だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第71回 「新版 原発を考える50話」

日本は諸外国と比べて、原子力発電の割合が高いことを知っていますか? 現在のわれわれには絶対に必要となっている電気。もちろん電気は必要なんですが、それをどうやって作っていくのが良いのか? 日本では協力に推進されてきた原発は、問題がないのか? この本は原子力発電に否定的な立場から、原発の問題点を探った本です。現実問題として、諸外国では原発離れが進んでいるといいます。しかし日本ではそういう話をあまり聞いたことがありません。原発にリスクが高いことは間違いありませんし、それを含めて、もっと知っておくことはいいことだと思いますよ。

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原発の本当のリスクとは?

福島原発の事故による放射性物質の飛散。電力供給量が低下し、大規模停電を予防するための計画停電。乳幼児の飲料水に注意勧告が出されたり、茨城県産のほうれん草に出荷制限がかかるなど被害は甚大で、原子力発電所への疑問の声も高まっています。

「新版 原発を考える50話」(岩波書店/刊)は、電力業界に批判的な目を向けているジャーナリストの著者が、原発にかかわる様々な問題について検討し、原発の問題点と電力業界の実情を平易な文体で解説した本です。

●著者プロフィール 著者の西尾獏さんは、以前は広告制作会社に勤務していました。 原発問題に関わるようになったのは、1973年に携わったある広告がきっかけでした。 その広告とは、真っ暗闇の中に止まったエレベーターのイラストに「たった今、電気が止まったら」というキャッチコピーが書かれたものでした。 その広告は、電力危機を理由に、原発の建設を促すための広告でした。

この広告は、発電所が建設される土地の人に向けたものではなく、電力を使う都市部の人に向けられたものでした。都市部の人を不安にさせ、原発建設反対する地域住民を敵視させるという目的があったのです。 西尾さんは、こうした電力業界のやり方に疑問を持ち、電力業界に造詣を深めていきました。するといろいろ問題が次々と表れてきたのです。

前々から現れていた、ニッポン原発の問題点

たとえば、電力業界のPR戦略について考えてみましょう。 電力業界はこれまで、あの手この手で原発の良い面ばかりをPRしてきました。

チェルノブイリ原発事故のあった、旧ソ連の共産党政府機関誌の科学部長は、1990年に次のような記事を書いています。 「大都市の近く、しかも、地震地帯にたくさんの原発をもつ日本の状況は奇跡のようである。日本にこんなにも原発がある原因は、住民に対する広報が行き届いているからだろう。」

原発が多い原因に、技術力でも広大な土地でもなく、PRだと評した背景には、どこの国においても、人々の原発に対する反発は強いものだということが見て取れます。

日本の原発PRにおいても、良い面しか見せず、安全性を強調し、不安材料となるものをひた隠しにしてきた業界の体質には不安を感じざるを得ません。

また、矛盾として感じてしまうこともあります。 電力業界は、エネルギー資源の枯渇を心配し、節電を呼びかけている一方で、電気の需要を増やそう、増やそうとしています。たとえば、オール電化の推進もそのひとつです。

みなさんはどう思いますか。

計画停電で数時間、電力の共有が止まっただけで、私たちはいつもどおりの生活はできなくなってしまいます。 原発の大事故、エネルギー資源の枯渇、どちらも人類にとって好ましい未来ではありません。限りあるエネルギーについて学び、自分にできること(たとえば節電)をしていくことは大事なことでしょう。

新刊ラジオ(2006/9/29配信)もぜひ聴いてみて下さい。

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新版 原発を考える50話

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日本は諸外国と比べて、原子力発電の割合が高いことを知っていますか? 現在のわれわれには絶対に必要となっている電気。もちろん電気は必要なんですが、それをどうやって作っていくのが良いのか? 日本では協力に推進されてきた原発は、問題がないのか? この本は原子力発電に否定的な立場から、原発の問題点を探った本です。現実問題として、諸外国では原発離れが進んでいるといいます。しかし日本ではそういう話をあまり聞いたことがありません。原発にリスクが高いことは間違いありませんし、それを含めて、もっと知っておくことはいいことだと思いますよ。