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新刊JPトップ > 特集 > 新刊JP 大塚寿 『バイトでも億稼ぐ 不況なのに元気のいい会社 』

バイトでも億稼ぐ 不況なのに元気のいい会社

インタビュー

―本書『バイトでも億稼ぐ 不況なのに元気のいい会社』では、不況の中でも元気のいい会社を取り上げていますが、 これらの企業に共通する要素がありましたら教えてください。

大塚「まず、上司から言われたことをこなしているだけでなく、従業員一人ひとりが仕事を通じて何かを発見し、 それを工夫して応用している点です。

そして何か成果が出るたびに小さな手ごたえを掴み、 さらに自分の頭で考えて改善を加える。そのサイクルを持っていること。 もう一つはそのサイクルが個人個人から職場全体へと波及している点だと思います。」

―本書を執筆するにあたって、数多く取材をされたと思いますが、 何かエピソードがあるようでしたら教えていただきたいです。 また、取材を通して大塚さんご自身にとって新しい発見だった、ということがありましたら教えてください。

大塚「なんといっても松戸の新聞販売店です。正直なところ、新聞販売店に入ってくる人というのは、 なりたくてこの仕事を始めたというよりも流れ着いた感じの人が多く、 業務へのモチベーションも高くない人が多かったようなのですが、 その販売店のオーナーの方はそういった業界の体質を変えたかったそうです」

―何らかの挫折感を持って業界に入ってくる方が多いということが想像できますが、 そういった挫折感を取り除くのはものすごく大変だったのでしょうね。

大塚「挫折感や無力感を取り除くには、人から感謝される体験が重要で、 逆にそういった体験がないと、体力的にきつい新聞配達の仕事は続けられないそうです。

その販売店で、クリスマスの日に親からあらかじめプレゼントを預かっておいて、 指定された時間にサンタクロースの衣装を着てプレゼントを届ける 、ということをやったそうなのですが、子供は大喜びだし、親からもすごく感謝をされた。 最初はつまらなそうに仕事をしていた人も、それが転機となって徐々に変わり始めたそうです。

失礼な言い方かもしれませんが、年収でいったら300万円にも満たない方々が、 会社を愛して、お客様に喜んでもらうことに知恵を絞っているというお話を聞いて、 私自身、自分の仕事観がはたして本物なのかどうか不安になりました」

―顧客(または仕事の依頼主)が望んでいる以上の仕事をする、 ということが本書のキーワードのように思えますが、そのような仕事を続けていくために、 働き手はどのようなことを心がけるべきでしょうか。

大塚「まずはお客様が自分に何を期待しているか、ということを徹底して考えることです。 お客様の期待を理解したら、今度はその期待に応えるわけですが、大事なのは100%応えきること。 最後はその期待を超えていかなければなりませんが、どういった点で期待を越えるのか、 ということを真摯に考え続けることも重要だと思います」

―リクルートの章は大塚さんご自身のエピソードでしたが、 大塚さんご自身がリクルートのアルバイトを通して得たものの中で一番大きかったものは何ですか?

大塚「私は営業職だったのですが、二つの大きな発見がありました。 一つは売れる営業マンを演じることを覚えたことです。売れる営業になるのではなくて、演じる。

つまり自分のスタイルを押し付けるのではなく、相手に合わせて自分を変えるということです。 もう一つはスイッチのオン・オフの感覚を得たことですね。 具体的には、商談をする応接室のドアをノックする瞬間に、自分がタフ・ネゴシエーターに変身するという感覚です。 自己暗示なのか気持ちの切り替えなのかはわかりませんが、今でもその感覚は持っています。 こういったことに気づいた時に、営業の核心をつかんだ気がしたのを覚えています。」

―リクルートには先輩が作った様々な「伝説」が存在するとのことでしたが、 本書に収載されていない「伝説」がありましたら教えていただけませんか?

大塚「話に尾ひれがついているのかもしれませんが、 不況で営業の目標数字を達成するのが難しい状況の時に『何を売ってもいい』という指令 が出たことがあるそうです。その時に(会社の)牧場の牛を売って数字を達成した方がいる、 という話は聞いたことがあります」

―大塚さんにとって「仕事ができる人」というのはどんな人ですか?

大塚「仕事に追われるのではなく、仕事を追いかける人。 自分からいろいろなことに興味を持ち、ゼロから仕事を作って利益を上げていける人です。 そう考えると仕事が早いというのは一つの条件になると思います。 あとは人から頼まれたことに素早く対応できる人ですね。周りに忙しい人がいたら、自分の方から手伝える人。 そういう人は一緒に働いている人に安心感を与えますよね」

― 一人ひとりが自分の頭で考える習慣のある企業は強いということが本書を通して伝わってきましたが、 そのような企業を作っていくためには、経営者または現場の管理者はどんなことをすればいいのでしょうか。

大塚「とにかく仕事を任せることが大事です。 同時に、任せた仕事に対してきちんとフィードバックするなど、ケアを怠らないこと。 部下との信頼関係が大事になってきますが、信頼関係というのは最初からあるものではなく、 何かをきっかけにして生まれるものです。ですからまずは任せてみてほしいですね。 有能だと言われる経営者や管理者に共通する特性はそこにあると思います。

また、『こいつに仕事を任せたのは俺だから、結果に対する責任も自分にある』と 腹をくくれるかどうかが有能な管理職かそうでないかを分かつのではないでしょうか。」

―現在の社会において、企業とそれに所属する一個人の関係はどうあるべきだとお考えですか?

大塚「大きなテーマですよね。会社や職場のベクトルと自分のベクトルが合っていれば幸せですが、 なかなかそうはいきません。

そういった時に、会社のベクトルと自分のベクトルの間に補助線を引くという考え方があります。 具体的に言うと、会社は利益を追求して、自分は『おもしろいことがしたい』と考えているなら、 『おもしろいことをしながら利益がでる』という方向に考えてみるのが重要だと思います」

―最後に、大塚さんが本書を通して伝えたかったことを教えてください。

大塚 「不況不況の大合唱の波に流されてはいけないということ。 確かに現在は大不況なのですが、メディアの報道などを見て不況だと思いこんでしまう人は多いと思います。

しかし新聞をよく読んでいると、こんな状況にも関わらず過去最高益を記録したという企業や、 増収増益を続けている企業も存在するんです。不況でもやり方次第で元気のいい会社になれるということを言いたいです。」

著者プロフィール

1962年、群馬県東吾妻町生まれ。 中央大学経済学部国際経済学科卒業後、(株)リクルートINS事業部に勤務。 1991年5月より渡米、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)にてMBA(国際経営学修士号)を取得。 現在は、マーケティング・コンサルティングおよびオーダーメイド企業研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。 また、(株)ゼロインのリレーション・ドライビング・プログラム(REDS)のプロデュース、 (株)宣伝会議の広告営業職養成講座の講師としても活躍中。

著書に、『リクルート流』『リクルート式』『転職力(共著)』 『売れる営業、売れない営業』『法人営業バイブル(共著)』(以上、PHP研究所) 『部下のやる気を2倍にする法(共著)』(ダイヤモンド社)『オーラの営業』シリーズ(Nanaブックス)がある。