ISBN-10: 4797366028
ISBN-13: 978-4797366020
―今回は生田さんの著書『あなたの潜在能力を100%引き出すたった1つの方法』についてお話をうかがえればと思います。人間には自分でも気がついていない能力がたくさん眠っているというのはよく言われることですが、一般的な人の場合、持っている能力の何%くらいを使っているのでしょうか。
生田:この問いの答えは非常に難しいですね。あえてここでお応えするならば、「1%しか発揮されていない。」と言うのがベストでしょう。
例えば私は、バイオリンが弾けません。触ったこともありません。同じように、チェロも、フルートも弾けません。プロのバーテンダーのようにカクテルを作れません。テレビを作ることも、車のエンジンを作ることもできません。
そう、私には、「できる事」よりも「できない事」の方が圧倒的に多いのです。しかし、仮に今から10年その事だけに毎日10時間使ったらどうでしょうか?
1年間で約3600時間、10年で36000時間。約2万時間で「卓越性」の入り口に立つと言われているので、それなりの事ができるでしょう。
もしかしたら、今からでも、10時間×10年間やれば、ピアノのプロの駆け出しくらいには、なれるかもしれません。車のエンジンの基礎開発に携われるくらいの力にはなるかもしれません。
そう、私にも皆さんにも、10時間×10年コミットすれば、あらゆることが開かれる「可能性」がそこに存在しています。
「可能性」は「今できないこと」の中に存在しているのです。
という事は、出来ないことだらけの私達は、可能性に満ちています。そして、その可能性を追求していく過程で、潜在能力がたくさん開かれていくでしょう。
という訳で、問いの答えとしてあえて言うならば、「私達の潜在能力は、1%しか発揮されていない。」そして、「99%のできない事の全てが私達にとって可能性である。」
とお伝えしたいと思います。
―能力を100%使っている人とそうでない人の間には、考え方や行動においてどのような違いがありますか?
生田:ここは、本質的な問いですので、かなり本気で答えさせていただきます(笑)。
もちろん、様々な違いを感じますが、一番大切なのはその人がどれだけ本気か?と言う一点が大切です。そのためには、その人が持っているバイタリティーを爆発させられるかどうかがカギです。
バイタリティーをつくり上げるのは、魂を込めた仕事や行動が取れるかどうかで決まります。そのためには、「職人魂」とか、「大和魂」などのように、「ワタシ魂」を作る必要がある。
つまり、私は「何者でありたいのか?」というアイデンティティーを明確にすることがカギです。
そのためには、自分のビジョンをヴジュアライゼーション体験のレベルで鮮明に描き、疑似体験することが大切。そして、「VISIONの“ビジュアライゼーションの世界”にいる私ってどんな私か?」と問い、私を定義つける事が大切です。
―本書では、能力をフルに使える人の共通点として「イメージ力」を挙げています。この「イメージ力」ですが、持てる才能を発揮するうえでどんな役割を果たすのでしょうか。
生田:能力を発揮するためには、2つのことが必要です。
1つ目は、能力を素早く「素早く習得」すること。
そして2つ目は、能力を効果的に使える「適切な戦略」を持つことです。
マラソンに例えるならば、まず走る能力を向上させる必要があります。足が遅かったらコースが合っていても結果は出ません。
逆にどんなに足が速くとも、ゴールに到達する道筋であるコース(戦略)が間違っていては、ゴールにはたどり着けません。
この能力の「素早い習得」と、その能力を効果的に使う「適切な戦略」が必要なのです。
そして「イメージ力」はここで力を発揮します。
人間が物事を素早く習得するには、「イメージ」によって情報をインプットし、イメージによって処理することが圧倒的に習得力を高めます。
詳細は本書に書かれておりますが、それは、脳の記憶のメカニズムと関連があります。たとえば、知的な学習であれば、英単語を覚えるなどの「意味」の学習になります。
「意味記憶」は「エピソード記憶」とセットで強化されますので、頭の中のイメージによるエピソードが学習のカギとなります。
そして、スノーボードや、音楽など「手順記憶」を体が習得する必要がある場合は、「体感覚」が習得効果を高めます。
そして、この体感覚を感じながら、脳内でイメージすることができると、実際の訓練と同程度の効果が得られるという実験もあります。
そう、イメージ力を強化できれば、時間と場所の制約を受けずに、訓練量を増やし、成長速度を高めることができるのです。
ですから「イメージ力に」よって、「意味記憶」と「手順記憶」を圧倒的に強化できるので、「素早い習得」が可能になるのです。
そして、イメージ力はすごくあいまいなので、本書では、具体的に「物語イメージ力」「イメージ体感力」「イメージ戦略力」など「10の基本イメージ力」をご紹介しています。
そして、「適切な戦略」について書きます。目的達成のためには、「明確なゴール」と、そのための「道筋」がしっかりと理解できる必要があります。そのためには、「ゴールへの地図」が必要不可欠です。
そして、このゴールへの地図を描くためには、「情報と知識を構造化」して、図解することがカギになります。「図解力」が「理解力」を作り、「理解力」が「考える力」の根幹をなすのです。
そして、情報を図解する際に大切なことが、理論でなくて「本当にそうなるの?」というツッコミ。それは、頭の中のイメージとして存在する「過去の物語」と「未来の物語」に照らし合わせて判断します。
「適切な戦略」を考えられる人は、アイデアを「頭の中のイメージの物語」でシミュレーションし、アイデアの精度を高めているのです。
実際にはやってみないとわからない事が多いのですが、シミュレーションをできることで、より時間を効果的に使えるようになるのです。
結論:イメージ力が「素早い習得」と「適切な戦略」をもたらすことができるので、「高めた能力」が「フルに発揮」されるようになるのです。そのためには、本書で紹介している10のイメージ力を習得することがカギになります。
―本の中には、現時点での「イメージ力」をチェックするテストがあります。特別なトレーニングをしていない状態で、人によって「イメージ力」に差が出るのにはどんな要因があるとお考えですか?
