せかフツ人に聞く!

日本が元気になるためには? ベテランビジネスパーソンが提言
―連載「せかフツ人に聞く!」

 ビジネスの現場に携わっていると、多かれ少なかれ悩みや課題は出てくるもの。そして、その悩みを解決しても、また新たな課題や疑問に立ち向かわなくてはいけません。
 では、そんな課題を世界で活躍しているビジネスパーソンはどのように解決してきたのでしょうか?
 この連載では『そろそろ、世界のフツーをはじめませんか―いま日本人に必要な「個で戦う力」』(日本経済新聞出版社/刊)で日本のエリートビジネスパーソンでも世界に追い付けていない人が多いと指摘する今北純一さんと船川淳志さんのお二人にご協力いただき、ベテランビジネスパーソンとしてアドバイスをもらうという企画です。
 今回は最終回。質問者の悩みと少しでも被る人がいれば、国境を越えて活躍をする二人の真摯な回答を是非参考にしてください。(新刊JP編集部)

■ 質問

先日行われた参議院議員選挙では若者の投票率の低さが注目されました。不況の中で生まれ、明るいニュースがあまりない時代に生まれました若者たちはこれから先、日本という自分の国とどう向き合っていけばいいのでしょうか。

【船川さんからの回答】
「悩んで、そして行動をすることが第一歩!」

 過度な悲観論は、安直な楽観論と同様に、我々が現実を見ることを出来なくしてしまいます。確かに、今、日本が直面している様々な課題の大きさと、根深さを考えると、そう簡単には、国として社会として乗り越えていけないだろうと思いますし、私もそのことに危機意識を持ち続けています。
 詳細は「せかフツ」に書きましたが、一言で言えば、日本は国としてこれまでの成功体験に縛られ過ぎたあまり、今の時代に合わない様々な制度疲労が明らかになってきたのです。それは、社会制度だけではなく、我々の意識の中にも影響を及ぼし、「失われた20年」の間に諦念観や縮み志向が蔓延してきています。
 よって、「不況の中で生まれ、明るいニュースがあまりない時代に生まれました若者たち」が悲観的になるのは当然だと思います。

 しかし、だからこそ、皆さんに考えてもらいたいことがあります。
 まず、「今だけが、そんなに大変なのだろうか?」ということです。今でこそ、「資産や年金に恵まれている高齢者たち」と一般的には言われていますが、あの世代も、戦災の中で生まれ、暗く悲惨なニュースしかない時代に生まれた当時の若者だったのです。また、オイルショックの直後、もはやそれまでのような高度成長は望めないと世間の空気は重いものでした。その時代に育った当時の若者も、その時はあなたと同じように悩んでいたことでしょう。
 悩むことは健全であり、それは問題意識の発露になります。但し、悩んでいるだけでは、なにも変わりません。行動をとれるか否かが鍵です。行動とは、些細な一歩から始めればいいのです。まだ読んでいない本を読むこと、会議で発言すること、気おくれしないで聞きたいことを聞いてみること、海外に行って知らない世界をみること、これらは全て行動です。多少、上手くいかなくても、あきらめずに続けていると、気がつくと随分遠くまで来ていることに気づく日がやってきます。
 国にぶら下がって文句を言っていても、なにも変わりません。だからと言って、日本人としてアイデンティティを否定する必要もありません。前回の連載や「せかフツ」の中でも指摘したように、日本人として誇るべきものがあります。国は変えられなくても、自分を変えることは出来ます。それはあなたが選択する自由を持っているのです。

【今北さんからの回答】
「自分の身のまわりで面白がれることを見つけよ!」

 自分一人が投票しようとしまいと、どうせ政治は変わらない。政党間の政策の違いはあいまいだし、そもそも公約どおり実行されるかどうかも怪しい。信用できそうな候補者に投票して仮に当選したとしても、一人で改革できるわけがない。

 大人たちの間でも、こういった「あきらめの心境」を共有する人たちは少なくありません。でも、もし、このような「あきらめの心境」が連鎖反応を起こしたら、どこかで民主主義の崩壊の引き金を引くことになるでしょう。

 そんなこと知ったこっちゃない、自分には関係ない、そう考える人もいるでしょう。しかし、そうではないのです。皆さんが勤める会社や、大学、研究所、あるいは官庁での風景をイメージしてください。

 景気が悪いから、会社がだめだから、上司がろくでもないから、同僚が気に食わないから―――。 働く人たちの間で、こんな考え方が蔓延したらどうなるでしょう。状況がよりうっとうしくなることはあっても、よくなることはありえません。

 日本の大企業の間で、とある注目すべき現象が顕著になり始めています。業績が急速に上向いている、あるいは新しいビジネスモデルへの転換を着実に進めている会社には、器量と度量を兼ね備えた経営者がトップにいるということです。逆に、サラリーマン的なメンタリティーのまま年功序列でトップになったような経営者しかいない会社は深刻な状況にあるのです。

 高度成長期には、トップがバランス感覚に優れていれば、大きな間違いをすることなく会社は成長できました。しかし、いまはそうではありません。これまでの延長線上でしか経営できない会社に未来はありません。変革を仕掛けるのは優れた個人です。集団のコンセンサスや、管理志向のアプローチからは変革は生まれません。

 何万人という規模の従業員を抱える大企業でもそうなのですから、数人、あるいは数十人規模の会社であればなおさらです。ルーチンワークを続けていて楽しい人は稀でしょう。  同じ仕事をするなら、つまらないより、楽しいほうがいいに決まっていますよね。でも、モチベーションというのは、人から与えられるものではなく、自分の中から見つけるものです。つまり、仕事をつまらなくするのも、楽しくするのも、あなた次第なのです。

 日本という国を良くしたい、という気持ちさえあれば、あとは、自分の身の回りで、自分ができること、自分が好きなこと、自分が面白がれることを見つけていけばいいのです。人間は一人きりで生きているわけではありません。両親、先生、友人、先輩などとの関係において、恩を忘れない、そして、受けた恩は別の形で自分が社会に還元する、そのような意志を持って仕事に取り組めば、自分一人が何かをしても世の中は何も変わらないといった「あきらめの心境」から解放されて、自分が面白がれる小宇宙を手に入れることができます。

 そして、ひとり一人が、こういったポジティブ思考で行動するようになれば、個々のエネルギーの合算として、日本という国は元気になっていきます。この意味において、ひとり一人が主役なのです。

 (この連載は今回で最終回です。ありがとうございました!)

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