新刊JP FEATURING「遺品整理屋は見た!!─天国へのお引越のお手伝い」フジテレビ系でテレビドラマ化決定

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ブックナビゲーター矢島(以下矢島)
本日は『遺品整理屋は見た!!』の著者でキーパーズの社長でもある吉田太一さんに来て頂きました。吉田さん、今日は宜しくお願いします。
著者・吉田太一氏(以下敬称略)
はい、こんにちは。
矢島
まず、この『遺品整理屋は見た!!』こちら第2弾となるのですが、そもそも最初に本を出されたきっかけはなんだったのでしょうか。
吉田
今、流行のブログというのがありますけれども、実はそのブログを毎日、自分自身で、現場の内容というのを書き綴っていていたわけですね。結果的にそれが出版社の目に留まって、本の出版に至ったということですね。
矢島
今回、第2弾を出されるということですが、やはり第1弾が好評だったから第2弾を出してくれという要望が結構あったのですか?
吉田
そうですね。本の出版に関しては素人ですから(笑)、その出版の1作目に出した本にしては数が出た、と。出版社の方が、比較的評判が良かったと言う風にはおっしゃっていますね。
矢島
なるほど。前作もすごく衝撃的だったんですけれども、ブログの本だというのは前作から僕は知っていたんですが、ブログの書かれたきっかけっていうのはあったんですか?
吉田
やはりこの仕事を知っている人というのは基本的にいないんですね。スタッフもいないですし、お客さんもいない。そういうところで、内容を直に、実際に自分たちが行っていることや感じていることを、世の中に発信することによって、それを見て、知って、こういうところに頼みたいな、ということを感じてもらいたい。そういうものとしてツールを使ってやることを自分自身で気付いた、と。そういうことですね。
矢島
キーパーズさんは全国初の遺品整理業を始めたんですけども、遺品整理業にシフトしたきっかけみたいなことってありました?
吉田
もともと引越しセンターを10年くらい経営していたんですけれど、そのお客様の中にそういう方がたまたまおられた、と。そういう方の要望を全てお聞きしていくとちょっと引越しとは違うね、と。そこを引越しとして取り扱うのはちょっとまずいんではないか、と。で、それを一度提供してみると、ものすごく喜ばれました。自分の想像を絶する、ものすごい今まで聞いたことのない喜びを感じた。そのとき、「これだ!」と思ったわけですね。
矢島
キーパーズさんのキャッチフレーズにもなっていますし、今回の本のサブタイトルにもなっていますけど、『天国へのお引っ越し』ということで、遺品整理といってしまうと葬儀屋さんに近いイメージを受けるかもしれないですけど、『天国へのお引っ越し』というとちょっと格好いいなと思うんですけどね。
吉田
そうですね。遺品というのはゴミじゃない、とそういう考えを当然持っておりまして、その遺品というのが、亡くなった故人の方の大切な形見であり、また長年連れ添った親友みたいなものなんです。故人は亡くなってしまうと先に天国に行ってしまいますけれども、遺された遺品の友達たちというかね、こういったものたちを天国に届けてあげればおじいさんも喜ぶんじゃないか、と。向こうでも、天国でも使ってくださいねと。そういう気持ちを持って仕事をしているわけです。
矢島
少し質問が変わりますけれども、普段のお仕事の中で、本の中にもいろいろな体験が載っていますが、一番つらかったことっていうのはどんなことでしょうか。
吉田
そうですね…。私どもに入ってくるお仕事のほとんどが独居老人の、これはご自宅で亡くなる場合もありますし、病院の場合もあるんですけれども、自宅で亡くなった場合、ご遺族が駆けつけては来るんですが、少し迷惑なような顔をされる、と。同じ身内なのに。そういう関係になった理由っていうのは、それは何があるか分からないです。ですので、私どものような第三者が踏み入ってどうこうは言えないですけど、ただ、やはり家族や親族という部分のつながりというのは完全に切れてないと思いたいので、遺品なんかをこういう形で片付けさせて頂いているなかで、「これは是非お持ちになったらどうですか?」とか、そういうことを問いかけるケースが多いんですね。そうすると、それを「こんなのはゴミだ。この人間のものを持って帰れるか」とかね。
矢島
あー、つらいですね。
吉田
そういうふうにも…相手は亡くなっているんだから、まぁ、亡くなった以上は、今になったら少し許してあげられることはないのかな、と。
矢島
うーん。そうですね。
吉田
そういう部分で、思わず言葉が出そうになるときも結構あるわけです。でも、私どもに仕事を依頼してきているのはあくまでもその親戚の人なので、そのお金に払う人に対してね、逆にたてつくようなことは言えないですから。そこはもう仕方がないな、と言うことで、ちょっとつらいなと思いながら仕事を終えないといけないときもあります。
矢島
いろんな人間関係の軋轢を吉田さん自身が感じてしまうこともあるんですね。
吉田
まぁ、いろんな事情の方がおられますからね。
矢島
本を読んでいて、僕もその辺は結構強く感じたんですけれども、逆に仕事をしていて一番良かったこととか嬉しかったことはありますか?
吉田
そうですね、やはりはじめにも言いましたけど、自分の想像以上の感謝をして頂けるような仕事だった、と。うちの従業員も初めて入ったらちょっとね、「どんな仕事だろう」とか思いながら、自分自身が続けられるかどうなのか半信半疑なとこもあると思うんです。私も、本当にこの仕事がどうなのか。確かに匂いも臭い、体もしんどい。だけど、それを続けて来られたかというところにつながりますけど、やはり「ありがとう」という言葉ですね。これが今まで聞いたことないような「ありがとう」って言葉をかけてもらうことができる。極端ですけども、究極の「ありがとう」、と。
