愛嬌力トレーニング監修
祐川京子(ゆかわ きょうこ)
株式会社サンブリッジ 投資事業部 プリンシパル。
第一生命の一般職として十数年勤務。事務職や法人営業を経て、営業スキルの研修講師に。生保レディや異業種のビジネスパーソン約4,000名に向けて講演・研修を実施。
2006年4月、株式会社サンブリッジに転職。現在、ベンチャーキャピタリストとして活動中。
著書に『夢は宣言すると叶う』(中経出版)。本書協力者の本間正人氏との共著書に『ほめ言葉ハンドブック』(PHP研究所)、『人に好かれてうまくいく「愛嬌力」』(大和書房)ほか。
祐川京子のブログ
http://blogs.itmedia.co.jp/yukawa
―2006年に出版された『ほめ言葉ハンドブック』(共著:本間正人氏、PHP研究所刊)は、「ほめ言葉のボキャブラリー本」として類書のないベストセラーになりました。今回の『選ばれる人財!愛嬌力トレーニング』はどのような内容になっているのでしょうか。
祐川京子さん(以下、祐川)
『ほめ言葉ハンドブック』が「ほめ上手になる本」としてご好評いただいたとで、今度は「ほめられ上手になる本」を書いてほしいというリクエス トを多くの読者からいただきました。
そこで、「ほめられ上手な人の特徴」は「愛嬌力のある人」という考えから、既刊書の『人に好かれてうまくいく「愛嬌力」』(共著:本間正人氏、大和書房刊)や今回書かせていただいた『選ばれる人財! 愛嬌力トレ-ニング』が生まれました。
本書は58事例を一問一答式にまとめ、愛嬌力がある人とない人の差を体感できる作りになっています。「愛嬌力」の重要さは理解しているけれど、具体的にどうすればいいのかわからないと感じている人が多い中、どのようなトレーニングをすれば「愛嬌力」が身につくのかということを明らかにしています。
―祐川さんが「愛嬌力」がビジネスの現場でも重要だと気づかれたのはいつ頃のことですか?
祐川
6、7年前です。大手生保に勤務していた頃、研修講師として数千人もの生保レディの営業力向上研修に取り組んでいました。その際、営業成績と愛嬌力に相関関係があることに気がつきました。女性のセールスだと、年齢や容姿が重要だと思われがちですが、ほとんど関係ありません。学歴とかIQでもなく、愛嬌力の高い人が着実に成績を上げていましたね。
―かなり独特な着眼点ですね。
祐川
例えば、普段の買い物ひとつ取っても、世の中には唯一絶対の商品というものはほとんどありませんよね。
日頃、洋服などを買う時、ブランドやデザインが同じで価格にも差がない場合、どこのお店から買いたいかといったら、 感じのいい販売員さんがいるお店で買いたいと思うでしょう。買い物は一例に過ぎませんが、商品の質が拮抗するほど売り手の愛嬌力が大事になるのだと思います。
―「愛嬌力」がある人とない人とではどのような違い(差)が出てくるのでしょうか?
祐川
先ほどお話した営業成績もそうですし、身近なところだと、飲み会やイベントに呼ばれるか呼ばれないか、ということでも違いが出てきます。何事にも定員や参加者の相性があるので、誰でもチャンスは平等にあるというわけではありません。
例えば、人脈を広げられる可能性が大きいイベントに、仲間を3人だけ誘えるとしたらやはりかわいげのあって親しみやすい人を誘いますよね。「愛嬌よりも、実力で勝負したいという人もいるかもしれませんが、自分と他人の実力に大差ない場合どうしても「愛嬌力の差」が重要になってくると思います。もし、実力があったとしても、勝負する機会を得るために愛嬌力が必要なことが多いものです。
―こういったことが何年も積み重なったらものすごく大きな差になっていくでしょうね。
祐川
そうですね。ちょっとしたパーティーでも、そこで知り合った人とビジネスに発展するとか、ヘッドハンティングされるなどということがいくらでもあります。日頃から、イベントなどに誘われやすいかどうかということでも、何年も重なるとすごく大きな違いになると思います。
―「愛嬌」は天性のものであるが「愛嬌力」は後天的なものだと、本書で書いていらっしゃいます。「愛嬌力」を身につけるためのコツがあれば教えていただけませんか?
