■やりたいことがしても失敗してしまう理由
―まずは本書を執筆された経緯から教えていただけますでしょうか。
「私は本業で『0円店舗開業士』ということをやっています。これから起業、開業する人たちに向けたコンサルティング業なのですが、だいたい年間500件くらいの問い合わせがあるんですね。彼らはやりたいことを見つけたから開業するんですが、多くの方が失敗してしまうんです」
―やりたいことをしているのに、失敗してしまう。
「そうなんですよ。だから、もともとやりたいことがあって開業した方の失敗を防ぎたいという想いで、本を執筆したいと考えていました。私自身も独立開業の経験があるのですが、起業するって本当に勇気がいることなんですよ」
―もともと中村さんは上場企業に勤めていらっしゃっていて、最年少で営業部長になられていたのにも関わらず独立したそうですが…。
「そうなんですよ。26歳くらいで年収1000万円くらいはもらっていて、28歳で営業部長になりました。で、30歳で独立したのですが、ちょうどその頃ネットバブルがはじけて、新興株が下がっていたんです。だからみんな反対するんですよね。身内からもいろいろと言われましたよ」
―確かに身内にとっては、その地位をその状況で手放す理由が分からないですよね。
「とにかく反対されたのですが、家賃6万3000円の築40年、エレベーターなし5階の一室を借りまして独立しました。だから、そういう勇気を持って起業しようとしている人たちをすごく応援したいんです。
もともと、この本は開業や起業という言葉が入ったタイトルになる予定だったのですが、出版社さんと話している中で、そういったタイトルだと多くの人に読まれる本にはならないというアドバイスを受けて、みんなが興味を持っているタイトルを探しました」
―では、この『今日が「最後の1日」だとしたら、今の仕事で良かったですか?』というタイトルはどのようにして生み出されたのですか?
「これは私が100個くらい出したタイトル候補の1つですね」
―とてもインパクトのあるタイトルです。
「そうですよね。出版元の経済界の編集長さんに100個送ったとき、じっくり見て2週間後くらいに返事しますというご連絡をいただいていたのですが、その翌日に電話があって(笑)すぐに会いたい、と。そして今のタイミングで出したいと言われました。ちょうど、3・11を契機に自分の人生について悩んでいる人は多い、と。それでタイトルが決まったのですが、次はこの本を書く資格が自分にはあるのだろうかと考えたのですが、思い返してみれば、私は5回死にかけているんですよ」
―これは本書の冒頭でも書かれていますね。
「にわかに信じがたいかも知れませんが、全部事実なんです。そして5度も死にかけたからこそ、自分がやるべきことに気づいたというのは本当のことなので、そこから書いていこうということで、執筆をスタートさせたというのが経緯ですね」
―本書のタイトルを見たときに、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学のスピーチのくだりを思い出しました。
「このタイトルが決まったのはゴールデンウイークの頃なのですが、実はその頃まで私はジョブズのことをあまり知らなかったんです。もちろん、アップルの創業者であることは知っていたのですが、この言葉を同じようにジョブズが使っていたことを知りませんでした。
ラフの原稿が出来たときに友人に読んでもらったところ、『もしかしたら、これってスティーブ・ジョブズが言っていることと同じじゃないか?』と言われて、そこで初めてスピーチのことを知ったんですね。偉大な経営者が、私が伝えようとしていることと同じことを言っていたということは、すごく自信になりました」
―この質問はとても究極的なものだと思います。多くの人はやりたいことがありつつも、それを出来ていない部分があるように感じるのですが、どうしてやりたいことをすることに躊躇してしまうのでしょうか。
「それはまだ本気じゃないからだと思います。また、もう1つは自分に残されている時間を意識していないという部分もあります。例えば、じゃあ3年後に死にます、もしくはかなり高い確率で死んでしまうと言われたとき、それでもやりたいことをしませんか? まだ時間は残されていると思っている…つまり、夏休みの宿題と同じです」
―なるほど! そうですね。
「夏休みがはじまった当初はまだ1ヶ月半残されていますが、その時期に宿題を片付け手しまう人はあまり多くはないと思います。そして夏休みの終盤にきて、もっと早くやっておけば良かった!と。それが人生においても当てはまるのだと思います」
―ただ、先ほど中村さんがおっしゃったように、やりたいことがあっても失敗してしまう人が多いと思います。
「そうなんです。やりたいことを見つけたからといって、みんな上手くいくわけではありません。では、上手くいっている人はどういう人かというと、諦めない人、何が起こってもその仕事を好きで続けることができる人のことです。もし何かが起こったとき、お金儲けのためだけにやっている人は『もういいや』っていう感覚になるんですよ。でも、本当に好きでやっている人は続ける。その違いを、本を通して伝えたいと思いました」
■人生の最後の1日を教えてくれるサービスにいくら払う?
―例えば就職活動などでは「自分のやりたいことを見つけよう」と言われます。それは逆に言えば、やりたいことを無理してでも見つけないといけないと捉えられてしまいかねないと思うのですが、やりたいことは見つかるものなのでしょうか?
「無理して見つけるというのは、難しいですね。私はこの本の中で、やりたいことはなくていいと言っています。矛盾するようなんですが、最初からやりたいことがある人はほとんどいないですよね」
―それにあったら、誰に言われるのでもなくやってますしね。
「そうですね。それに、好きなことがやりたいことかというのも分かりません。好きなことを仕事にしてみたら違っていたということもよくあります。
本来は実際にやってみて、誰かが喜んでくれて、自分のやりがいになって初めて継続できるんです。好きなことを一人でやっていても意味はないですし、誰の役にも立たないことはやりがいになるのかというと、私はそうは思わないんですよ。
これは本には書かなかったのですが、やりたいことを見つけて仕事にしたとき、本当にそれが自分に合っているのかどうかを計るバロメーターが2つあるんです」
―それは一体なんですか?
