「オーバーロード1 不死者の王」イメージ画像

1,000万PV!!のWebノベルがついに書籍化 最強の大魔法使い・モモンガの伝説がはじまる

インタビュー

■自分が読みたい「最強モノ」を目指して

―この『オーバーロード』はもともとインターネット上で公開されていた作品なんですよね。

「そうですね。もともと『Arcadia』さんと『小説家になろう!』さんの方で、SS(Short Story)として公表していたものです。今回、それをエンターブレインさんの方で書籍化していただくことになりました」

―単行本化のお話がきたときの第一印象について教えていただけますか?

「ビックリというのが一番大きな感情でした」

―自分の作品が書籍化されるとは、想像もしていなかった。

「そうですね。本当に趣味で書いて公開していましたから」

―『オーバーロード』を執筆したきっかけについて教えてください。

「もともと、ネットでSSや小説を読んでいるのが好きだったんですね。そして、自分が好きなジャンルが“最強モノ”というジャンルなのですが、どのようなものか分かりますか?」

―いわゆる、「主人公が最も強い」という物語でしょうか。

「だいたいそんな感じですが、もう少し奥が深くて、実は最強モノって昔からあるんですよ。例えば、水戸黄門や遠山の金さんも最強モノです。そうした要素にファンタジー要素を加えて作られているのが、今のネットで配信されている“最強モノ”というジャンル、“俺TUEEEEEE!!”とも呼ばれていますけれど、そういうものなんです。そのジャンルが好きで、“自分好みの最強モノ”を探すうち、だったら自分でも書いてみようと思ったのがきっかけですね」

―ウェブサイト上で公開されているのを拝読しましたが、非常に長い作品ですよね。まさかここまで長く執筆を続けるとは、最初は思わなかったのではないでしょうか。

「そうですね。2010年の3月、4月くらいから開始していますから、もう2年以上になりますけど、これだけ長く続けられたのはウェブ上に公開した小説に対して、面白いという声や好意的な感想を読者の皆さまがくれたおかげだと思います」

―『オーバーロード』の前にも小説は書いていらっしゃったんですか?

「10年ほど前にTYPE-MOONさんが同人活動をしていた頃、ファンディスクを作るためにゲームシナリオ用の小説みたいなものを募集していた時期があったんです。そのときに一度書いて送ってみて、採用はされたのですが、奈須きのこさんがあまりにも素晴らしい作品を書いていて、実際にゲームをプレイしたとき自分と奈須さんの実力差が大きすぎることが分かったんですね。そこで『もう向いてないな』と思って、小説を書くのをやめたんです」

―でも、10年経って執筆を再開された。

「仕事が落ち着いたのもありますし、もともとテーブルトークRPG*1(以下、TRPG)も好きですし、ストーリーを創りだすことが好きなんですね」

―そういえば、丸山さんはTRPGをよくプレイされていらっしゃるんですよね。

「大好きですね。今やっているのは、『D&D』(ダンジョンズ&ドラゴンズ)で、『D&D3』からプレイしています。また、以前は『赤本』とかやっていました。高校時代は『ソード・ワールド』ですね」

―本当に王道って感じですね。

「王道を走っていますよ(笑)! でも、僕がやるのは『クトゥルフ』*2ですよ。『クトゥルフ』は好きなので」

―そういえば、今年は『クトゥルフ』がすごく流行しましたよね。『這いよれ!ニャル子さん』の影響で。

「そうでしたね。でも、ニャル子さんを読んで『クトゥルフ』の絵を見たらガッカリするんじゃないですか(笑)? TRPGは面白いですよ。エンターブレインさんからも出ているので是非やってみてください(笑)」

■主人公は、徐々に悪くなっていきます

―この『オーバーロード』を書籍化するにあたり、大幅な加筆修正を行ったそうですが、苦労した点はありますか?

「全般的に大変でしたけれど、ウェブ版の良さを殺さずに、書籍からこの物語に入ってくれる人も楽しめるように頑張ったつもりです」

―物語はオンラインゲーム「ユクドラシル」のプレイヤーが、サービス終了するはずのゲームの世界から、異世界に転移し、悪側の“不死の王”として君臨するというところからスタートしますが、この物語の構想はどのようにお考えになったのですか?

「基本的には自分の読みたいものを書くということから始めて、大雑把に最後まで話を考えて、それからどういうキャラクターだったら活かせるかなということを念頭にキャラ作りをしていった感じですね」

―主人公のモモンガ(アインズ)をはじめ、モモンガにベタ惚れの忠実な部下である女悪魔・アルベドなど様々なキャラクターが出てきますが、そうしたキャラクター作りで一番苦心したのは誰ですか?

「やはり主人公ですね。主人公っぽくない主人公なので。この物語の中でやっていけるかどうかというところで、注意して作りました。この作品は悪側の視点で描かれていて、主人公が自分の持っているあまりにも強大な力を己の欲望のために使うようなキャラクターなんです。そういった点からも、普通のライトノベルとは少し異なるんですよね」

―確かに主人公のモモンガは、元々は人間であれ、この世界の中では骸骨の見た目を持つ大魔法使いですよね。ただ、作品を読んでいると、どこか悪になりきれていない部分もありました。

「(笑)うーん、でもまあ、そのうち悪っぽくなってきます。第一巻から極悪だと、読者さんにひかれてもう次の巻以降手に取ってもらえなくなりそうなので」

―では、最初はモモンガというキャラクターを徹底的に悪として描こうと考えていたんですか?