生田:「イメージする習慣」が“ある”か“ない”かが大きい要因です。たとえば私は幼稚園のころからイメージ力を使って、夢を自由自在に作る習慣を持っていました。
思春期に恋愛がうまく行かない時期は、うまく行くイメージを妄想していました(笑)
他には、相手の話を聞くときに、頭のイメージでシーンを再現しながら聞く習慣。小説を読みながらその世界をイメージで描く習慣など。
このような習慣がある人は、自然と磨かれています。習慣がない人が一番気楽に習得できるのは、小説を読むことでしょう。
文字から脳内のイメージを作り上げ、その世界を見ながら楽しむ習慣を持つと、楽しみながらイメージ力を習得できます。
―「イメージ力」を高めていくことで、どんな効果が期待できますか?
生田:ありきたりな表現になりますが、「望み」が叶うようになります。一人で感情的にただ望んでいても、それが現実化されることはありません。
それは、人は一人では何事も実現できないからです。では、何かを成し遂げる人は何が違うのか?それは「運」です。私の考える「運」とは、「誰かが運んできてくれるので、自分の力ではないラッキーな出来事」と思っています。
ですから、宝くじが当たるのは、私にとっては、単なる確率的なラッキーであって、真の意味の「運がいい人」ではありません。
本当に「運がいい人」は再現性があります。その「運がいい人」には、ついつい何か力を貸したくなってしまいます。
そして、周りがその人の想いをほかの人に語ってしまいます。その結果、想いが実現する「ご縁」が運ばれてきて、結果的に実現できてしまうのです。
では、「運がいい人」は何が違うのか?
運がいい人は「物語を語っている」のです。志を持った「原体験の物語」、未来の「ヴィジョンの物語」。そして、この「物語」が人々に「意味」をもたらします。
そして、人は「意味ある事」のために行動をとれるからこそ、日々が「有意義」になります。
ですから、人は、「自分の人生の物語」に「意味をもたらしてくれる物語」を語ってくれた人の想いを実現してあげたくなっちゃうのです。
だから、ついついその人の想いの実現のタネを運んでいきたくなるのです。
そう、「運がいい人」は「意味ある物語」を語れる人々です。そして、「運がいい人」は、本書でも紹介している「物語イメージ力」が極めて高い人々なのです。ですから、「運」を高めたければ、「イメージ力」を鍛えることがカギとなるのです。
―たとえば、ある大きな目標を達成したいと思ったとき、「イメージ力」をどのように使っていけばいいのでしょうか。
生田:これは本書で紹介している「ヴィジュアライゼーション体験力」を駆使することがカギとなります。実際にしていただくと皆さん驚愕されるのですが、人は1時間~3時間ずっと「ヴィジョンをイメージの世界で疑似体験」することができるのです。ちょっと5分や10分イメージした程度では、精神にインパクトがおきません。詳細は本書でご紹介していますが、「なぜ大きな目標達成のためには、イメージ力が必要か?」「どのようにイメージ力を使うのか?」の基本を書かせていただきます。
まず、当たり前のことですが、大きな目標を達成するためには、「多大な努力」が必要です。この「多大な努力」をするためには、“どうしてもそうしたくなってしまう”「フロー状態」に入ることがカギです。そして、このフロー状態に入るためには、「ヴィジョンの疑似体験」による「パブロフの犬状態」を作ることがカギになるのです。
なかなか目標達成ができない人が努力をする場合は、正直「めんどくさい」という怠惰な気持ちや、「失敗したらどうしよう」という不安がこみ上げます。ですから、努力しているつもりが大半の時間を「悩んでいる時間」として浪費してしまいます。
ですが、どんなに勉強が嫌いで苦手な子供でも「ゲーム」には夢中になれます。そして、ポケモンなどでは、2000単語以上の「不規則極まりない言葉」を暗記できます。しかし、彼らは英単語の方がよっぽど規則性があるのに、全く記憶できません。
