だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性』松岡正剛著

提供: 本が好き!

先行書評である誤読三昧さんが「5回読み返したけどエグイ」と書くほど魅力的なのかと思い、献本に申し込み当選し、読んだ本です。

読み始めて誤読三昧さんの書いた理由がわかりました。社会は何から成り立っているのかという非常に深淵なテーマで、日本思想と西洋思想を縦横無尽に行き来しているため、5回ぐらい読まないと書評が書けないということなのです。

「擬」という見方は、(略)本物があって擬物があるのではなく、「ほんと」と「つもり」がまじった状態でしか世界や世間は捉えられないという見方だ。すべえは内蔵しつつ外包されているからだ。

この見方に対応するのが、「コンティジェンシー」という聞きなれない英語。日本語に訳すと「偶有性」。世の中にシステムと言われるものはたくさんありますが、どんなシステムにもさまざまなリスクは内在していて何かのはずみで事故等が起こることで、同じようにやっても事故は起きないかもしれないし、さらに別の事故になるかもしれないということです。東京電力福島第一原子力発電所の事故を顧みると確かにそう思います。

著者は、社会制度ではなく、世間を様々な角度から綴っています。 資本主義の合理性では説明のつかない「借り」(義理人情)、「横取り」「乗っ取り」「おすそ分け」「おもかげ」といった日本語とエクソフォニーなどのカタカナ文字が次々に繰り出されてきます。

この本には世間を見るための重要な視座がたくさん書かれていますが、とてもじゃないけど献本期間の2週間では無理で、1年単位で読み返す必要があると思うほど奥深い1冊です。

(レビュー:祐太郎

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

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擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性

擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性

現代思想の雄が捉えがたい「世界」と「世間」を斬る

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