祐川
どんな場面でも「自分が若手」という心構えで行動することではないでしょうか。年少者は相手に対して、あるいは集団の中で、こまごまと気を配って立ち回ることを期待されますが、自分が年少者だとしたらどういう行動を取るのが適切だろうか、と考えて動くことは「愛嬌力」を鍛えるトレーニングとして有効です。
ただ、事前に学習していないとできないこともあります。本書の中に、「商談を終えてタクシーに乗り込む時、丁寧に玄関まで見送りに来てくれた取引先担当者に対してどう対応するか」という問題がありますが、そういったことは知識がないとわからないことです。本書では様々なケースを紹介していますが、「愛嬌力」のある人を観察してみるのも勉強になるのではないでしょうか。
―仕事では、どうも好きになれない人や反りが合わない人であっても避けて通るわけにはいかない状況があります。そのような相手と接していくにはどうすればいいのでしょうか。
祐川
その人の得意技を何か1つ見つけて、相手がその得意技を発揮できる場面をつくってみるといいと思います。これは、自分がその相手に「ありがとう」を言える場面をつくるということです。
例えば、クレーム処理が得意な上司がいたとします。契約を取り付けるようなネゴシエーションは不得手だけれど、お詫びがすごく上手な上司です。
そういった場合、何かトラブルがあって先方に謝らないといけない時に、本来は自分だけでも解決できる些細なトラブルだとしても、あえてその上司に同行をお願いする。うまくトラブルが収束して、「ありがとうございます。お蔭様で助かりました」と言えたら、その上司との信頼関係は深まると思います。
―現在、若い社員とどう接していいかわからない、という管理職の方々が増えているようです。そういった方々にメッセージをお願いします。
祐川
今の若い人は、マニュアルに従うのは得意なものの、臨機応変な対応は苦手な傾向にあるようです。よって、目的やアクションプランを詳しく示すことが大事です。もう一つは、若手に媚びる必要はないと思います。自分がかっこいい生き方をしていれば部下は自然と敬うようになります。言葉ではなくて自分の態度を示すということも大事なのではないでしょうか。
―最後になりますが、今回の『愛嬌力トレーニング』ですが、どのような方に読んでほしいですか?
祐川
仕事上、私は年間1,000人以上のビジネスパーソンにお会いする機会があります。そこで感じることですが、ビジネススキルの高い人ほど向上心も高く、読書やセミナーで勉強して更にデキる人になります。実際に、『ほめ言葉ハンドブック』も「ほめ上手」な人ほど読んでくださる印象を持ちました。一方で、ビジネススキルが高くない人が学ばずにいるので、デキる人との差がどんどん開くという傾向があります。
本書は、既に愛嬌力のある人のパワーアップに役立つとともに、「なかなか仕事がうまくいない」「努力しているのに自分だけ報われない」と感じている人が、その原因を探る上でも有効な一書だと自負しています。一問一答式で各項目を短時間で読める、取り組みやすい内容ですので、多くのビジネスパーソンにぜひ読んでいただきたいです。
◆取材後記
ビジネスシーンでの「愛嬌」について実に冷静な目で観察されていた祐川さん。実体験を交えて的確に「愛嬌力」の本質について説明してくださり、取材陣一同は納得するばかり。
本書『選ばれる人財!愛嬌力トレーニング』は好評発売中。自分は大丈夫と思っているあなたも、最近人付き合いが今一つ、という方もぜひ本書を手にとって、自分のコミュニケーションや礼儀作法を見直してみてほしい。知らず知らずのうちに「かわいくない奴」と思われていたことに気がつくかもしれない。
(インタビュアー・記事/山田洋介)
