だれかに話したくなる本の話

【コラム】新刊JPライターが本気で選んだ! “自分的2016年の3冊”《ASUKA編》

いよいよ2016年も今日で終わり、明日から新しい年がはじまります。

今年の単行本売上第1位は石原慎太郎著『天才』でした(トーハン調べ)。しかし、こうしたベストセラー以外にも数々の本が出版され、私たち読者を楽しませてきました。

新刊JPでも普段さまざまな本を紹介していますが、もちろん紹介できていない本も膨大にあります。
そこで今回は2016年に出版された本の中から新刊JPライターでありブックアイドルのASUKAが、これまで新刊JPで取り上げた/取り上げていないに関わらず、「これは本当に面白かった!」という“2016年の3冊”を独断と偏見で選定しました!

一体どんな本が出てくるのでしょうか…?

 ◇

『コンビニ人間』(村田沙耶香著、文藝春秋刊)


芥川賞受賞でも話題になった小説です。

コンビニで働くことで世界とのつながりを感じ、自分なりに社会の一部として一生懸命に働いている主人公。「多数派ではない」「変わっている」「普通じゃない」、それだけで周囲からの視線や言葉が心の内に土足で踏み込んでくる…。作品に攻めの姿勢を感じます。

主人公は忠実に“コンビニ人間”になることで、居場所を見つけ今まで満たせなかった気持ちを満たします。そんな主人公を見て、人は自分が正常でいられる場所を求め続けているのかもしれないと感じました。普通に縛られず、自分の中の普通で満たせて生きられた方がずっと幸せなのかもしれない…そんなことを思わせてくれる一冊です。

『生きていくうえで、かけがえのないこと』(吉村萬壱著、亜紀書房刊)


若松英輔さんが執筆した同タイトルのエッセイがあるのですが、この本と2冊一緒に読むことをおすすめします。

本書は、生きていくうえでかけがえのない「眠る」「食べる」「喜ぶ」「待つ」「憎む」といった25個の動詞をテーマに書かれたエッセイ。吉村萬壱さんは、2003年に「ハリガネムシ」で芥川賞を受賞した小説家で、退廃的な作風を特徴としています。しかし、この本はそれとは違った雰囲気を持ち、心地よさを感じるほど。

今振り返ると、読んでいた時間が尊いと感じる一冊です。

『おやすみ人面瘡』(白井智之著、KADOKAWA刊)


この白井智之さん、ひたすらに奇妙な設定の世界を描く小説家です。

デビュー作はクローン人間を食べる世界、前作では男女が結合する世界を描きました。そして、この『おやすみ人面瘡』は、カエルのような顔の人面の瘤ができる人瘤病がはやるという設定の推理小説です。

かつて人瘤病が広まっていた場所で殺人事件が起きたことから物語は大きく展開していきます。何度も状況もひっくり返されるストーリーに楽しく振り回され、ページを進める度にこの本を読む前の自分に戻れないような感覚を覚えました。白井智之さんという作家、これから注目したいと思います。

(評:ASUKA)

『コンビニ人間 』

コンビニ人間

村田さんのクレイジーっぷりが存分に発揮されてます。

この記事のライター

ASUKA

ASUKA

ダンサー、振付師

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