だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1483回 「裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす」

マスコミが全く報道しない福島の現実。3月11日のあとに実際なにが起こっているのでしょう。放射能被害だけでなく、ストレスで身体を壊す被災地住民。危険な地域への一時帰宅。がんばっている人には少ない矛盾だらけの補償金制度。あえて避難所を出ていこうとしない住民。仮設住宅があまっている?いまも「緊急時避難準備区域」(9/30解除)に住み続ける著者が語る、「裸のフクシマ」です。

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マスコミが報じない、フクシマの現在

 今回は、「緊急時避難準備区域」(9/30解除)に指定された場所に、いまも住み続け、現地からみた福島原発事故をリポートし続ける著者の本を紹介します。

● 著者プロフィール  著者のたくき よしみつ さんは、1955年、福島県福島市生まれ。小説、デジタル文化論、デジカメ写真、狛犬美術など幅広い分野で執筆活動を展開しています。2004年末から福島県阿武隈山中で暮らしています。

 たくきさんは原発事故があったいまも、国から「緊急時避難準備区域」(9/30解除)に指定された、福島県双葉郡川内村の自宅に住み続けています。そこは、福島第一原発から約25キロメートルの場所にあります。

 「緊急時避難準備区域」とは、こういうことなのだそうです(本文ママ)。 「何か起きたらすぐに逃げられるようにしておいてね。すぐに逃げられるようにするために、子どもや病気の人、障害者はこの区域にははいっちゃダメだよ。だから、学校や病院は再開させないよ。健康な大人は、どうしてもいたいというならいてもいいけど、何かあっても知らないからね。自己責任でそこに居残ることを決断したということを忘れないでね」 (P2より抜粋)

 原発30キロ圏内の川内村(かわうちむら)という「現場」からの目線で書かれた本書は、福島の中からしか見えない事実、報道されない事実、テレビではこういわれていたが実際にはこうだった、などという現地の人しか知り得ないことばかりが書かれています。今まで、テレビや新聞で知るだけだった福島の現実を知り、少なからずショックを受けるかと思います。

 たくきさんはこのように言います。 「事実を知れば知るほどやりきれなくなるけど、かといって、騙されっぱなし、隠されっぱなしでいるのは悔しい。・・・・そういう姿勢で書いていきたい」 (P4より抜粋)

原発爆発をすぐに報道しなかった理由は・・・?!

 本書では、まず現地では「いちエフ」と呼ぶそうですが、福島第一原子力発電所で起こった事実を述べていきます。そこでは、3/11に地震が起きた直後から、ネットを駆使して情報を集め、翌日、いちばん考えたくなかった事態が起きます。それはつけっぱなしのテレビから流れてきました。

「・・・福島第一原子力発電所では非常用電源が動かず・・」

 原発で電源喪失している? 電気が使えなかったら冷やせないのでは? 空焚きになって爆発するのでは? たくきさんはそのテレビを見た瞬間、そう思ったそうです。それでもまだ、原発が爆発するなんてありえない、そう信じていましたが事態はみなさんもご存知のとおり、最悪な事態になる。

 その原子炉の爆発を一番初めに知ったのは、地元福島中央テレビの定点観測カメラでした。それを目にした福島中央テレビのテロップ処理担当者が、すぐに同局内にあるニュースセンターに、「原発から煙!」と伝え、同局の報道部デスクがすぐに所属するNNN系列のキー局である日本テレビに連絡したのだそうです。

 しかし、日本テレビの判断は、「待て」。そして、日本テレビは全国に、この事実を放送することを決めたのは、福島中央テレビから知らされてから1時間以上も経っていました。

 著者は、この報道を見て、「すぐに逃げなければならない」。そう思ったものの、実際に爆発は1時間半前に起きている。そのときの風向きによっては自宅はすでに高濃度の放射線物質に包まれているかもしれない、それならば外に出るより、家にいた方が……、いや、やはりなるべく遠くに逃げなくては……、と当時の緊迫した状況が細かく書かれています。

事実をすぐに伝えないマスコミ

 事実をすぐに伝えないマスコミ。事実を隠そうとする政府、東電。原発でそのときに何が起きていたのか。そしていま現在はどんなことが起こっているのか。マスコミは真実を伝えてはいるのだろうか。住民たちが本当に望んでいることは何か、どんな思いでいるのか、隠されていた事実、信じられない政府発表、といったことが福島県に住む著者だからこその目線で書かれています。

 経験のないこと、想像しなかったことが起きているのだから、様々な現場で対応しきれなかったのは仕方のないことではありました。しかし、なんとかしなければ、ひとりでも多くの命を救わなければ、守らなければ、という気概が感じられない対応が多すぎた、そうしている間にも人がどんどん倒れ、死んでいった、と著者は嘆いています。

 放射線量計を買い占め、ネットオークションで売って利益をあげている人たち。事故直後から、アメリカやフランスなど世界各国から数万台その放射線量計が寄贈されていたが、それらのほとんどが成田の倉庫に留め置かれたまま配布されなかったという事実。

 「放射性物質の調査」を禁止した気象学会。まだ線量の高い地域への一時帰宅許可。原発周辺の地域では、急性放射線障害で亡くなる住民はひとりもいませんでしたが、原発周辺ということで、物資が届かなかったり、インフラが回復しなかったり、ストレスの増大で心身の疲れが積み重なって亡くなる人がたくさんいたそうです。

対して、避難住民たちは

 また、義捐金や補償金の不公平なからくり。補償目当ての信じられない行動や、三食でお金のかからない避難所暮らしをあえて選ぶ人たち。避難所周辺のパチンコ店が連日盛況だったこと。集団避難所での物資配給に何度も並び、自宅が品物で溢れかえる状況。あまる仮設住宅。造るのも壊すのも膨大な費用。放射能で死んだ人、これから死ぬかもしれない人。

 この本を読むと、マスコミの報道だけを鵜呑みにすることは危険などだということを学びました。自分で情報収集をして、確実な事実だけを選んでいくことがどれほど重要なことかをあらためて知らされます。

裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす

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裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす

裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす

マスコミが全く報道しない福島の現実。3月11日のあとに実際なにが起こっているのでしょう。放射能被害だけでなく、ストレスで身体を壊す被災地住民。危険な地域への一時帰宅。がんばっている人には少ない矛盾だらけの補償金制度。あえて避難所を出ていこうとしない住民。仮設住宅があまっている?いまも「緊急時避難準備区域」(9/30解除)に住み続ける著者が語る、「裸のフクシマ」です。