だれかに話したくなる本の話

直木賞作家・三浦しをんさんが語る“作家の生活”―『天国旅行』刊行インタビュー(2)

今回取材させていただいたのは直木賞作家の三浦しをんさん。
 第1回目の前回は、新刊『天国旅行』について語ってもらったが、今回は「作家」という職業について。
 執筆中に行き詰ってしまうことはよくあるという三浦さんだが、そんな時はどうしているのだろうか?注目のインタビュー第2回!


◇ ◇ ◇

■「小説家」という職業

―本作の執筆中に行き詰ったりすることはありましたか?

三浦「うーん…それはわりといつも…(笑)」

―そういう状態はどう抜け出すのでしょうか。

三浦「寝る!」

―あと、ストレス解消法なども教えていただきたいです。

三浦「寝る!あとは漫画読むとか…。すぐ逃避行動に走るので原稿が締め切りに間に合わず、なんてこともあったり…」

―短編集を出す時というのは「この作品は特によかった」などと思うことはあるんですか?

三浦「ないことはないですよ。確かにあります。“これは我ながらうまくいったぜ!”って。でもそういうのは大概勘違いなんですけど(笑)この作品では『君は夜』が気に入っています。いっちゃってる女の人をうまく書けたぞって」

―あれはおどろおどろしいお話ですね

三浦「そうですね、うわぁ、ヤな話って(笑)そういうのが書けるとちょっとうれしいですね」

―かれこれ10年間小説家として作品を発表している三浦さんですが、デビュー当時と今とで小説に変化はありましたか?

三浦「あるといいんですけどねぇ…。全く変わっていないとは思わないですけど…。うーん…わからない(笑)」

―作家というお仕事はオンとオフの切り替えを自分だけでやらないといけません。三浦さんはどのように仕事と休みの切り替えをしていますか?

三浦「私は全然切り替えがうまくいかなくって、書く時間とかも特に決めていないんです。そういう意味ではすごくだらだらしてますね。気が向いたら書いて、締切りが近づいたら書いて…(笑)」

―世の中めまぐるしく変わっていますが、そんな時代における作家の役割はどんなことだと思っていますか。

三浦「すごく売れれば別でしょうけれど、基本的に小説って経済を上向きにするわけでもないですし、実利面ではあまり役に立たないものだと思っています。ただ、みんなそれぞれ持っている日常の憂さから、小説を読んでいる間はちょっと離れることができて、自分以外の人生を体験できる、というところでしょうか。そういうお話を作っていくのが役割と言えば役割だと思います。
また、読んだ人自身の現実や世界の捉え方にも、希望や問題意識が芽生えたらいいなと思いますね。これはなかなか難しいことですけど」

第3回 「小説家」という職業 に続く
第1回 『短編はお題があった方が書きやすい』 を読む