新刊くん
インタビュー

―本書『「成功」のトリセツ』についてお話を伺えればと思います。本書では従来の「成功本」の問題点を挙げている一方で、本書もまた「成功本」だといえます。本書と、巷に溢れる「成功本」のちがいはどのような点にあるのでしょうか。

 記者さんが「成功本」だというのならそうでしょう。でも、この本は、タイトルこそ『「成功」のトリセツ』ですが、基本的に、私が毎日考えていることをまとめて書いただけなので、実は特に「成功本」を書いたつもりはないのです。

それでも結果的に「成功本」として読めるということは、もはや自分自身の思考や行動が相当「成功者」っぽくなってしまっているのかもしれませんね。

この本に書かれていることはここ数年の自分の身に起こったことがベースとなっていますが、単なる身辺雑感と違うのは、僕がビジネス書の作家として、専門書や自己啓発書、 ビジネス書などを数千冊読んで得た知識と照らし合わせて書いている点だと思います。

ただ照らし合わせて書いただけでは、少し難しい内容になってしまうので、極力、普段ビジネス書など読まない人にも笑って読んでもらえるように書いたつもりです。

―本書でも書かれている通り、巷には「成功本」が溢れています。こういった本が大量に出回っている背景にはどんなことがあるとお考えですか?

 巷では「成功本」だけでなく、ダイエットの本や長生き、健康の本も大ブームです。
美しくなりたい、愛されたいという女性にとっての成功本は女性ファッション誌でしょうし、性ホルモンに脳が支配された若者にとっての成功本はエロ本です。

ビジネスで成功したい人も含めて、「今ある自分よりもパワーアップしたい」という人がいっぱいいて、そういう人を相手に商売している出版社がいっぱいあるということかもしれませんね。というと皮肉っぽくなってしまいますが。

本を書く側としては、読んで面白いと思ってもらったり、楽しいひとときが過ごせたり、読んで新しい知識を得られたり、あるいは人生が変わるというような、なんらかのプラスの体験を得て欲しい、与えたいと思って一生懸命書いているだけです。

―この本では「お金」「仕事」「時間」「人間関係」「自分」という要素に分けて「成功」する方法が語られています。水野さんがこれらの重要性に気づかれたきっかけはどのようなものでしたか?

 僕は人生の前半は、何をしてもうまくいく人でした。しかし、30代前半くらいから、それまでのやり方だけでは物事がうまく進まなくなりました。これはちょうど27歳くらいの女性が、若くて奇麗なだけでは行き詰まり、それまでと違う生き方を模索しだすのとタイミング的には似ているのかもしれません。

一部の若い男性は性欲や征服欲、アドレナリン、テストステロンなどに突き動かされて、 常に上に行きたい、1億円稼ぎたい、1億の次は5億、5億の次は10億、誰もが認める美女と付き合いたい、トップになりたい、などなど、数々の欲望を抱えています。

戦いや競争や見栄が彼らの行動原理になっているのですが、それでは最終的には幸せにはなれない、という悟りを開くような経験があり、お金や仕事も大事だけど、時間とか家族を含む人間関係も大事だと思うようになりました。そのあたりのことは本の中で詳しく書いているので、読んでみてほしいですね。

―水野さんといえば、かつて事業の失敗により多額の借金を負っていたことが知られています。当時と今の「成功」や「幸福」の定義はどのように変わりましたか?

 “人は失うことでしか大事なことに気づけない”と、昨年出した『幸福の商社 不幸のデパート』(大和書房/刊)でも書きましたが、当然のように「ある」と思っていたものがなくなったとき、はじめて本当に大事なものに気づきました。

また、お金を出して得られる快楽は一瞬のものです。そういう意味でいえば、まず一番大事なのは自分の命であり、次に家族や恋人や友人など身近な人との時間。そして、趣味や運動など心と体の健康に使う時間や心の平穏。他人と比べるのではなく、自分の中の評価軸に従うことなど、色々なことに気づきました。

この中から人生の「リスク」と「リターン」を考える、「社会規範」と「経済規範」の違いを知る、金銭感覚を鍛えるなど、この本ではそういったことをテーマにして書きました。

―人生において、自分が「成功」したかどうか、というのは自分でも判断しがたい問題だと思われます。水野さんは、自分が成功したかどうかをどのように判断しようとお考えですか。

 一番いいのは自分の好きなこと、やりたいことが仕事になっていることです。次に家族や友人、恋人などお金の関係ではない仲の良い人たちに囲まれているかどうか。健康であるかどうか。趣味の時間がとれているかどうか。そうしたことがクリアされていれば幸せですし、充分に「成功している」と言って過言ではありません。

「成功」という定義に預貯金や収入や有名であるかどうかなど見栄、名誉、権勢のようなものは関係ありません。

自分自身についていえば、極力執筆に専念して作品を発表し続けること、家族との時間、趣味の時間、健康の時間を大事にすること。出版セミナーなどの受講生ときちんと向き合うことなどがあげられます。

―「成功本」の内容を実践しようとしている人が気をつけるべきポイントがありましたら教えていただければと思います。

 僕自身は会社経営者時代から成功本を読み始め、2007年冬からは毎日2、3冊読み続ける生活になりました。 大事なことは、自分の心の中がプラスかマイナスかということ。どれだけ素晴らしい教えでも、その人の考え方がマイナスであれば現実の結果はプラスにはなりません。

僕が観察している中でも、中卒の元カラオケボックスの店員さんが大金持ちになって幸せに暮らしている一方で、東大や京大を出ても30代、40代になっても何かを探し続けて、世の中のあらゆることを分析しては、実際の行動は中途半端なのに文句ばかり言っている人もいます。

つまり学歴などよりも、その人の性格や物の見方や行動力、人との付き合い方が大事なんだなーとつくづく思います。

あとは、成功者といっても、よくよく見れば大抵は1つか2つのことで成功しているわけです。野球もできて演技もできて会社も経営して、インターネットビジネスで成功してなんて人はほぼいません。

私にしても、本を一生懸命書き続けていることと、出版セミナーを運営し続けていることはまぁまぁ褒めてあげたいですが、他のことは何ひとつまともにできていません。

つまり、自分が集中できて強みを発見できる分野にコツコツと取り組んでいくのが一番だと思います。

―本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?

 女子、いや女性。あと、20代~30代の若い人、学生の方にも読んでもらいたいですね。さらっと読んで、こんな人もいるんだー、こんな物の見方もあるんだーと思ってもらえれば充分です。

―最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。

 僕はTVや新聞などのマスコミや外部講演、インターネット上でも知らない人とは会わないようにしています。もしも本を読んで興味を持った人はセミナーなどで会いに来てください。もちろん本を読んでいただけるだけでも凄く嬉しいです。感想などもお待ちしています。