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第2回【個人が貯金をすることは経済活動にどんな影響を与えるの?】

 第2回は貯金についてです!
 この不景気、不安だから「貯金しないと!」と思っている方は多いのではないでしょうか。
 しかし、実はこの「貯金」そのものが、経済活動に結構な影響を与えているんです!

 そこで、今回のテーマは【個人が貯金をすることは経済活動にどんな影響を与えるの?】というもの!
 それでは、経済ニュースの裏の世界に向かいましょう!

◇     ◇     ◇

【GDPとは国内支出の合計であるとともに、国民所得の合計】

 このお話を始めるにあたって、知っておかなければいけないことが2つあります。

 1つは、経済学でいう【貯蓄】とは、単に貯金や資産を指すのではなく【支出に回らなかったお金】全体を意味する、ということ。

 そして2つめは、経済の規模を表す指標のひとつである【GDP】とは、国内の支出の合計と考えられること。

 それを踏まえてお話すると、

 例えば、すべての国民が、毎月いつもより1万円多く貯金を始めると、収入が変わらない場合、使うお金は1万円減るわけですから、GDPも1万円×人口分減ります。

 “誰かの支出は誰かの収入”と考えると、GDPが減ること(=国民の支出の総額が減ること)国民所得が減ること、とも言えるわけです。
こんな調子でみんなが貯金をし続けると世の中に回っているお金はどんどん減っていき、経済の規模が縮小、そして最終的には国民所得も減ってしまいます。

【もうちょっと知りたい!という人へ】

 ここまでを読んで、「貯金すると世の中に回るお金が減るっていうけど、民間企業は銀行からお金を借りて事業をやったりしてるんでしょ?」という疑問を持った方もいると思います。

 まさしくその通りで、企業が銀行からお金を借りて何かをやるということは、貯蓄として凍結されたお金を、世の中のお金の流れの中に引き戻すという作業です。

これが、活発に行われているなら、個人が貯金に走っても何ら問題はありません。

 しかし、不況下だとこうしたことが行われにくくなります。
 なぜなら、民間企業も負債―つまり銀行から借りた「借金」を返済してしまうからです。
これは企業がお金を使わなくなるということですから、「貯蓄」にあたります。

ここで出番となるのが最後の経済主体である政府です。

 政府が貯蓄として凍結中のお金を借り入れて支出に回す、ということをするわけですが、実際にこれをやったおかげで、バブル崩壊後に日本のGDPが大幅に減るのを防いだ、という実績があります。
(新刊JP編集部・山田洋介)




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