「厳密に言えば、悪というよりかは、彼はとてもワガママなキャラクターなんです。自分の欲を満たすことのみを考えて行動するダメな人なので…。でも、最初は悪であっても、最後は少し良い方に転がるかな、くらいのキャラクターですよね」

―他のキャラクターにおいても、キャラ設定をする際に気をつけていることはありますか?

「とりあえず主人公サイドのキャラクターでいえば、一つだけ大きな特徴を持たせて、それを骨にして、肉をつけていくという感じです。主人公と敵対する側の人たちは今のところ人間が多いですけれど、基本的にはかっこ良く、というのがあります」

―丸山さんが思う「かっこ良さ」のモチーフになっているものはなんですか? 例えば、子どもの頃にどのようなものに「かっこ良さ」を感じましたか?

「『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』という本があって、あれはノロイ族というイタチと戦うネズミのお話ですが、そのネズミサイドのかっこ良さは印象深いですね。一匹一匹が圧倒的に強いイタチに対して、それぞれ歌ったり踊ったりして鼓舞をしながら対抗するのですが、非常にかっこ良いんです。その作品の影響はありますね」

―第一巻の中で最も気に入っているシーンはどこですか?

「ラストですね。敵が切り札を出すところです。ラストなので詳しくはいえませんが、あのシーンはこの『オーバーロード』をしっかりと体現できているシーンだと思います」

■『オーバーロード』を通してダークな喜びを描きたい

―今回、単行本化に際してsobin(ソービン)さんのイラストが加わりましたが、いかがですか?

「素晴らしいですね、本当に。表紙を開いた、最初のカラーイラストで、もうこれは悪役の物語だなと思いますよ。誰でもビビります(笑)、悪の秘密結社のようにキャラクターが並んでいて。絵が加わると全然違いますよね」

―物語にも深みが出てきますね。

「そうですよね。むしろ、sobinさんのイラストだけでいいのではないかと(笑)。で、小説は30ページくらい」

―いえいえ、ストーリーがあってこそ、ですから(笑)。また、主人公たちが潜んでいる地下大墳墓の階層図も載っているんですよね。これは好評のようですが。

「このイラストもいいですよね。悪の秘密結社のアジトみたいな感じで(笑)」

―丸山さんの読書歴についておうかがいしたいと思うのですが、影響を受けた本を3冊ほどご紹介いただけないでしょうか。

「敬称略で、まずは池波正太郎の『剣客商売』。これは素晴らしい“最強モノ”ですね。年齢はいっているけど、若い嫁さんがいて、お金も持っていて、悠々自適に暮らしていて美味いものも食べている。最高じゃないですか。そして強い、と。こういう見方をしていると、ファンの方々に怒られるかも知れませんが、そういう風に読んでいました(笑)。あとはミヒャエル・エンデの『果てしない物語』。これも素晴らしい作品ですね。そして、最後に先ほどもあげましたけど『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』ですね」

―いろいろな作品を読まれているんですね。

「ただ、この頃全然本を読めていないんです。社会人になってから読まなくなってしまって…。普通、逆だと思うんですけどね」

―物語のインスピレーションを湧かせるために、小説を読むことはないんですか?

「いや、むしろ読むとへこむんです(笑)。どうしてこの人はこんなに素晴らしい小説を書けるんだろう、と思って自分が痛くなってくるので、出来る限り情報は入れないようにしています。ただ、影響を受けなかったり、自分の執筆の手が止まったりしない限りは読みたいですね。人気のライトノベルも色々読みたいんですけど、へこんでしまいそうなので……」

―今後、『オーバーロード』を通してどのようなことを描きたいですか?

「暗い話になりますが、積み木を積み上げていってそれを壊すような、ダークな喜びを描きたいと思っています(笑)。また、通常のライトノベルや、善側の主人公の視点で進む物語はもうお腹いっぱいという方にお勧めできるような悪役の主人公の作品が書きたいです」

―第一巻ではまだモモンガに人間らしい一面といいますか、優しさみたいなものが見えていますけど、今後どうモモンガが悪になっていくのか期待しています。

「これから少しずつ化けの皮が剥がれていって、エグくなっていく予定なので(笑)。読者の皆さんには逃げないで欲しいなと思っています」

―では、読者の皆様にメッセージをお願いします

「この『オーバーロード』はどちらかといえば悪側が主人公のライトノベルなので、善側の主人公に飽きてきたなとか、変わったものが読みたいと思っている方に読んで欲しいですね。きっと合うと思いますよ」

―ありがとうございました。

■取材後記
途中出て来たTRPGの話では非常に熱く語っていただいたのですが、TRPGの面白さに「マスターとプレイヤーで世界を創れること」をあげていらっしゃった丸山さん。そうした自分で創りだす楽しさを知っていたのも、『オーバーロード』という小説が生まれた背景の一つのように思います。 これから主人公はどのようにエグくなっていくのか、自分の最強の力をどう使っていくのか、ウェブ版をすでに読まれている方もそうでない方も期待です。第二巻は今冬出版予定だそうです。 (ラノコミどっとこむ編集部/金井)

【用語解説】
*1 テーブルトークRPG…紙と鉛筆、サイコロなどを用いて、ゲームマスター、プレイヤー同士の会話とルールブックに記載されたルールに従って遊ぶロールプレイングゲーム。 *2 「クトゥルフ神話」をモチーフにしたホラー系TRPG。ホビージャパンとエンターブレインから発売されている。