エモーショナル・
リーディングのすすめ』
- 著者:
- 矢島雅弘
- 出版社:
- ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 定価:
- 1,300円+税
- ISBN-10:
- 4799315927
- ISBN-13:
- 978-4799315927
■ビジネス書は「著者と対話」をすれば飽きない!

――普段、新刊JPでは「新刊ラジオ」というPodcast番組のパーソナリティをされている矢島さんですが、なんとこれまで番組内で1750冊以上の本を紹介しています。「新刊ラジオ」が始まる前はどんな本を読まれていたのですか?
矢島:大学で社会学を勉強していたこともあったので、現代社会を論じた本はよく読んでいましたね。印象に残っているものだと、ちくま文庫さんから出ている森岡正博さんの『意識通信』や、中公新書さんの『論争・中流崩壊』(「中央公論」編集部/編)とか。
――これらの本が出た頃、メディア論や社会階層論がブームみたいな感じでしたよね。
矢島:そうなんですよ。ほかには、東浩紀さんの『動物化するポストモダン』(講談社/刊)もかなり感銘を受けましたし、香山リカさんの『ぷちナショナリズム症候群』も興味深く読ませて頂きました。中公新書さんですね。今回は新書を中心に挙げましたが、いわゆる学術書も読んでいました。
――そういったジャンル以外の本ではいかがですか?
矢島:学生の時、すごく精神的に疲れていた時があったんです。自分は本当にダメな人間だなと思っていた……そんな時期に出会ったのが、宮崎学さんの『突破論』(光文社/刊)でした。「スポーツニッポン」で連載されていた人生相談をまとめた一冊なのですが、宮崎さんは異色の経歴の持ち主で、とてもアウトローな視点から、人生の見つめ直し方や変え方を教えてくれるんです。僕の中ではカルチャーショックでしたね。そんな人生の変え方があるのか、という回答がどんどん出てくるんです。
――それは面白そうですね。今はビジネス書をメインに読まれていらっしゃいますが、ビジネス書はもともと読んでいなかったとか。
矢島:実はこの新刊ラジオを始める前までは、あまり読んでいませんでした。当時僕は新刊JPを運営しているオトバンクの社員だったのですが、「矢島、こういう番組を作りたいから、これらの本を読んでおいてくれ」と上層部から言われて読み始めたのがきっかけです。その中で、ビジネス書が面白いということに気づかせてくれた本があって、それが『最強トヨタの7つの習慣』(若松義人/著、大和書房/刊)です。新しい知識に触れたときの“驚き”がありました。今でこそ当たり前のようにビジネス書に出てくる「かんばん方式」や「カイゼン」という言葉は、この本で初めて触れました。
――新刊ラジオ黎明期の紹介本を見ていると、時代を感じますね。当時売れていた本がズラリと並んでいて。
矢島:勝間和代さんの『年収10倍アップ勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/刊)は印象的でした。本って一章が何ページにもわたって書かれているイメージだったのですが、この本は一つ一つの項目が短く分かりやすくまとめられていて当時の僕には新鮮でした。さらに、この本は「勉強法」がテーマなんですね。それって、いわゆるビジネスパーソンの基礎をなすものだと思うんです。僕自身もこの本に載っている勉強法は参考にしましたね。
――そこでビジネスパーソンとしての基礎を学んだ、と。
矢島:そういうことですね。また、そのとき、同時並行で読んでいたのがピーター・F・ドラッカー『経営論』(ダイヤモンド社/刊)でした。800ページ近くある分厚い本なのですが、オーディオブック版のディレクターとして全文目を通したんです。この本の中でドラッカーは“人間”に着目していて、それまで読んできた社会学関連の本やビジネス書がすべてリンクしてくるんですよ。あ、全てはつながっているんだな、と読書家として目の前が開けたような気持ちになりました。
――そういった本を通して読書をするための土台ができた。新刊ラジオだけでもすでに1800冊は本を読んできたわけで、読書に飽きることはないんですか?
