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旨い仕事論2 仕事で成長するための53の言葉

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インタビュー

―本書は『「旨い」仕事論』の第2弾ということなんですが、前作、『「旨い」仕事論』にはどのような反響が届いていますか?

永田雅乙さん(以下、永田)「前作では道場六三郎さん、長坂松夫さん、北岡飛鳥さんの3人を取り上げていますが、大ベテランの道場さんについては、1つ1つの言葉に重みがあるという感想が届いていますね。あとは、道場さんは「料理の鉄人」の華やかなイメージが強いけれど、人間的な一面が見られた、とか。本当に一流の職人の考え方と一流のビジネスマンの考え方は共通であるというか、結局どんな業界でも、一流になる人はその人の人間性なんだ、と。長坂さんは個性的であり、少々アクが強い方だっていうのが文章から読み取れる一方で、人間的な温かみといいますか、必死で生きている感じが見え隠れしていて良い、という言葉を頂きました。北岡飛鳥さんはフレンチの若手なんですが、『「旨い」仕事論』の読者は若い方も多いということもあって、「共感できる」とか「同世代なのに自由に生きていて、憧れを持った」というような感想が多かったですね。世代も料理のカテゴリも違う3人を選んだのですが、やはり同じ料理業界でも文化が違うんですよね。だから、そういった文化の違い、特に世代間の違いがうまいこと出ていたなという感じがしますね」

―さて、本書はその『「旨い」仕事論』の第2弾となるわけですが、本書では4人の料理人(和食・神谷昌孝氏、パティシエ・鎧塚俊彦氏、中華・五十嵐美幸氏、フレンチ・井上旭氏)がそれぞれの仕事観を語っておりますが、永田さん自身はこの「仕事」というものをどのように捉えていらっしゃいますか?

永田「私の会社は創業して16年目に入ったんですが、年々、自分の実力っていうものが関係していないんだなって思うようになってるんです。昔はヒットしたお店を作れたり、『いい仕事をした!』と褒められたりすると、自分の実力が認められた感じがしたんですが、年々、先輩方とか社員、家族、友人…関わってくれる人のおかげで自分は働けているんだなという実感がわいてくるんですよね。あとはお店もそうなんですが、すごく美味しい料理でも、雰囲気が悪かったり、作っている人がすごく嫌な人だと、料理も不味くなるんですよ。だから、仕事って人柄なんだろうなと思いますね。それと、最近、この5年くらいでまた失敗が増えてきた気がするんですよ。なんでかというと、10年目の頃にそれまでの仕事を振り返ったとき、成功案件ばかり思い出したんですよね。『こういうことあったな』、と。ところが、この間、15年目を迎えて今までを振り返ったとき、迷惑かけた人たちの顔と、アドバイスをくれた、きっかけをくれた人の顔と、失敗案件と、そのときのクライアントの表情とか、そういうことばっかり思い出したんですよ。実は、それが結局、自分の中で学んだ機会というか、そういった人たちに様々なことを学ばせてもらって、今の自分があるんだな、と思ったんです。だから、この5年間くらいは失敗から学んでいる感覚は持ち出していたんで、失敗が怖くなくなりました。とりあえずわからないこともチャレンジですよね」

―本書には「仕事で成長するための53の言葉」というサブタイトルがつけられていますが、ビジネスパーソンとして成長するために必要なことはなんでしょう。

永田「まず一番大事なのは、失敗を学びにすることです。その学び×回数が、成長だと思いますよ。思うんですが、日本の教育っていうのは失敗しないように仕向けるところがある気がするんですね。受験もそうだし、テストもそうですよね。赤点とったら落ちるとか。恐怖を与えながら勉強させるんですね。そういう流れで、結局ビジネスパーソンになっても、怒られないように仕事をするというか、それが根底にくるんだと思うんです。私は基本的には失敗をするように働いてもいいんじゃないかと思います。それは、イコールとして、『わからないことにチャレンジする』ということだと思うんですよね。それで失敗して怒られたら謝って、怒鳴られた場合には何を言われているのかという「事実」だけ受け止める力をつければ良いと思います。だからやっぱりビジネスで成長するには、失敗を学びにするということの感覚を知って、それを重ねていくことが重要です。若いときこそ無知なタイミングですから、チャレンジできることも多いわけで、無知なことっていうのは学べることが多いわけですからね」

