僕もご多分に漏れず、自分のおくさんを見て休活をしないと!と思ったんですよ(笑)!あ、このままだと熟年離婚されるな、と。
私たちは2人とも広島の出身で2001年に東京に出てきたのですが、もちろん東京には友だちや知人はいなくて。それから5年くらい経ってですね、ふと気付いたらおくさんにすごい友だちが出来ているんですよ! そのとき僕は相変わらず1人で、これはちょっとマズいな、と(笑)そこから休活を始めましたね」
―休活を始めてから、大田さん自身はどう変わりましたか?
大田
「休日って誰にも強制されない時間なわけですよね。だから、『やらなきゃいけない』ということもないし、逆に何かするときって、『やりたい!』とか『やろう!』というポジティブな感情で動くと思うんです。だから、逆に休日が楽しくなりましたね。
ビジネス書の体裁で『休活』って書かれるとどうして勉強会や交流会とかを思い起こしてしまうと思いますが、実際は定義はなくて、自分がやりたいことであれば何やってもいいと思うんです。勉強したければ勉強していいですし、友達と遊びたければ遊んでもいいんです」
―それに休日が楽しくなると、平日も頑張ろうという気持ちになりますよね。不思議に充実するというか。
大田 「ありますよね。先に楽しい予定を入れておくと、その日を目指して頑張ろう!という気になったりして(笑)。今だったらゴールデンウイークとかになりますかね」
―大田さん自身は休日に勉強会を主催していらっしゃいますし、ビジネスパーソンならばそうした勉強会に参加するということも休活になると思いますが、他に例えばどんなことをすれば「休活をした」ということになるのでしょうか。
大田 「僕は実は、勉強会を主宰する前からいろいろなことをしていまして(笑)、一人のときは工場見学とか。全国の工場とか、あとは造幣局とかですね。見学しに行ったんですよ。大阪にある日清食品のチキンラーメンの工場を見に行ってそこでチキンラーメンを食べたりとか。なかなか面白いですよ」
―例えばボランティアとか、あとは好きなアーティストのコンサートにいったりですとか、そういうのも休活に入るんですね。
大田 「そうです。友達同士でフットサルや草野球をやるのも立派な休活です。ライブでもボランティアでも、そこに集まってきている人たちって共通言語があるじゃないですか。年齢も性別も職種も超えて集まった人たちと盛り上がれるし、自分の世界も広めていくことができる。そのエネルギーはすごいですよね」
―皆の好きというエネルギーが集まると、本当に盛り上がりますよね。
大田 「あと、一人で何かをしていても休活なんですよ。一人で読書をしたり、プラモデルを作ったりとか。それを、インターネットを通じて発表したり…例えば書評をブログに掲載したり、プラモデルの製作過程をニコニコ動画に掲載するとか、外部に向けて情報発信することが大切です。そこに反応が返ってくれば、一人でやっていたとしても、とても価値があることになります」
―例えば人見知りな方、シャイな方ってなかなか新しい世界に踏み込むことができない方もいると思うんですね。そういう方はどうすればよいのでしょうか。
大田
「そういうときは、まず僕の会に参加して頂くといいと思います(笑)。というのは置いておいて、1つ目は行動を起こすということですね。これは行動を起こさないと何も変わらないですから。先ほど、1人でやるのも休活と言いましたが、いくら凄いものを作ったとしても、自分から誰かに情報発信しないと伝わらないですよね。
僕も引っ込み思案な性格なんですが、実際に行動を起こしてみると、そこにいる人たちと好きなものが一緒ですから盛り上がれるんですよ。「好きなこと」が一緒の仲間が集まっているのだから必ず何か共通の話題があると思うんです。
また、勉強会や交流会に行ったときは主宰者の方に話しかけるといいと思います。必ず世話役みたいな人がいるじゃないですか。そういう人に頼ってみるというのはいいと思いますよ」
―お話を変えまして、名刺の肩書きが「超・愛妻家」となっていますが、本書の中にも奥様のエピソードが満載ですね。本書に対する奥様の反応はいかがですか?
