18歳以下が4億人 インドの底知れぬ潜在能力
インドという国にどんなイメージを持っているだろうか。ヨガ、カレー、ガンディー、IT大国、映画大国…そして、2023年には中国を抜いて14億人超の人口世界一となることが見込まれている国だ。同時に様々な宗教と民族、言語が交錯し、社会問題も数知れず。インドはひとことではなかなか言い表せない国である。
■18歳以下が4億人 インドの果てしない潜在能力
『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』(伊藤融著、中央公論新社刊)では、防衛大学校人文社会科学群国際関係学科教授の伊藤融氏が、あまり報じられない陰の部分にメスを入れつつ、キレイ事抜きのインドの実像を紹介する。
インドという国の実力と潜在能力はどの程度のものなのか。2023年、人口世界一が確実視されているこの規模の大きさにくわえて、注目すべき特性はその人口構成だ。
日本では少子化と高齢化が急速に進みつつあり、生産・消費の中核を担う世代の減少が深刻な問題になっている。長く「一人っ子政策」を続けてきた中国も、同様の傾向が指摘され始めている。インドはこれとは対照的に、若い世代の多い「ピラミッド型」の人口構成になっている。2019年に行われた総選挙の有権者数は9億人だった。18歳以上の男女が有権者となるので、18歳未満の子供が4億人以上いることになるのだ。
この人口構成こそ、インドの経済成長の土台となる。1991年に本格的な経済自由化に踏み切って以降、段階的に規制緩和や民営化、外資の導入が進み、年率にしてほぼ5~10パーセントの経済成長が進んでいる。順調な経済成長に伴い、国内総生産(GDP)は着々と伸びている。IMFが2022年に発表した中期予測は、インドのGDPは今後、イギリス、フランスを抜き、2025年にドイツ、そして2027年には日本を追い越して世界第3位になるとしている。
インドの国力は総合的にみて、現時点でも相当高く、今後はさらなる伸びも予測される。インドが経済力や軍事力で、アメリカ、中国に次ぐ3番手につける可能性は高い。米中二極化の可能性も語られる今、インドの動向が世界秩序のカギを握ると考えられると、著者の伊藤氏は述べる。
インドは多くの日本人を惹きつけてきた国である一方、この国を訪れたことのある人は「大好きになるか、大嫌いになるか」に二分されるとよく言われている。実際、インドとはどんな国なのか。現代インドの良いと部分から負の部分まで踏み込んだ本書から、インドの実像を知ってはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)