これは、ゲームの時は「フロー状態」なので、記憶力が発揮され、お勉強では、「Notフロー状態」なので、記憶力が発揮されてないだけです。この場合は、ポケモンの2000単語を覚えられているのですが、記憶力がないのではありません。「フロー状態」をコントロールできないことが、勉強の成果がでず、嫌いになる原因です。
そして、「パブロフの犬状態」を作り上げ、「多大な努力」を楽しくやってのける「フロー状態」を作るためには、イメージ力が不可欠です。なぜならば、パブロフの犬の実験であれば、「えさを与えて鈴を鳴らす“体験”」を作ればいいのですが、大きな目標はいまだ実現していないので「体験」できないからです。
ですから、唯一の手段は頭の中でイメージすること。そして、可能な限り「実体験」に近い状態で体験することが大切です。それを実現するイメージ力の技術が、「ヴィジュアライゼーション体験力」です。この力を解放するには、頭の中に浮かんでいるイメージを聞いてくれる相手が必要です。その相手に、ヴィジョンの世界を現在進行形で語るだけで、ヴィジョンを体験できるのです。もちろん本格的にやる場合は、聞き手の質問力や、聞く技術がかなり高度に磨かれている必要がありますが、まずやってみるという意味では、誰か聞き手なるパートナーを見つけて、「ヴィジョンの世界が見えているとしたら・・・」と話し始めるだけでOKです。あとは、自然とイメージが湧きに沸いてきすから。
これができると、「ヴィジュアライゼーション体験」によって、イメージを達成した先のワクワクや情熱が溢れ出るようになります。この情熱のエネルギーが「フロー状態」を作り、圧倒的な努力を楽しくできるようにしてしまうのです。ぜひ皆さんチャレンジなさってください。
―何かを思い浮かべたり、イメージしたりするということは、私たちが日常生活で無意識に行っていることでもあります。生活の中で「イメージ力」を高めていく方法がありましたら教えていただければと思います。
生田:やっぱり一番は「寝るときに夢を作る」という習慣です。やり方は簡単です。目をつむったら、好きなシーンを設定してください。この時「見えるとしたら何が見えるか?」と自分に問いかけ、なんでもいいから見始めることがコツです。そして、何個か道具が見えたり、景色が見え始めたら、その世界を眺め続けます。5分くらい続けると自然と夢のようにストーリーが展開し始めます。
オススメは「明日の楽しい1日」を夢で体験することです。これを一ヶ月も続けたもらったら、1日の濃さがまったく変わっていきます。そして、みなさんの主体性や楽しむ力もどんどん上がっていきます。
だまされたと思って一ヶ月間ぜひやってみてください!
―最後になりますが、この本に関心を持つであろう「能力を出しきっていない人」あるいは「自分はもっとできると思っているのにどうすればいいかわからない人」に向けてメッセージをお願いできればと思います。
生田:私たち人間は、誰もが眠っている時に「夢を見る」ことができます。そして、これはきわめて強力な「イメージ力」が誰にでも備わっているという事実です。しかしこの「イメージ力」は残念ながら、私たちが「起きている時には、眠っている力」です。
「イメージ力」が、才能を開くのであれば、ただ、「眠っている力」を叩き起こせばいいだけなのです。私たちには、「可能性を開く力」である「イメージ力」がすでに備わっています。ですから、イメージ力を叩き起こせば誰でも「可能性は開ける」のです。
本書では、そのあいまいな「イメージ力」を10の具体的な技術にし、その10の技術を使い具体的に才能を開く「27の才能のレシピ」を掲載しています。本書を通じてみなさんの可能性が開かれる一助になれましたら、大変うれしく思っております。
日本初の「ポテンシャル・トレーナー」。2002年横浜国立大学工学部卒業後に起業。ソーシャル・エデュケーションを事業ドメインとする「株式会社ワオウェイ」代表取締役。社会人・大学生への教育研修、コーチング、エデュケーションアプリの開発などを手がける。学生時代には、新宿アルタ横に「BOXcafe」をプロデュース。その後、学生向け社会教育プロジェクト「NPO法人キッカケ」を立ち上げ、代表理事を務めている。また、「日本教育工学会」正会員、「日本認知科学学会」正会員として、日夜教育コンテンツの研究開発を行っている