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最終回【日本国を1つの企業として考えたとき、経営状況って悪いの?】

 今回でこの連載も最終回! というわけで今回のテーマは【日本国を1つの企業として考えたとき、経営状況って悪いの?】。
 よく日本は借金大国と呼ばれていますよね。インターネット上では「借金カウンター」なんていう、日本の今の借金の総額を表示し続けるメーターを掲載しているサイトもあります。それによると、25日現在で1000兆円を超える借金があるとか…。

 これって普通の企業なら、倒産寸前じゃないの?
 今回はそこらへんのところを探ってみることにしました!


◇   ◇   ◇

【借金が増えているのは日本よりイギリス】

 どんどん膨み続けている日本の借金。
 でも、「日本はヤバイ!」と言う前に他の国と比較してみることにしましょう。そのとき、実は国家の借金、つまり公的債務が膨らんでいるのは日本だけではありません。

 G7(日本、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、カナダ)諸国でもここ15年で比較したとき、最も公的債務が増えているのは日本ではなくイギリスです。
 そもそも公的債務が減っているのは高税率の北欧諸国など、ほぼ一部。
 公的債務が増えているのは日本に限った話ではないのです。

 では、日本の借金の何が問題なのでしょうか?
 実は最も問題なのが「公的債務対GDP比率」の数値です。

 この連載ですっかりおなじみとなった「GDP」。これは「国民の支出の総額」であることは第2回でも述べましたが(→もっと詳しく知る)、この数値が減ると国民所得が減るということになります。

 【日本を1つの企業として例えると「バランスシート不況」】

 企業の経営状況を見るとき、「ストック」(簡潔に言うと貯蓄されている量)と「フロー」(簡潔に言うとお金の流れる量)のバランスを見ます。

 これを国家に当てはめると、GDPは「フロー」にあたることになります。一方の公的債務は「ストック」です。そしてそのバランスを示すのが「公的債務対GDP比率」となるのですが、その数値でG7を比較してみると、日本がダントツでバランスが悪いのです。

 ストックが増えているイギリスでさえも、公的債務対GDP比率の数字は15年間横ばいのまま。しかし、日本は、15年前は公的債務の額がGDPの100%以下だったのに、現在200%近くまで差し掛かっています。

 これはストック=借金の額に問題があるのではなく、GDP成長率の伸び悩みに問題があります。

 政府が景気対策などを行っても、借金返済に注力している民間企業がなかなか負債の増加に転じず、GDP成長率は高まりません。また、政府もメディアが「借金大国」などと連呼するため、積極財政に転じることができないのが現状です。
 ここから先は、『経済ニュースの裏を読め!』を読み、もっと経済の裏を探ってみてください。

 さて、ここまで全4回にわたりお伝えしてきた連載、いかがでしたでしょうか。経済のことを知っておくことで、社会を見る目がちょっとは変わるかも知れませんよ?

(新刊JP編集部/金井元貴)




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