その1:コンピュータは足かせになる?
その2:公益資本主義って?
その3:原丈人とは?
現在、我々はコンピュータなしでは生活できないほど、その能力や可能性を信じきっている。しかし、著者である原丈人氏は「コンピュータはもはや足かせ」だと言う。
ではなぜ、コンピュータが「足かせ」になるのか。それは、コンピュータにも「解けない問題」があるからである。原氏はコンピュータの弱点を以下のように語る。
コンピュータが基本的に、「構造化」したデータを扱うのは得意だが、「半構造」のデータ、あるいは「非構造」のデータについては、とても十全に扱えているとはいえない状況だからである(p80より)
インターネットを介して我々ユーザーはさまざまな人間とコミュニケーションをとっている。それは不特定多数の人びとが不特定多数のデータをやりとりしていることを意味する。しかし、コンピュータはそうした不特定多数のデータの大半を占める「半構造」「非構造」データを処理するのは不得手なのだ。
そして、原氏は「コンピュータは果たしてネットワークをするために使い勝手の良いものなのか?」という疑問を投げかける。
では、原氏の考える「ポスト・コンピュータ」とはどのようなものなのか。「ユビキタス」、そして日本の技術力の高さを含めた議論が本書では展開されている。
原氏は日本の高い技術力を駆使した途上国支援を通して、日本発の新しい活動を試みている。つまり、「発展途上国から必要とされる日本」を作り上げようとしている。
それが以下の3つの事業である(詳しくは右図参照のこと)
・ポータル開発やインターネット接続などのインフラ整備を行い、その配当金で
教育や医療などの公益事業を提供するbracNET(ブラックネット)
・高たんぱく質の「藻」を育成し、世界中の飢餓を解決するための活動を行う「スピルリナ・プロジェクト」
・貧困層に無担保で資金を融資し、貧困から抜け出す手助けを行うマイクロクレジット
これらは単なる慈善事業ではなく、ビジネスとして成立する「公益事業」だ。また、原氏はこのほかにもさまざまな活動を展開している(その3の図表を参照のこと)。そんな原氏が提言するのが「公益資本主義」という考え方だ。
金融資本主義の崩壊が叫ばれて久しい。こんな混乱の中だからこそ、世界に目を向け、「公益」を考えたビジネスを展開する。これこそ「新しい資本主義」の形なのである。