最近は幾分和らいだが、それでも「不況」を叫ぶ声は依然として大きい。 今年3月期の決算では多くの企業が減収・減益に追い込まれたことは記憶に新しいが、このような状況でも、過去最高収益を記録したオリエンタルランドのような企業も存在するのが興味深い。
不況だというアナウンス通りに業績が落ち込む会社に、そんなのどこ吹く風とばかりに増収・増益を記録する企業。この差は一体何なのだろう、と思う人は多いのではないだろうか。
本書『バイトでも億稼ぐ 不況なのに元気のいい会社』に登場する8つの会社はいずれも、現在の状況においても業績を伸ばしている「元気のいい」会社である。誰でも名前を知っている大企業もあれば、そうでない中小企業もある。著者の大塚寿氏によると、これらの会社にはある共通項があるという。
それは「そこで働く人たちが主体的、能動的に活動していること」。 このような企業を作り上げるのは簡単ではないが、本書で紹介されているエピソードを読めばそれが不可能ではないことがわかる。
人材育成のキモとは一体何なのか、また自分の仕事観を考え直す意味でも、是非とも読んでみてほしい一冊だ。
(新刊JP編集部/山田洋介)
- はじめに
- 第一章 セブンイレブンのバイトはなぜ3カ月で経営を語るようになるのか?
- ・セブンイレブンに、数多くの「仮説」が存在する理由
- ・「仮説→実行→検証」のサイクルを自分で回せると仕事はおもしろくなる
- ・発注端末(GOT)がバイトを三カ月で一人前にする
- ・イトーヨーカ堂からはじまった「機会ロス」をつぶす情報システム
- ・「発見、工夫、手ごたえ」=効力感が、仕事の「やりがい」を生みだす
- ・「お客さまに喜ばれると嬉しい」が、「効力感」の原点
- 第二章 ディズニーランドのキャストはバイトなのになぜ一流のおもてなしが可能なのか?
- ・この不況の中でディズニーランドだけが元気だ
- ・ディズニーランドの「一人勝ち」を可能にする優れた戦略
- ・「人が喜ぶ」姿を見て嬉しいという前向きの価値観が引き出される
- ・「手ごたえ」をものにしたとき、仕事にやりがいが生まれる
- ・ブライトサイドのDNAを引き継ぐ職場
- 第三章 なぜリクルートのバイトは1カ月で経営者に会えるようになるのか?
- ・リクルートのバイトは、入社した日から電話アポを取る
- ・バイトが一カ月後には、社長アポの電話を入れる
- ・なぜ、社長にアプローチするのか
- ・伝説の物語がバイトのやる気を引き出す
- ・営業の醍醐味は、人の人生を劇的に変える出会いがあること
- ・リクルートの「伝説」と「文化」がバイトを突き動かした
- 第四章 カクヤスのドライバーはなぜ配達後に仲間の助っ人に向かうのか?
- ・逆風の酒販業界にあって年商を一六倍に伸ばした「カクヤス」
- ・なぜ、自主的に仲間を助けようとする社風が生まれたのか
- ・初めて自分の仕事から手ごたえと誇りを味わう
- ・「君に任せる」が「助っ人」文化を生んだ
- 第五章 109のバイト店員はなぜ月五〇〇万円超も売ることが可能なのか?
- ・なぜ、109だけが売上げを倍増させることができたのか
- ・高い共感能力で売る109の「お姉さん」店員
- ・自分の仕事を「好き」になれば、モチベーションが満たされてくる
- 第六章 松戸の新聞配達員はなぜお客さまに感謝されて34億円も売上げられるのか?
- ・クリスマスイブのサプライズな訪問者
- ・売上高三三億六千万円の新聞販売店
- ・大手企業顔負けの教育システム
- ・椎名の日報は、まさに「発見、工夫、手ごたえ」=効力感
- 第七章 なぜ製鉄会社が日本初の金融工学
- ・システムを作り出せたのか?
- ・蓄積したシステム開発のノウハウで事業を興す
- ・「さすが、新日鉄の技術者は違う」と言わしめたい171 197
- 第八章 ローソン尾山台駅北店のおでんはなぜ日本でトップクラスの売上げなのか?
- ・小さいのに全国でもおでんの売上げがトップクラスの店
- ・常連客一人ひとりの顔を思い浮かべておでんを仕込む
- あとがき