書評

最初に断っておくと、本書は料理本ではない。

本書のタイトルには「旨い」と銘打たれている。しかし、その「旨い」というのは決して舌で感じる味覚ではなくまさに仕事を通して得る、「生きることの旨さ」を意味している。

本書に出てくる3人の一流料理人―鉄腕・道場六三郎氏(和食/銀座「ろくさん亭」)、天才・長坂松夫氏(中華/西麻布「麻布長江」)、若き逸材・北岡飛鳥氏(フレンチ/南麻布「ル・カフェ プラス・アー」―はそうした生きることの「旨さ」を、筆頭に立って味わっていると言えよう。

外食コンサルティング業界のトップに君臨する永田雅乙氏が引き出す、彼らの「旨論」は我々、「食べる側」であっても心に響くものばかりだ。

例えば、道場氏の「料理も仕事も鮮やかな色より「旨色」を出す」という旨論。

これは、見た目を綺麗に見せるよりももっと大切なことがあるということだ。料理でいうなら食感などがそう。いくら鮮やかな色で目をひいたからといって、それが美味しくなければ料理としてはおしまいだ。

これは同時に仕事に通じる。体裁だけ整えても、中身がなければ意味はない。

本書には、こうした旨論が45出てくる。また、三者三様の哲学を持っているため、45のうちのどれか1つでもきっとあなたの琴線に触れる言葉が得られるだろう。

料理人は哲学者であり経営者でもある。
偉大なる「経営者」たちの言葉に耳を傾けてはいかがだろうか。

著者プロフィール

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永田雅乙[ナガタマサオ]

1976年東京都生まれ。
慶應義塾大学卒業。

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「永田ラッパ」の異名をとった映画会社「大映」の社長、 永田雅一の本家最後の男児曾孫として幼い頃より帝王学を叩き込まれる。

14歳より老舗イタリアンレストランの厨房を含め、様々な店に入り、社会経験と現場の仕事を学ぶ。

10代で「創作イタリアン」というコンセプトで初の店舗をプロデュースし、 大学卒業後フードビジネスプロデューサーとして活躍。

“現場主義”をモットーに国内外19カ国4,500店舗のコンサルタント実績を持ち、 現在、フードビジネス専門コンサルタント会社「ブグラーマネージメント」代表取締役社長兼CEO。外食産業に限らず幅広い業界から “人財教育”の部分で高い評価を受けている。

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関連書籍紹介

サービスのルールイメージ

書籍名:サービスのルール
出版社:明日香出版社
著者名:永田雅乙
価格:¥1,365
ISBN-10: 4756910688
ISBN-13: 978-4756910684

サービス業において、マニュアルを軽視してはいけないが、マニュアルに書いてあることだけを こなしているのは本当の意味でのサービスとは言えない。
「サービスに、全員共通のルール・マニュアルは必要ない、ルールがあるとすれば相手を笑顔にすることだけだ」 と本書の著者、永田雅乙氏は述べている。
そして本書もサービスのマニュアル的な本ではなく、いかにマニュアルから離れ、 自分なりのサービスを確立するか、ということに主眼を置いている。
その内容はサービス業に従事する人以外にも読んでほしいものばかりだ。

マニュアル通りに仕事をこなしているがどこか物足りない、仕事のプロになりたい、 そう思っている人が一皮剥けるためのヒントが、本書には余すところなく詰まっている。

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旨い仕事論/本イメージ

書籍情報

  • 書籍名:旨い仕事論
  • 出版社:ゴマブックス
  • 著者名:永田雅乙
  • 価格:1,365円
  • ISBN-10: 4777112195
  • ISBN-13: 978-4777112197

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目 次

  • まえがき
  • 第一章 和
  • 最強の鉄人、
    そして現代の名工 道場六三郎
  • 第二章 洋
  • フランス料理の新潮流、
    三ツ星レストラン修行最長記録
    保持 北岡飛鳥
  • 第三章 中
  • 22歳で総料理長に就任、
    天才中華料理人 長坂松夫
  • おわりに