だれかに話したくなる本の話

『サザエさん』の生みの親 長谷川町子が幼少期に見せていた才能の片鱗

『サザエさんと長谷川町子』(工藤美代子著、幻冬舎刊)

休日が終わる日曜日の夕方にテレビをつけるといつもやっているアニメ『サザエさん』。昨年、放送50周年を迎え、「世界で最も長く放送されたテレビアニメ番組」としてギネス世界記録更新。さらに今年は『サザエさん』の原作者である長谷川町子さんの生誕100周年でもある。

サザエさんと長谷川町子

サザエさんと長谷川町子

作者没後28年なお不動の人気を誇る国民的漫画、アニメの『サザエさん』。だが、15歳で天才少女としてデビューし、72歳で亡くなる5年前まで描き続けた長谷川町子とその家族のことは意外なほど知られていない。戦後の荒廃から日本が怒涛の成長を遂げた時期に『サザエさん』出版を家業として姉妹社を立ち上げた一家は、磯野家の人々とはおよそ真逆の愛憎、かけひき、確執が充満する空間を生きる。度肝を抜く額の収入、家族の不和と崩壊、自伝に書かれた虚―これらをひた隠した長谷川家の三姉妹の、苛烈な人生の光と闇を描いた評伝。