矢島:よく聞かれるのですが…飽きないですね。僕自身は飽きないです。ただ、新刊ラジオを続けてきた中で、スタッフの方が本に飽きてしまったことがあったんです。「同じような内容の本が多いですね」と。でも僕はそう思わなくて、例え結論が似ていても、著者が違うのだからそこに至る過程や背景は違うはずなんです。実は人に本を紹介するときはこの過程や背景がすごく重要で、過程・背景が違えば似たような結論であったとしても、それぞれの本に込められたメッセージは全く違うものになるんです。
『エモーショナル・リーディングのすすめ』では、それを「対話」といっているのですが、僕は無意識でやってきた。それはなぜかというと、著者さんと実際にお会いして話す機会が多いからだと思うんですね。まずは本で著者さんと対話をして、そしてお会いしたときにその対話で得られた自分なりのメッセージをぶつける、すると著者さんも喜んでくれるんです。でも、本だけでも充分に対話できると思いますね。
――矢島さんの初の書籍は『エモーショナル・リーディングのすすめ』というタイトルですが、新刊ラジオのスタッフに聞いたところ、この「エモーショナル・リーディング」という読書術はもう5年くらい前から使っていたそうですね。
矢島:そうなんですよ。だから、新刊ラジオの関係者からは「矢島さん、本を出すの遅いですよ!」って言われるのですが(笑)僕の中では当たり前の読書術だったので、書籍化することに対して踏ん切りがつかなかったんですね。
――読書術というと「速読」などテクニカルな本はよく見かけますが、こういった内容の本はあまり見かけません。
矢島:そうなんですよね。実は僕が最初に出版元のディスカヴァー・トゥエンティワンさんに企画書を提出したときに、“読書啓発”というジャンルを作りたいと言ったんですね。テクニカルな本ではなく、どちらかというと自己啓発よりの内容にしたいという想いがありました。だから、結果的にそういった内容で書けて嬉しく思います。
■ブックナビゲーターが選ぶ! これは読んでおくべきビジネス書5冊
――矢島さんは仕事以外でも普段も本を読まれていると思いますが、ご自身で本を探すときにどのようなポイントをもって本を選ぶのですか?
矢島:これはおそらく皆さんと変わらないと思います。まずタイトルと帯を見て、興味がわいたら、「はじめに」を読みます。この本の中でも書きましたが、僕は「はじめに」の部分がすごく重要だと思っていて、そこに著者さんの想いやこの本に至るストーリーが全て書かれているんですね。その想いやストーリーに共感できたら、読んでみよう、となります。
――その選び方だと、やはりタイトルが入り口になりますね。
矢島:タイトルは入り口ですね。そこで普段読まないジャンルの本も読んでみようかなと思いますし。
――最近タイトル買いした本はなんですか?
矢島:『ほぉ…、ここが ちきゅうの ほいくえんか』(ベストセラーズ/刊)という、保育士のてぃ先生が書いた本です。保育園児たちの面白くて意外な発言をまとめた一冊ですね。子どもってこんなに自由な発想をするんだという気づきがありました。
――では、ここからは矢島さんに、「これは面白かった、役に立った」という、これは読んでおくべきビジネス書を5冊、選んでいただきたく思います。新刊ラジオで紹介していない本でも大丈夫です。ご自身の気持ちでお願いします。
矢島:そうですね…。まずは瀧本哲史さんの『僕は君たちに武器を配りたい』(講談社/刊)。この本をエモーショナル・リーティングするコツとしては、瀧本さんがなぜこの本を書いたのかというところに共感することです。共感ができれば、有効な「武器」を得られると思うんですね。熱意のある若い方は必読の一冊ですね。
続いては『ロジカル・プレゼンテーション』(高田貴久/著、英治出版/刊)です。僕は周囲からはロジカルに考えるねといわれますが、自分の中ではまったくそれができてないと思っていて。最初この本を読んだとき、しっかり精読して自分のモノできれば、ロジカルになれると思ったんです。本文中に小説形式のケース・スタディが入っていて、とても読みやすい一冊です。エモーショナル・リーディングをする場合は、その小説に感情移入をして、自分だったらどこで生かすかを考えながら読むことが大事ですね。ノウハウや知識だけを頭に入れても、使わなければ意味はないですから。
――その通りだと思います。
矢島:3冊目は『夢をかなえるゾウ』(水野敬也/著、飛鳥新社/刊)。言わずと知れた大ベストセラーで、エンターテインメント性も自己啓発的な要素も兼ね揃えている、素晴らしい一冊です。ビジネス書や自己啓発書で語られているさまざまな要素が散りばめられているので、ビジネス書を読んだことがない人は、まず本書を読んでみてほしいですね。
4冊目は『伝え方が9割』(佐々木圭一/著、ダイヤモンド社/刊)です。とても実用的な一冊で、僕自身も実践しています。例えばメールの中に「!」を入れると、相手に自分の感情が伝わるとか。これは自分に届いたメールに「!」が入っていたときに実感しましたね。僕の知り合いには読書家が多いのですが、みんな、この本は読みやすいと言います。
そして5冊目ですが、『企画は、ひと言。』(日本能率協会マネジメントセンター/刊)を挙げたいと思います。
放送作家の石田章洋さんの本で、分かりやすく企画の本質を教えてくれます。もともと石田さんが構成作家を務めている『日立 世界・ふしぎ発見!』(TBS系)という番組を夢中になって観ていたことがあって、こういうノウハウがあるのかと参考になりました。
必ず仕事に役立つ一冊ですね。
――ありがとうございました。では、矢島さんの初めての本『エモーショナル・リーディングのすすめ』ですが、どんな方に読んでほしいと思いますか?
