Q、今日はよろしくお願いします。まず、本書のタイトルにもなっております「ユーマネー」。この「ユーマネー」とは端的に言うと、どのようなものなのでしょうか。
中村 「ユーマネーとは円やドルといったものではなく自分自身の通貨です。普通、お金持ちというと円やドルをたくさん持っている人というイメージが湧いてくると思いますが、ユーマネーの場合はその人の持っている価値や評判などが指標となります。言い方を変えると、円やドルといった通貨を持っているのは“他人通貨”の持ち主であるということですね」
Q、他人通貨というと?
中村 「私たちが持っている例えば“円”は、実は日本銀行から発行されている他人の通貨ですよね。自分の持ち物ではありません。一方、ユーマネーは“自分通貨”ですから、自分そのものが価値となるわけです。すごく評判が高い人は価値が高いですし」
Q、つまり、自分自身の存在の影響力みたいなものが指標となるということですね。それはソーシャルメディア上なんかでよく見られる光景だと思います。
中村
「例えばツイッターなんかで、自分に100人のフォロワーがいたとします。
そのフォロワー個々も100人のフォロワーがいて、さらにその100人の個々人には100人のフォロワーがいる…とすると、自分のフォロワーが100人であっても、その後ろにはたくさんの人がいるわけですよね。このフォロワー数の量もユーマネーの一要素です。フォロワー数が多い人は、それだけファンを持っていることであり、ファンを持つからには、他者に対して働きかけができている人ということになります。
インターネット、そしてソーシャルメディアの普及で、自らが能動的に動き、情報を発信すれば多くの人と一気にコミュニケーションがとれるようになりましたし、自分の発信した情報がすごく伝播しやすくなっていると思います」
Q、例えば私と中村さんがつながると、私が発信した情報が中村さんのフォロワーに伝わりやすくなった。
中村 「昔だったら、私が金井さん(インタビュアー)の知り合いと会いたいといった場合、金井さんにお願いをして、その場をセッティングして頂いて、3人で会って名刺交換をするという話になると思うんですね。でも、今はツイッターやブログなどを通じて金井さんの後ろにいる人を知ることもできるようになりましたし、彼らにコンタクトを取ることもしやすくなりました」
Q、この「ユーマネー」というものに気付かれたのはいつ頃のことだったのですか?
中村
「私はもともと出版社で記者をしていたのですが、会社を辞めたあと一時期フリーで仕事をしている時期があったんですね。当時、私の年齢は20代半ば。編集や執筆もしていましたが、自分の名前を冠につけたような仕事などはありませんでしたが、仕事はたくさんいただけました。
どうして私に仕事をくれるのだろうと思って聞いてみたら、『中村君は一生懸命仕事をやってくれるから』とか『お願いしていること以上に、いろいろと考えてくれるから』という声を頂いたんですね。つまり、相手に喜んでもらおうと仕事をしていたら、仕事がやってくるようになったのです。つまり、利他主義ですね。この主義で仕事をすることで、次の仕事、そのまた次の仕事という形で仕事が増えていきました。このあたりから、評価や価値の指標としての“ユーマネー”の存在に気付きました。つまり地位や名声、お金がなくても、他者に評価され、支持される仕組みがあるということに、です。
」
Q、中村さんの性格的な部分で、頼まれた仕事は断らずに結構何でもやってしまうのですか?
中村 「自分や私が代表を務めるエヌプラスがやることで、社会的に良い事が起きる、面白い事が起きるという仕事は受けますね。個人であれば、本書にも書いていますが、10個自分のやりたいことを紙に書き上げて、それに関わるものであれば積極的にやるということですね。ギャランティーで考えるというよりも、自分がやるべきだと感じたら動く。動かないというのは前に進まないということですから、チャンスに出会える機会を逸していることにもなります」
Q、今おっしゃられたように、中村さんは記者を経て起業をされたわけですが、それも自分で動こうとした結果でしょうか。
中村
「当時、出版は斜陽とはいわれていましたが、今ほど絶望感はなく、楽しかった覚えがあります。ただ、当時、ウェブやデジタルの世界の方が、より面白く感じました。2001年くらいでしょうか? その後、2005年に会社を設立するまでは、フリーランスでウェブに限らず、様々な仕事をしてみました。デイトレーダーもしてみましたし、ラジオの放送作家もやりました。小説も書きましたね。ただ、一人でやる仕事がほとんどだったので、そのことに問題意識はありました。
自分ができないことを誰かと一緒にやったりとか、自分と同じことができる人がもう1人いて、その人と2人でやれば、自分1人でやろうとしていることよりもはるかに面白くなったりするんじゃないかと考えたのです。そういう人とのつながりを意識したとき、ウェブの世界がすごく面白くなっているのを見て、これだ! と」
Q、例えば新入社員が会社の飲み会に行かないというようなニュースが報じられていたこともありましたが、ああいうのは「ユーマネー」を増やす機会を逸しているということになるのでしょうか?