「時間と曜日の感覚です。やりたいことを仕事にしているときは、基本的にプライベートと仕事の境目がなくなります。そのとき出てくるのが時間と曜日の感覚がなくなるという兆候なのですが、夢中になると時間を忘れてそれをずっとやっていたりしませんか? そういう仕事ができている人は充実度が高いと思います。また、もう1つの兆候、曜日の感覚ですが、土日祝日もなくなるんですよ。私も今、そういう状態で毎日をおくっています。この2つの感覚があるのであれば、本物ですね。やりたいことができていて、楽しい毎日をおくれていると思います」
―その境地まで辿りつける人はなかなかいない気がしますが…。
「聞いてみると、だいたい1%くらいですね」
―でも、起業をするというのはそういうことですよね。時間のほとんどを仕事に捧げるということだと思います。
「そうなんですが、これは普通の会社員にも言えることだと思います。その会社でやっている仕事が本当に楽しいことだったら充実した人生になりますよね。
本の中で、私はまずシンクロ率をあげなさいと言っています。つまり、今いる会社の中に自分のやりたい仕事があったら、その部署への異動願いを出し続けるんです。そして自分のやりたいことと会社の事業のベクトルを合わせていく、そうすることによって自分のやりたいことを仕事にすることができます」
―本書の第1章で「LAST LIFE SERVICE」社というサービスが登場します。これは、人生の最後の1日を教えてくれるという架空のサービスですが、そこで中村さんは「そのサービスに一体いくらの値段をつけますか?」と問いかけています。中村さんご自身はいくら支払いますか?
「死ぬ24時間前に教えてくれるというサービスですよね。私だったら…そうだなあ、払わないかも知れないですね(笑)」
―それはどうしてですか?
「やはり、死ぬからです。どうあがいても死ぬから」
―では、もし教えてくれるのが1年前だったらどうされますか?
「1年前だと価値があるんですよ、このサービスは。でも、そうだな…。やはり0円ですね。払いません(笑)。なんでかというと例えば私が明日死んでも、幸せだったと言えるからです。常に死ぬという事実に向かって一生懸命今と同じことをしているだけなんですよ」
―なんであれ、やることは変わらない。
「そうですね。ブレないということです」
―本書をどのような方に読んで欲しいと思っていらっしゃいますか?
「実は最初は20代前半の方に読んで欲しいと思っていたんですね。ところが、出版後、40代の女性の方々に一番このタイトルがささっていることが分かりました。次に30代、40代の男性ですね。だから、もともと読んで欲しいと思っていた方々よりもちょっと年齢層は上なんですが、やはり働いている人たち、幅広い層に読んで欲しいと思いますね」
―仕事をしている人たちにとって、この『今日が「最後の1日」だとしたら、今の仕事で良かったですか?』というタイトルはインパクトがあると思いますよ。
「そうですね。結局、こういう言葉に出会わなければ考えないことだと思います。だから、1つの気づきをたくさんの人に与えたいんです」
―帯にある「今日仕事に行く理由はなんですか?」というキャッチコピー、朝に見ると強烈ですよね。
「実は最初はこの言葉じゃなくて、出版社さんが考えたキャッチコピーを載せる予定だったのですが、ここの文章だけは譲れないということで、これにしてもらいました。これを見て考えてくれる人が多ければ、私のミッションは達成といえますね」
―では、読者の皆様にメッセージをいただければと思います。
「やりたいことをやってください、それだけですね。やりたいことを見つけて、それをはじめた人というのはパワーやエネルギーがものすごいんです。でも、やりたくない仕事をやっていると、能力も発揮できないし、自分から動くこともできなくなります。
やりたいことを仕事にする人たちがどんどん増えればこの国は変わると思いますから、やりたいことを本気で見つけて欲しいですね」
1971年、静岡県生まれ。10歳のとき、静岡県駅前にてビル爆発事故に会って以来、30歳までに5回「生死」の狭間を行き来する出来事に遭遇する。大学卒業後は、当時最速で上場を果たした某有名ベンチャー企業の飛び込み営業に挑戦。年間1億円を売上げ、26歳の若さで年収1000万円を突破する。28歳で当時最年少にて本社営業部長となり、30歳で独立し起業する。
その後、わずか3年で上場準備段階まで会社を急成長させるも、景気悪化で社員40名は全員退社。4億円の負債を抱え、人は「お金」で命を落とすことを学ぶ。
この経験によって、お金の使い方に着目し、起業を志す人の「夢の達成」のための資金調達を開始。現在は、起業サポートのプロとして、0円で店舗を開業させる「0円店舗開業士」(商標取得)し、年間500件以上の相談に対応している。
テレビや雑誌、ラジオなど、多数のメディアに出演し、最近では『日経BP ビジネスアソシエ』の「できるビジネスマンの財布特集」にて採り上げられる。
【 中村将人オフィシャルWEBページ 】
http://masato55.com/
【 中村将人Facebookオフィシャルページ 】
http://www.facebook.com/0tenmasato
【 中村将人 Twitter 】
@ayu_masa
今日が「最後の1日」だとしたら、今の仕事で良かったですか?
- 著者:中村将人
- 定価:1,470円(税込み)
- 出版社:経済界
- ISBN:4766785096
- ISBN:978-4766785098