―それはある意味、組織にも失敗を許容する文化が必要ですね。

永田「それは大事ですね。私の会社なんて、失敗したときはニヤッとして「チャンス!」って言いますからね(笑)。その代わり、学んでいなかったり、誰かのせいにしたりする場合は怒りますよ。学びになってないかどうかをどう確認するかというと、同じ作業がもう一度、発生したときにまたミスってもいいんですけど、全く同じミスをしているかそうじゃないかですね。質が変わっていて欲しいんですよ。明らかに前回と一緒の場合は怒りますね」

―確かにそうなると、失敗する側も、気兼ねなく失敗されても困りますけど、次にどう結びつけるかを考えますよね。さて、料理人はオーナーシェフでもあったりして、経営者でもあり、優れた経営者は優れた哲学を持っていると思います。そうした哲学を研ぎ澄ましていくためにはどうすればいいのでしょうか。

永田「研ぎ澄ますというよりは…経営者は、経営者としての哲学を持っているのではなくて、自分の人生哲学を持っているんだと思うんですよね。やはり経営者になると、モチベーションを落としていてはいけないんですよ。常に高く保っている必要があります。または評価されたときに浮かれてもいけないんです。つまり、精神の振れ幅をどれだけ抑えるか、なんですよね。けれど、やはり上がり下がりはある。そのときに、どれだけ支えになる言葉をもっているかだと思います。経験上、僕はすごいトラブルをやって怒られたときは「学びのチャンス」だなと思うんですよね。だからそこまで落ち込みはしない。そういうことなのかなという気がしますね」

―本書には53の格言が収録されていますが、永田さんが印象に残っている格言を4人それぞれの方で1つずつお選び頂けないでしょうか。

永田「井上さんでいうと、『幹を忘れた枝葉じゃ、しょうがない』ですね。つまり、温故知新ってことですよね。井上さんはやはりすごい人なので、全ての格言に印象が残っているんですが(笑)。次に鎧塚さんだと、『70歳、80歳で円熟味を増した職人になる』かな。これは、今の為に働いていたんじゃ、働くのはつまらないっていう意味なんですよ。仕事って、だいたい65歳くらいまで続けるとすると、私なんかは「あと30年くらい働くんだろうな」と思うわけですよね。ということは、15年経ったとはいえ3分の1終わったくらいなんですよ。小説で言うとまだ始まったばかりの感じですよね。実はまだ学びの期間なんですよ。だからある程度の売り上げは必要かも知れないですけど、それだけを追うというのは愚かだな、と。ようやく3分の1にきて、過去を振り返ったときに、過去の失敗とか迷惑かけたことから学んだことが、今の財産だなと思えていることわけですから、それを重ねるしかないですよね。これ以上迷惑かけちゃいけないというのはもちろんありますが、でも、失敗しないように生きていてはいけないんだな、とか。あとはミスしたときに、しっかり謝ってリスタートを切ることですよね。五十嵐さんは女性の方なんですが、私は『男性と闘う必要ない』が強く印象に残っています。五十嵐さんの経験を踏まえてこの言葉を読むと、すごく深いんですよね。最後に神谷さんですが、もし読んでない人に伝えるなら『組織の理不尽さが精神を鍛える』ですね。要するに嫌な上司がいようが、どうしようもない環境にいようが、どんなところにも学びが隠されているし、無駄なご縁はないんだよということなんです。それを反面教師にして学んでいけるかどうか、ですね」

―最後に、新刊JPの読者の皆さまにメッセージをお願いします。

永田「『旨い仕事論2』を出させて頂くことになったんですが、これは1に引き続き、私が関わっている外食産業のシェフを取り上げた本です。ただこれは料理本ではなく、ビジネスマンの皆さんに、生きていく、仕事をしていく上で学びになる格言が53個つまっています。こういう苦しい時代だからこそ、先輩の言葉に従ってやっていく、これが必要なんじゃないかというのが僕の考えです。是非お気軽な気持ちで読んでみてください!」

―ありがとうございました!

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