中村 「今はどうですかね。最近だとデートより残業っていうような流れになっているみたいですけど。彼女より上司を取るという人もいると聞きました。でも、会社で出世したいのであれば、飲み会には出た方がいいと思います。簡単に言えば情報収集ですし、自分のためになりますから。上司と飲みに行くことをネガティブにとらえている人は、ビジネスとプライベートを切り分けようと必死になっている気がしますね。ビジネスもプライベートも、関係なく、自分のためになれば動く。そう思えば上司と飲みに行くことも、面白くなりますよ。人はコミュニケーションが取れる人と関わりたいと思うものですから、飲み会というコミュニケーションの機会を逸するのは単純に損だと思います」
Q、なるほど。飲み会も目的を達成するための手段と考えれば…
中村 「そうです。目的や視点をちょっと変えれば、だいたいのことは、楽しくなります」
Q、 「ユーマネー」を増やすための方法について教えてください。
中村
「まずは動くことですね。著名人にメール送るのも、これは中谷彰宏さんとの対談でもお話させて頂いていますが『メール出すのもタダ。それで返事が来るかどうかは分からないけれど、来たらラッキーくらいに思えばいい』ということなんですね。中谷さんは『お金のかからない宝くじ』とおっしゃっていましたが、そう思っていろんな人にコンタクトを取ると良いと思います。
なにせ、動くにしても、今はお金がかからないのです。例えば、昔は作家になるために有名な作家の書生になることが多かったですよね。例えば『金色夜叉』の尾崎紅葉の門下生には、泉鏡花や田山花袋がいます。私は泉鏡花が好きですが、彼は16歳で生地の石川県から、東京へでて、18歳で紅葉の門下生になります。その交通費や決断たるや、大変なものだったでしょう。それに比べれば、今は簡単にアクションが起こせる時代です。ツイッターのアカウントを取っても、ブログを開設するにしても無料でできます。動くこと、まずはそこからだと思います
」
Q、 ツイッターやブログで何を発信していいのかわからないという声もあると思うのですが、何を発信していくべきだと思いますか?
中村
「先ほど述べたように、自分のやりたいことを10個書いて、その中からテーマを汲み上げて発信していけばいいと思います。
あと、10個もないという方は、ツイッターの方がいいと思いますね。とりあえず他人のつぶやきを見ていれば、どういうことがつぶやかれているのが分かりますし、そこから自分がどんなことをつぶやきたいか、ということが見えてくることもあります
」
Q、 元出版社勤務の方にこのような質問をするのは大変おこがましいのですが、普段、本を読みますか?
中村 「本は結構読みますよ。安いと思うんですよ、本って。その人の長い経験を千円ちょっとで買える。自分でそれをしようと思えば、大変です。人生の疑似体験できるわけですから、読まないよりは、読んだ方がいいですよね。」
Q、 どんな種類の本を読まれますか?
中村 「ビジネス書も読みますし、小説とかも読みます。評論みたいなものも好きですね。わりとミーハーなので売れている本とかは読んでいますよ。あとは、例えばお会いする方が著書のある方であれば、その本を読みます。せっかくお会いしたのに、先方にがっかりされて、自分のユーマネーを減らすのは得策とはいえません。お会いするからには、先方に喜んでもらう。利他主義の発想が大切です」
Q、 “この本を読めば「ユーマネー」を増やせる極意が学べる!”というような本はありますか?
中村 「それはですね…まさしく本書です(笑)!」
Q、 (笑)確かにこの本はそうなんですが、他にはありますか?
中村
「答えになっているかは分かりませんが、それは人それぞれだと思うのです。例えば、『鉄腕アトム』を読んで科学者になろうと思った人もいるでしょうし、松下幸之助さんの著書を読んで経営者を目指そうと考えた人もいるでしょう。自分にとって刺さる本というのは、必ずあるはずです。問題は、その刺さる本を読んで“あー、面白かった”で終わる人と、“自分もこんな人になろう!”と思って動く人がいるということです。
本を読んで、動けるかどうかですので、「本を読んで動く」というマインドになることが大切だと思います。
」
Q、 「ユーマネー」を増やすために今すぐできることって何ですか?
中村 「動くことです。ツイッターとかブログ、フェイスブック、ミクシィ…いろいろありますよね? 興味があっても“また今度”と思っている場合は、すぐに使ってみることです。自分に合わなければ辞めればいいだけ。ほとんどのサービスは無料ですから、リスクはありません。失うのはわずかな時間と手間。その二つを惜しんでユーマネーが得られないのは、大きな損失です」
Q、 本書をどのような方に読んで欲しいと思いますか?
中村 「この本を読んでいて、『これは自分でもできるかも』という事例があったらすぐ動いて欲しいと思いますね。最後まで読んで『良かった』と思って満足されては、本末転倒です。、読みながら自分のフィールドで出来ることを考えたり、どういうところで使えるかなと想像したりしながら読んでもらえたらうれしいです。元々私も、本を読んでいるとすぐにやりたくなっちゃって、最後までじっくり読むということはあまりしないので……」
Q、 では最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。
中村 「まずは是非読んでもらって、すぐやれそうなことをすぐやる。そして少しでも動くことによって変わっていく“自分”を実際に体験してもらいたいです」
Q、 ありがとうございました。