矢島:まずはビジネス書を普段読まない方ですね。ビジネス書はあまり得意じゃない、という方はぜひ読んでほしいです。それと、逆にビジネス書をたくさん読んできた人にもお勧めします。最近では若手の書評ブロガーさんも出てきていますし、ぜひともこの本のノウハウを実践してもらえれば嬉しいです。そして、もしブログに書評を書いていただければ、必ず読みます。本の紹介というアウトプットを通して、コミュニケーションをしていきたいですね。

――最後に、このインタビューの読者の皆さまにメッセージをお願いできますか?
矢島:僕は新刊ラジオという媒体で、音声を使って本の紹介をしていますが、この本はこれまで自分がやってきたことの集大成を書いたつもりです。ぜひ、読書が好きな皆さんに読んでいただいて、実践してみてほしい。そして、本を読むことで楽しさを感じたり、意外な発見をしてもらえれば嬉しいですね。
僕は日本で一番ビジネス書を愛する人間です。だから、皆さんにもっとビジネス書を好きになってもらえるよう、これからも頑張っていきます。
(了)
- 第1章
-
- 楽しむことで学ぶは変わる
- 僕がエモーショナル・リーディングを始めた理由
- 読書とは「対話」である
- 読まされている読書では「もったいない」
- 「速読」の功罪
- デキる人は速読しない
- 辛いことやつまらないことは続かない
- 小説は楽しめても、ビジネス書を楽しめないのはなぜか?
- ビジネス小説の読み方
- ビジネス書を楽しめない人がハマる「落とし穴」
- 第2章
-
- 本と対話する「エモーショナル・リーディング」
- 「エモーショナル・リーディング」とは?
- 本は「著者の分身」、読書は「著者との対話」
- 対話を意識すると、読書は変わる
- 「対話読書」の基本
- 肯定的読書のススメ
- 著者の原体験に感情移入する
- 第3章
-
- 「エモーショナル・リーディング」実践編
- STEP1 「対話読書」
- 前評判や事前情報はなるべく入らない
- 著者のビジュアルを想像してみる
- 著者と空気を合わせる
- ノルマを課さない
- 「はじめに」と「小見出し」は丁寧に読む
- 「読み飛ばし」の条件
- 「やってみましょ」「チェックリスト」にはノッてみる
- 基本は「賞賛」「ツッコミ」「共感」
- STEP2 「エモーショナル・メモ」
- 「エモーショナル」をメモしょう
- 付箋とマーカー禁止令
- あえて「話し言葉」で書こう
- どんな「感情」をメモするばいいか?
- 読書のメモで学ぶ得たものを確認しよう
- STEP3 「エモーショナル・アウトプット」
- 人に伝える「アウトプット」あ一冊の理解を深める
- 読んだ本の伝道師になってみよう
- 何だ新しいのかを考えてみよう
- その本、誰に読ませたい?
- 相手の興味をそそるアウトプットの仕方1
- 相手の興味をそそるアウトプットの仕方2
- 自分よりレベルが上の「読書」の着眼点を盗んでみよう
- 同じ本を読んだ人とアウトプットし合う
- 第4章
-
- もっと読書を楽しむための5つのこと
- たまには変なタイトルにそそのかされてみる
- 読むタイミングを意識する
- 知識に翻弄されない「自分基準」を持つ
- 三〇〇冊の一〇〇〇冊の壁
- 名著にチャレンジ!
- 第5章
-
- ブックナビゲーター矢島の「僕の読書を変えた一冊」
- 「P.F.ドラッカー経営論」
- 「ブライアン・トレーシーの 話し方入門」
- 「出稼げば大富豪」
- 「ロジカル・プレゼンテーション」
- 「ラクをしないと成果は出ない
- 「夢をかなえるゾウ」
矢島雅弘(やじま・まさひろ)
ナレーター・ラジオパーソナリティ。1982年埼玉県川越市出身。2005年よりスタートしたPodcasting番組「新刊ラジオ」のパーソナリティとして、これまで約1700冊の書籍を紹介。ビジネス書から文芸、サブカルなどさまざまなジャンルの本を簡潔に分かりやすいナレーションで解説し、支持を得ている。また、数多くの著者・経営者にインタビューし、その気取らない雰囲気作りに定評がある。ナレーターとしては、読書家としての経験を評価され、オーディオブック、教材などを主に担当。 モットーは『難しいことを、面白く分かりやすく』。

- 著者:
- 矢島雅弘
- 出版社:
- ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 定価:
- 1,300円+税
- ISBN-10:
- 4799315927
- ISBN-13:
- 978-4799315927