だれかに話したくなる本の話

今、変わりつつあるお墓の形。どんなお墓が求められている?

生前整理や相続、エンディングノート、お葬式など、自分の人生をどのように締めくくるかを考える「終活」の中で、重要なのにあまりフォーカスされないのが「お墓」だろう。

「お墓」というと先祖代々受け継がれ、これからも承継されていくものというイメージが強いが、家族観の変化や、移動が活発になったことから、今、新たなお墓の形が求められているという。

今回は新たなお墓の形として注目される永代供養墓について解説をしている『令和時代のお墓入門』(幻冬舎刊)の著者で株式会社エータイの樺山玄基さんに現代のお墓事情について語っていただいた。

(新刊JP編集部)

■今、変わりつつあるお墓の形。どういうお墓が求められているのか

――『令和時代のお墓入門』についてお話をうかがいます。まず、本書を執筆した経緯から教えてください。

樺山:私が代表を務めるエータイは永代供養墓を専門とした事業を10年以上行っていますが、この10年でもお墓の形、あり方といったものが大きく変化しています。そうした変化や、新しいお墓の形について書いている本がなかったので、お墓に対する啓発の意味も込めて執筆させていただきました。

「終活」という言葉が広く定着していますが、その中でお墓についてはあまりフォーカスされていません。お墓も終活で考えておくべきことの一つだと思いますので、その点についても知っておいていただきたいですね。

――おっしゃる通り、終活の中で相続や葬式などはよく出てきますが、お墓についての情報はあまり出てきません。なぜ終活においてお墓の話題はのぼりにくいのでしょうか?

樺山:お墓って建てるときにはお金がかかるものですが、金融資産ではないですし、人に売買できたりするものではないというのが理由の一つとしてあるのかなと思っています。それにお墓は霊園であったり、お寺に相談すれば解決するというイメージもあります。

ただ、実際に相談をするにしても、センシティブな話題であることもあり、なかなかしっかり確認できないということもあるはずです。また、宗教法人が絡んでいて情報がうまくやり取りできないこともあるようで、総じて面倒だな、何が問題なのかわからないんだよねといったことがお墓を話題から遠ざけてしまう一因になっているのだと思います。

――家族が亡くなった際に、葬式はその業者と打ち合わせをしたりしますけれど、お墓はどのタイミングで誰と話をするのでしょうか。

樺山:これまでであれば、自分の家のお墓がある方が多かったので、お葬式が終わったら家のお墓に入れようとなっていましたが、近年は故郷から都心に移り住んで、そこで亡くなったときに本家のお墓には入れないし、入るお墓がないという方が増えています。

ただ実際、お墓について考えるのはその方が亡くなったタイミングであることが多いですね。そこからお墓を建てるのにだいたい200万円もかかることを知って驚くというようなことも起こるわけです。今は、お金ができてお墓を建てるまでは遺骨を家に置いておこうという方が都心部だと多くなっています。

――家族の中で終活の一つとしてお墓について話すのはだいたいどのタイミングが良いと思いますか?

樺山:元気なうちに、ということが一番なのですが、なかなか話を切り出すのは難しいかもしれません。なので、お墓参りでみんなが集まったときに話してみてはいかがでしょう。また、みんなが集まって話せる場を積極的に作っていきたいと当社は考えています。

――なるほど。確かにそういうところで話題作りができるといいですね。本書では「永代供養墓」というお墓について詳しく解説されています。この永代供養墓とは一体どんなお墓なのですか?

樺山:これはお寺が永代、つまり永きに渡って供養していく、管理していくお墓ということですね。費用に関しては基本的に年間の維持費はかからず、最初に供養料をお支払いしていただくだけです。また、基本的には従前の宗旨宗派問わずに入れるのも特徴です。つまり、誰でも入ることができるお墓です。

――お寺さんが代わりにお墓を管理してくれるのが「永代供養墓」の最大の特徴といっていいのでしょうか。

樺山:そうですね。永代供養墓は、お寺以外では絶対に成立しないお墓とも言えます。

――「永代供養墓」にはどのようなお墓があるのでしょうか?

樺山:まずはいろいろな人が一緒の空間に入る合祀タイプのお墓から、一人一人、もしくは一組ごとに部屋を区切って納骨をするいわゆるマンションタイプ、あとは樹木葬タイプも人気のお墓の一つになっています。

――これまでの「お墓」は承継を前提としていたところがあると思います。でも、永代供養墓はそういうものではないのですか?

樺山:はい、そうです。一般的には個人単位で入るものです。ただ、子どもたちへの承継はしないけれども夫婦で入りたいですとか、先の世代まで考えたくないけれど自分たちと子供世代まででお墓を使いたいといったニーズが出てきまして、そういう場合はマンションタイプの個別墓に入っていただくという形になります。また最近はペットと一緒に入りたいというご意見も増えてきています。一般墓と違うのは、「区切りをつけて入ってもらう」という点です。区切りというのは、一般墓でいう先祖代々だとかいうのは誰が入っているの?という状態でなく、誰が入っているのか明確にするといったことですね。

――新しいお墓の形だなと思いながら、本書を読ませていただきました。やはりお墓は先祖代々というイメージが強いので。

樺山:そうですね。やはり人の移動が活発になったこと、あとはコスト面においても、一つの墓を維持する時代から変わってきているのではないかと思います。また、家族の形も変わってきていますよね。そういうお墓の継承がしにくい課題にもこの永代供養墓は対応できるのではないかと考えています。

――金額的な面でいうと、先ほど通常のお墓だと200万円はかかるというお話をされていましたが、永代供養墓の場合はどのくらいかかるのですか?

樺山:一般墓地のお墓よりも安い傾向にあります。もちろん見栄えですとか、管理がしっかりしている永代供養墓については、割高になってしまうこともあります。でも、基本的には一般墓と比べて安価ですね。

相場でいいますと、私が知る限り一番安い永代供養墓は5千円からですね。これはみんな同じ場所に入る合祀タイプです。ただ、しっかりと管理や供養されているのかは分かりません。個別に入る、もしくは複数人で入るマンションタイプの永代供養墓ですと高めです。30万円の墓もあれば、100万円の墓もあります。最近注目されている樹木葬も同じくらいの相場感ですね。

――なるほど。やはり自分がどんなお墓に入りたいのかについて、金額的な部分、形式的な部分踏まえてちゃんと伝えておくことがいいのかなとお話をうかがっていて思いました。

樺山:永代供養墓の話をさせていただいていますが、もちろん、一般墓でもいいと思います。今、お墓の選択肢も広がっているというのは事実ですから、その中で自分や家族に合ったお墓を選んでいただくのがいいのかなと思いますね。

(後編に続く)

令和時代のお墓入門

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