新刊JPトップ > 特集 > 『PHPサイエンス・ワールド新書』
立ち読みをみる
書籍情報

書籍名:数学が歩いてきた道
著者名:志賀 浩二
出版社:PHP研究所
価格:840円
ISBN-10:4569773060
ISBN-13:978-4569773063

書籍を購入する

数学というと、論理の中心にあり、極めて冷徹なイメージを持っている人も多いだろう。哲学や社会学のように、誰もが参加でき、そこで1人1人の答えを導き出せる世界とは間逆の、1つの答えがそこには必ず存在しそれ以外は一切認められないという絶対的な部分に、そういう色を感じ取ってしまうのかも知れない。

しかし、1つの答えを出すためにひたすら追究し、その答えを弾き出したときの数式は“美しい”という言葉で形容されることが多い。そして、その美しさの中には、それまでその答えに挑んできた様々な研究者たちの知恵や努力も込められている。

本書は数学が歩んできた2000年あまりの歴史をたどる、数学の入門書だ

。 数学者たちが挑んできた数々の謎―「円周率」や「ピタゴラスの定理」、「オイラーの解」「テイラー展開と因果律」などを、時系列ごとに追いながら、数学者たちの軌跡を辿っていく。

本書を読んでいくと、古代ギリシア時代にはじまり、現在までに至る数学の旅がなんともスリリングで、いかにロマンに溢れたものであるかが分かるだろう。

数学が苦手!という人でも、例えば「今の『1、2、3』というローマ数字はいつごろから世界で通用するようになったのか」という疑問に答えてくれるなど、コネタもバッチリなので、是非一読してみて欲しい。

(新刊JP編集部/金井元貴)

【まえがき】
中学校や高等学校で学んだ数学の細かい内容は忘れてしまっても,数学にまつわる風景をふと思い出すこともあります。先生が黒板に図や式をたくさんかかれてから,振り向いてゆっくりと説明をはじめられたときの先生の明るい顔や....

志賀浩二 (しが・こうじ)

1930年新潟市生まれ。東京大学大学院数学系修士課程を修了。東京工業大学名誉教授。「数学の啓蒙」に目覚め、精力的に数学書を執筆している。

シリーズをまるごと書き下ろした著作に『数学30講シリーズ』(全10巻、朝倉書店)、『数学が生まれる物語』(全6巻)『数学が育っていく物語』(全6巻)『中高一貫数学コース』(全11巻)『算数から見えてくる数学』(全5巻、以上、岩波書店)、『大人のための数学』(全7巻、紀伊國屋書店)などがある。 ほかの著作に『無限のなかの数学』(岩波新書)、『数学の流れ30講(上・中・下)』(朝倉書店)などがある。
目次

はじめに

序章
聞いてみたいこと

第1章
深い森へ
1 円周率
  円周率πとの出会い
  円周率πの値に迫る
  数の無限性と神秘性

2 ピタゴラスの定理
 万物は数である
 数の神秘の扉を開く
 √2?の値に迫る

3 平行線の公理
 ユークリッド『原論』
 平行線の公理
 後の数学者たちの試み

4 ツェノンの逆理
 古代ギリシアの哲学者たち
 ツェノン登場
  一瞬とは? 時間とは?

第2章
近世に向けての旅立ち
文明の流れのなかで

1 中世から近世へ
 文化はイスラムからヨーロッパへ
 ルネッサンスの4つの発明

2 火薬と大砲─運動に向けての視線
 命中率を高めるために
 力学的世界の解明へ─ガリレオの登場

3 コンパス
  大航海時代へ
  天文学の発達とケプラー
  対数と対数表の発見

4 活版印刷
 グーテンベルクと『42行聖書』
 コペルニクスの科学革命
 常用対数の導入

5 時計
 日時計・水時計・砂時計
 機械的な時計の発明
 時間を数学はとりこめるか

第3章
ヨーロッパ数学の出発

1 デカルトの‘方法’
 デカルトの『幾何学』
 デカルトの‘方法’の意味
  時間と向き合う数学

2 ニュートンの『プリンキピア』
 ニュートンは「時間」をどう見たか
 ニュートンの「時間」と運動法則

3 微分・積分の創造─ニュートンの流率
 ニュートンの流率の取り出し方
 流率の比から微分へ
 流率と面積の関係

4 ライプニッツの無限小量
 ライプニッツは運動をどう見たか
 モナドの哲学
 微分と積分の記号

第4章
数学の展開

1 開かれた社会へ
  アカデミーの設立へ
  バーゼルの問題
2 バーゼル問題の解と『無限解析』
  オイラーの解と証明
  『無限解析』から

3 オイラー 無限のなかの算術
  オイラーが見ていたものとは
  三角関数の巾級数展開
  無限に向かう数学

4 無限小量への批判
  バークレイの批判文
  18世紀数学を蔽う厚い雲

第5章
関数概念の登場

1 変化するもの
  啓蒙の時代、『百科全書』派
  数学から時間が消えたとき
  関数とは何か

2 関数、グラフ、極限
  関数をどう見るか
  抽象的な視点
  具象的な視点─関数をグラフを通して見る
  近づくもの─極限概念

3 微分─関数への作用
  導関数・微分演算・高階導関数
  無限小の亡霊が再び

4 積分─関数のひろがり
  グラフのつくる面積を微分すると
  微分・積分の基本公式を導く

5 微分と積分─数学の2つの方向
  微分はどこへ、テイラー展開
  積分はどこへ、関数の抽象化

第6章
解析学の展開

1 テイラー展開と因果律
  テイラー展開が成り立つ関数とは
  18世紀100年を経た「大きな視点の変化」
2 複素数
  複素数・複素平面・複素数のかけ算
  複素変数の関数とは何か

3 正則性
  複素変数の関数と微分可能性
  正則関数の基本定理
  複素数の世界で成り立つ因果律

4 波立つ変化
  フーリエ展開
  変化する世界像は2つの方向へ

あとがき─数学の歩みをふり返って