だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1482回 「これでわかった!!値段のカラクリ」

“国際値切りスト”の異名でテレビ・メディアで活躍中の流通ジャーナリスト、金子哲雄さんが、世の中の値段のカラクリを暴きます。あなたの“買い物”は、知らないうちに損、しているのかもしれません……。

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値段のカラクリをすっきり解説

● 著者プロフィール  著者の金子哲雄さんは、流通ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、ジャパンエナジーを経てコンサルタントとして独立。年商20億円未満の中小企業を集中的にコンサルティング行う。テレビ番組「ひるおび」や「がっちりアカデミー」などでは“国際値切りスト”の異名で活躍。お得な買い物術や、節約術を解説しています。

 この本は、「モノの値段」にスポットを当てて、金子哲雄さん独自の理論で原価を算出し、価格構造を解明しようとする一冊です。

 とりあげた分野は多岐にわたっています。牛丼チェーン・ファーストフードなど飲食業界、100円ショップなどの日用品、車・保険・マンションなど高価格帯のもの、そして海外ツアー・キャバクラ・ガールズバーといった趣味・嗜好品など。お金を払って買ったりサービスを受けたりするものの多くがカバーされていて、いろんな価格の構造がわかります。

たとえばこんなの。

「週1回は食べる“国民食”カレー。儲けていそうなチェーン店の実情は!?」

本書で取上げられている大手カレーショップチェーン「Cコイチ」(一部伏字になっています)は、金子さんによると、全国で1148店舗を構える業界最大手。1178店舗を構える「吉野屋」に迫る勢いなんだとか。

 「Cコイチ」にいったことがない方のために、システムをざっくりと説明します。 ポークカレーをベースとして、別料金でおよそ30種類のトッピングを加えることができます。辛さも好みで10倍まで調整できて、自分好みの味にできるのがウリとなっています。

さて、そんな「Cコイチ」を、金子さんが徹底分析しちゃいます。

Cコイチカレーのびっくりな原価は?

 まず、「ポークカレー」450円の中身を見ていきます。 (細かい計算方法は省いているので本書を参照してください)

●ライス1人前 300g  ……業務用の米60kg 1万7998円のものと推定して計算すると、42円。 ●(具の)豚肉 1皿あたり50g  ……1kg435円前後のものを使用していると推定して、22円。 ●ルウ  ……1缶で3050円の業務用のカレーペーストから類推して、1皿あたり30.5円。

合計94.5円。

450円の販売価格に対して、原価率は21%です。

飲食店のセオリーである原価率30%をきっちり下回っています。

 カレーは大鍋に作れるので大量生産が比較的簡単ですし、材料の原価も低いといえます。そして、金子さんの本に掲載されている調査によると、日本では1人あたり年に84回(月に7回)もカレーを食べているのだそうです。消費者のニーズが高く、原価率は低い。つまり、儲けやすいのです。だからこそ「Cコイチ」は、1000店舗を超える一大チェーンに成長したのでしょう。

 しかし、不思議なこともあります。ここでのテーマは、「儲けていそうなチェーン店の実情は!?」でしたね。カレーチェーンは色々ありますけど、牛丼チェーンのように激しいシェア争いはしていません。

 ゴーゴーカレーは28店舗。C&Cは19店舗。インデアンカレーは9店舗。「Cコイチ」の1148店舗に比べたらずっと規模が小さいです。これはなぜかというと、金子さんは、「おいしいカレーの判断基準がバラバラ」であることが最大の理由だと分析します。

どういうことなのでしょう?

Cコイチだけ店舗数が伸びた理由

 金子さんは、「大多数の人がおいしいと感じるカレーは、家庭で食べ親しんできた味に近いものだ」と消費者の動向を分析しています。「Cコイチ」のカレーは、長きに渡って売上トップを誇るハウス食品の「バーモントカレー」のルウがベースになっているといわれるため、家庭の味の延長線上にあるといえます。しかも、トッピングや辛さの調節が出来て、自分好みの味にカスタマイズすることもできます。

 つまり、「Cコイチ」は、多くの人が「美味しい」と感じる確立が高いカレーを提供しているのです。3日3晩煮込んだカレーよりも、世界中からスパイスを集めてきたカレーよりも、原価率をかけずに市販のルウを使ったカレーが、消費者が一番美味しいと感じる可能性が高いカレーだったとは・・・。

 話は原価の話からビジネスモデルや消費者分析の話になりましたが、この続きは金子節のユニークな切り口。「モト取れメニュー」の提案が載っています。

 「モト取れメニュー」とは、これくらい食べればモトが取れるというという食べ方です。でも、「Cコイチ」のカレーはそれが難しいのです。まず、ベースとなるポークカレーは、原価率が21%と低かったですよね。そして、もうひとつの視点であるトッピングですが、一般的にトッピングは客単価を上げるためのものなんです。250円のロースカツの原価はせいぜい30円ですし、200円のフライドチキンも原価は28円程度。チェーンとして一括で食材を仕入れているため、トッピングの原価率はどれも10〜14%に抑えられているそうです。

これは難しいです。

しかし、金子さんはついにトクできる食べ方を見つけたのです!

ココイチで損しない?食べ方

金子さんが目をつけたのが、卓上に無料で置いてある「福神漬け」です。これは、小売店で1袋150g入りで150円程度で売っているものですが、推定原価は14%ほど。金子さんは、卓上容器1ケース分ほどを山盛りにして、「福神漬けカレー」にすれば、カレーの原価率を高めることができるといっています。

 面白いのですが、妙な提案です(笑)。金子さんらしいというか。

 テレビで金子さんの活動を見てる方は、「金子哲雄さんって、色んなものの原価や、得するな買い方に詳しい人でしょ」くらいのイメージかもしれませんが、この本では、それに留まらず、テレビでは語りきれないこと・・・ビジネスモデルや収益性の話にまで、面白い語り口で切り込んでいます。酒の席でのネタにできたり、知的好奇心を満たしたいできる一冊でした。

これでわかった!!値段のカラクリ

2500年間語り継がれる論語(ひとつ前の新刊ラジオを聴く)

これでわかった!!値段のカラクリ

これでわかった!!値段のカラクリ

“国際値切りスト”の異名でテレビ・メディアで活躍中の流通ジャーナリスト、金子哲雄さんが、世の中の値段のカラクリを暴きます。あなたの“買い物”は、知らないうちに損、しているのかもしれません……。