大田
「この本を執筆している最中は、あまり興味を示さなかったんですが、本が出来たら今まで見たことがないくらい真剣にに読んでいて。普段ビジネス書なんて読まないのに、しげしげと最初から最後まで眺めて、『ふふふ』と笑っていました。読み終わったあと、『私のことばかり書いて!』と言っていましたが、おかげで若干夫婦円満になったかなと思いますね。
本書を執筆したきっかけの1つとして、おくさんに対して感謝の想いを伝えたいということがあるんです。だから本書の冒頭で、『この本を、最愛の妻、順子に捧ぐ』と書かせて頂いているんですが、これも出版社の方に『これを書かせてもらえないと本は書きません!』くらいの勢いでお願いして入れてもらったんです(笑)」
―とてもラブラブなエピソードをありがとうございます。でも、本書の中に「家事しない宣言した瞬間に離婚」というようなことが書かれていましたが…ちょっと恐妻家的な側面が見え隠れしました。
大田
「(笑)うちのおくさんは瞬間湯沸かし器的なところがありまして、ドカーン!ってなったら、次の瞬間冷めているというようなタイプなんです。だから、『家事をしない!』って宣言したら『なんで私だけしてあなたがしないのよ!』って言われて、夜中の3時まで喧嘩したこともありました。
でも、2人がおばあちゃん、おじいちゃんになったときに『あのときはよく喧嘩したよね』って話すネタになるんだろうな、と思いますね」
―読んでいて本当に驚きましたよ(笑)
大田
「まあ、愛妻家と恐妻家って表裏一体なところがありますからね(笑)。僕がどうして愛妻家を名乗っているかというと、諸外国…アメリカやヨーロッパでは、パーティーがあったらパートナーと一緒に出るのが普通だと思うんですね。
でも日本は自分の妻を後ろに隠すじゃないですか。だから、そんな日本の中に自分のおくさんを立てるといいますか、隠さない男が一人でもいたらいいじゃないか、と。それに、愛妻家って言葉を使い始めて気付いたのですが、この『愛妻家』という言葉は実はあまり敵を作らないんですよ。愛妻家と聞いて、男性も女性も、結婚していてもそうでなくても、嫌な気持ちになる人はいませんからね(笑)むしろみんながハッピーになるいい言葉なんです。こんな言葉は、実は珍しいですよ。」
―では、「休活」はどのような方がすべきだと思いますか?
大田
「これは極端な話、全ての方が“休活”の対象だと思います。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで。
僕の考えとして、“休活”と言っているんですが、仕事と休日を分けているわけではないんです。人生って生まれてから死ぬまで1つの連続した時間を過ごすということですから、どこにゴールがあるかわからない状況の中で、いかにより有意義に毎日を過ごすか。それが鍵だと思うんです。そのために、全ての人に休活をして欲しいな、と思います」
―大田さんが主宰されている「日本経済新聞を読む朝食会。」とはどのような会なんですか?
大田
「これは、毎週土曜日の午前中に、帝国ホテルの1階のランデブー・ラウンジというラウンジで、参加者が日経新聞を持って集まりまして、記事について話し合うという会なんですね。新聞は帝国ホテルに来るまでに読んでいてもらいまして、そこでは1個だけ自分が気に入った記事を紹介して頂きます。その紹介した記事に対して皆で議論し合うんです。
年齢、職種、性別の枠を超えた色々な方が参加されているので、一人ひとりの人生経験・価値観が違う。そこに、価値が生まれます。ものすごくバラエティ豊かな意見が出るんですね。だから自分の知らない業界の視点が得られたり、新しい気付きがあります」
―では、最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします!
大田
「僕自身は、1秒後に自分が死んでしまったとしても、後悔をしない生き方をしようと決めていて、実際に今そういう風に生きているんですね。
こういうご時世ですし、その他にもたくさんの悩み事を抱えている方は多いと思うのですが、実はこの過渡期が過ぎてみると、些細なことだったりするんですよね。だからそういう悩みを、休日と言う誰にも強制されない時間を使って解消して欲しい。自分の人生が短いと感じるような休日の過ごし方をして欲しいですね。
また、もう1つ“休活”についているものが人との出会いです。僕も“休活”を通じてたくさんの方と出会いました。その偶然の出会いを大切にして欲しいと思います」
―ありがとうございました!
■取材後記
インタビュー中にもあるように広島出身という大田さん。もちろん野球は広島カープのファンなんだそうで、今回インタビュアーをつとめた私、金井もカープファンということでカープ話、野球観戦の話題で大盛り上がり。
お互いに野球場で見知らぬ人と意気投合したり、友だちを作ったりした経験があり、「野球観戦」も立派な“休活”だということになりました。しかし、まさか達川光男さんの引退試合(大田さんが球場で観戦)や前田智徳選手の2000本安打達成試合(金井が球場で観戦)の話が出来るとは…。
好きなことが同じ人と、同じ話題で盛り上がることが “休活”の醍醐味。是非試してみてください。
(新刊JP編集部/金井元貴)