ここでは、『情報は「整理」しないで捨てなさい』著者の奥野宣之さんに、本書の特徴や内容、さらには情報との付き合い方まで様々なことをインタビュー。参考になる話ばかりなので、是非読んで欲しい。

1.奥野さんの著者である『情報は1冊のノートにまとめなさい』が現在では30万部を超える大ベストセラーになりました。そういったなかで今回、初めて奥野さんの著書を読まれる方もいるかと思います。改めて、奥野さんのプロフィールやご活動内容を教えていただけますか?

奥野「僕はもともとは専門新聞の記者です。ずっと企業や行政のニュース記事からトップへのインタビュー、イベントの告知、レポート、ルポなど情報を取っては書くということを繰り返してきました。2008年に『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)という本を書いたのをきっかけにフリーランスになりまして、現在は、ビジネス系の記事や書評、講演、本の執筆などの活動をしています。『面白くて役に立つ本を書く』がモットーです」

2.新刊『情報は「整理」しないで捨てなさい』は、どういった方、どういった職種の方が読むべき本なのでしょうか?

奥野「まずは、情報の扱いに慣れていない人ですね。『一から十まで何でもメモしたり、会議を全部録音したり、書類をきっちり取っておかなきゃならない、でもできない』と悩んでいたり、また肝心なメモをなくしたりする人。
ふたつ目のタイプは、情報整理に疲れている人です。職場でも家でもファイルを閉じたり開いたり、メモを引っかき回していて、うまくいっているんだけど「なんでこんなに忙しいんだろう」と思っているような人。
本書の目的は、このような「情報整理」の幻想に囚われている人たちに、本当に効率的なインプットの仕方やコツを知ってもらい、仕事の成果で差を付けられるようになってもらうことです」

3.この本を読むことで、どのようなビジネスシーン・生活シーンで役に立つとお考えですか?

奥野「まず仕事で扱う情報量や心理的負荷をガクンと減らすことができます。デスクワーカーの仕事は、ほぼ情報のインプットとアウトプットで成り立っているわけですが、捨てることで「入」を減らせば、「出」のためにしなければならない作業や考えなければならないことはぐっと絞り込めます。
次に、アウトプットの質を変えることですね。入りを絞り込むことができるようになれば、これまでは気が回らなかった情報ソースに触れたり、新しい趣味を始めたりして体験や知識のバリエーションを増やすことができます。そうすれば、これまでにない発想やアイデアが出るようになって、アウトプットにも他の人との「違い」を出せるようになります」

4.今回の本のキーワードである「戦略的インプット」とは、どのようなものなのでしょうか?

奥野「アウトプットに違いを出すことをめざす場合に必要になってくる『情報との付き合い方』、心得やコツとも言えます。『自分の考え』はゼロから湧いてくるものではなく、ほとんどはインプットしたことへの反応だったり、見聞きしたもの、読んだもの『言い換え』です。だから「入」は意外と重要なのです。「出」=アウトプットをエッジの効いたものにしようとすれば、まず「入」=インプットから戦略性を持っておかないといけない。その技術を『戦略的インプット』というメソッドにして解説しています」

5.今回の本のテーマは「情報を捨てる」ことにありますが、「捨ててもよい情報」とはどのような情報のことを指すのでしょうか。

奥野「ひとことでいえば『アウトプットの役に立たない情報』ですね。たとえば会議を2時間しても、最終的にできる書類に盛り込まれる情報はごく一部ですね。盛り込まれない部分が『捨てた情報』です。捨てる理由には、もう知っているとか、間違っていそうだとか、まだ確定していないとか、難しすぎるとか、いつでも参照できるとか、いろいろな要因で判断します。
会議にいたすべての人の発言など、もしあらゆる情報を等価に扱っていたら、官僚が作った書類みたいなアウトプットになってしまいますね。だから、普通は、メモや資料をオフィスに持って帰って、じっくり料理するわけです。
これに対し、本書では、持ち帰ったり、腰を据えて分析したりしないでいいよう、情報に接した瞬間に、その場で、カタをつけることを勧めています。それが戦略的インプットとして説明した技術です」

6.情報を捨てなければならなくなった背景には、やはりインターネットの影響があるのでしょうか?

奥野「インターネットに限らずIT技術の影響が大きいでしょうね。技術革新によって、現代では情報の「量」を増やすのが、あまりにも簡単になったので、誰もがそちらに流されてしまうのです。
たとえば、プレゼンテーション用のソフトが普及する前は、講演のレジュメといえば、たいてい話すことの項目だけを並べたペラ1、2枚程度でした。ところが、最近では何十枚ものスライドのコピーが、ご丁寧に製本までして配られる。
ただデータを割り付けて印刷するだけだから、発信者が何も考えずに情報量を増やしてしまうわけですね。ウェブもページ数という制約がないので、減らす努力はされません。新聞も面数は増える一方。サイトもブログも増え続けています。
というわけで、発信者がむやみに情報量を増やすせいで、受信者側で、「捨てる努力」が必要になったのです」

7.インターネットが普及してきたことにより、いつでも簡単に大量の情報が得られるようになり、便利さも向上しました。今後、わたしたちが、インターネットをはじめとしたメディア(新聞やテレビ等)と付き合っていく上で、注意すべき点などはありますか?

奥野「ごくかいつまんで言うと『諦めが肝心』ということです。
ネット検索でリンクをたどっていくと、終わらなくなることからもわかるように、情報というものは放っておくとねずみ算式に増殖していくものです。それを追いきろうったって無理です。
本の中でも『目をつくる』と言いましたが、ぱっと見た瞬間ピンとこない情報は「縁がない」と思ってすっぱり切り捨てて行く方が、効率的だし気持ちも楽です。それに自分の視点を活かしたユニークなアウトプットにつながります」

8.最後になりますが、新刊JPの読者の方に向けて、コメントをお願いいたします。

奥野「この本は『情報は、闘って制圧するより、上手く手なずけて、刃向かってこないようにする方がいい』という考え方で書きました。
『情報整理』にお悩みの方は、ぜひ手に取ってみて下さい」


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