矢島
そうですね。最初にやっていらした普通の引っ越しの作業からより大変な仕事になったというのは間違いないと思うんですけど、日本ではこれやってくれる会社は少ないですからね。
吉田
そうですね。まぁ、自分で…私がさぁこれをやろう!と思ったときには、世の中になかったからやったんです。逆にあればやってないです(笑)。私の性格上、人のやってないことしかあまり好んでやらないところがありましてですね。そういう意味では今はもういろんなところがホームページ上では、ですけれど、少しずつ出てきているのはあります。
矢島
次の質問ですが、今回の『遺品整理屋は見た』第1弾と第2弾、2冊出されたんですけども、こういった本を通して、読者の方々にどんなことを知って欲しいか是非、吉田さんの口から聞いてみたいのですが。
吉田
実際に仕事の宣伝というよりも、意外にですね、皆さんから「社会的に役に立つ、いい仕事だね」と言われることがものすごく多くなってきたわけですね。それは当然やりがいにもなるんですけど、その中から責任感とか、これはちょっと責任重大な仕事をやっちゃったな、と。もうただ商売として仕事が入ったら喜んでいる場合じゃない。やっぱり今、問題になっている独居老人の孤独死等がこれだけ増えているのに、そこに一番たくさん出くわしている、実際にたくさん見ている私たちがそれを何も知らない顔をしてですね、意識しないわけにはいかない。 ということで、ブログであるとかこういう本とか、DVDなんかも作成していますけども、そういうものを通じて孤独死が他人事ではなくて、いつ自分が降りかかってくるかわからない、孤独死に至る可能性はいつでもあるんだよ、ということをまず知ってもらって。「孤独死はどういうこと?」「実際に孤独死になったらどうなるの?」ということを皆さん他人事だと思ってあまり深く考えたことがないことが多いんですが、それを一度考えてみてください、というのが一番大きな伝えたいことですね。それを見たり聞いたりすることによって、一度そこで「あぁ、こんな孤独死にはなりたくないよな」と思う気持ちを持ってもらう、と。そうすると少しずつですけども、孤独死が減っていくんじゃないか。そういうような気持ちで、予防であるとか対策に役立ててもらう、という気持ちがこの本から伝わったらいいなと思いますね。
矢島
孤独死の悲惨さとか、遺族にかける負担などを知ってもらうことによって、孤独死というのが大変だから予防しようということをアピールしたいということですね。
吉田
そうですね。
矢島
孤独死と独居老人というキーワードが出てきましたけども、とても信用性が高くて、孤独死をするのはご老人かな、なんていう先入観があるんですけど、若者の孤独死というのは今まで現場に立ち会ったことはありますか?
吉田
そうですね。今、意外に多い…意外に多いというのがどれくらいかというと、実際に一割くらいの方は50歳以下ですね。
矢島
怖いですね。
吉田
これは今、多くなっていますけれども、自殺。自殺も含めて、そういう若い方の孤独死というのは当然増えていっています、今。それで平均年齢でいったとしても、一番多いのは70代とか80代ではないんです。実は50代から60代前半の方が一番多い。ですから独居老人の孤独死ではなくて、独居中年の孤独死なんです。それがもっと若くなっていって、中年よりももっと若い人たちの孤独死になる可能性っていう、危険性が一番高いというかね。 ですので、今、フリーターの方も多いですし、そういう人たちの中で、今、40歳を境にして自分たちの親が亡くなったりとか、葬儀に参列するとかね。そういったことによって死というものとかを少し意識するようになったり、自分の体調にちょっと不安を感じ出してきたりとか。そういうタイミングの40代前後のとき、一度こういう本を読んでもらいたい。そうすると、リアルにだんだん分かるわけです。20歳とか…20歳前後でも感じる人は感じますけど、まだ少し実感がないという年齢かも知れませんので。 ですので、是非40代くらいの人が知って、それが50代、60代になったときに予備知識として残っていれば、10年後、20年後には少しずつ減る可能性があると、そういう風に思っています。
矢島
では最後に、読者の方々に一言お願いします。
吉田
この本を読んで、長い間連絡を取ってなかった親と子の関係のなかで、自分自身のほうから歩み寄って電話をしたとか、意外に親から電話がかかってきてそれから携帯のメールのやり取りをするようになったとか、こういう方がものすごく増えておりまして、これはすごくありがたいなと思っております。そういった形で家族関係のつながりをもっと活性化できるような、そういう役に立ててもらえればありがたいなと思っております。
矢島
ありがとうございました!

著者プロフィール

吉田太一[キーパーズ代表取締役]

吉田太一

1964年大阪市生まれ。 日本料理の板前を経て佐川急便に5年間勤務後、28歳で軽トラックから一人で引越運送業を始める。以後、日本初の「ひっこしやさんのリサイクルショッ プ」を開業。

2002年、遺品整理のサポートに対する必要性を感じ、「天国へのお引っ越し」(R)をキャッチフレーズとした日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ」を設 立。遺品整理業をビジネスモデルとして確立させたことでマスコミから注目を浴び、現在でも取材の申し込みは引きも切らない。

創業から約8000件に上る経験から、最近では本業以外に「孤独死」を防ぐための取組としてDVDの作成配布や孤独死防止の啓蒙活動を積極的に行ってい る。

遺品整理専門会社キーパーズ