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「FGHファミ通ゲーム白書2008」内容紹介

Page2:「ゲームバブル」は「バブル」じゃない!?

矢島
次はですね、日本のことに関してなんですが、「Wii」や「ニンテンドーDS」が出てからゲームをする人というのが、それまでの「1人で楽しむ」とか「ゲームの手ごたえを楽しむ」というヘビーユーザー、いわゆる「ゲーマー」ですね。そうした、ゲーマーの方だけではなくて、ライトユーザー、つまり、「家族で楽しむ」とか「初心者が気軽に楽しむ」というゲームのスタイルが増えてきたように感じるんですね。
『ファミ通ゲーム白書2008』には2007年度のものが掲載されていましたが、2007年の1位が「Wii スポーツ」(任天堂)、2位が「モンスターハンターポータブル 2nd」(カプコン)とですね、「みんなでやる」とか協力型といったゲームが上位を占めていますよね。今後も、この傾向は拡大していくんでしょうか。
上床
そうですね。ゲーマーの方々が楽しめるゲームが少なくなっているわけではなくて、そういうゲームは以前と同じようにあります。そういう状況で、ゲーム業界のゲーム市場、市場規模といわれているものが非常に拡大した裏側には、ライトユーザー層だとか、そういう市場が、主に「ニンテンドーDS」、去年でいうと「Wii」が開拓した層なんですけども、それがコアな方々のゲーム層に乗っかるかたちでランキングの上位を締めたんですね。
で、僕らが見ているのは、ライトユーザー層がやっとゲームの門を叩いて入ってきたわけなので、例えば今まではコアなゲームを楽しむ層の人たちだけが楽しんでいたゲームっていうものにちょっと入っていったり、逆に、新しい遊び方を提案したそういうゲームに、コアなゲームだけを楽しんでいらっしゃる方々もそっちにいったりするなかで、増えてきたものがさらに融合するのではないか、と。そういう風に見ていますね。
矢島
つまり、僕が今まで感覚としてあった「ヘビーユーザーが減った」ということではなくて、「ヘビーユーザーが目立たなくなった」ということなんですね。数自体はそんなに変わりはなく、その上にライトユーザーがどんどん増えてきた、と。
上床
あと、パーソナルと家族でという意味で言うと、さらに両極化するのかなっていう気がしますね。携帯ゲーム機っていうのが市民権を得てきたので。
矢島
あの、パーソナルなゲーム機でも、さっきあげました「モンスターハンターポータブル 2nd」はオンラインにつないで、多人数プレイが出来たりしますよね。テレビでCMしていた「みんなのGOLF」(ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン)でいろんな人とプレイが出来たりとか、そういうものもあるわけですよね。
上床
パーソナルな世界と、「Wii」みたいに一つの部屋で、みんなで楽しむっていうコミュニケーションがとれるものと、一見パーソナルなんだけれども、ネットにつながってコミュニケーションっていう。
矢島
なるほど。上手くまとめてくださってありがとうございます(笑)。
ではですね、次の質問なんですけども、少しちょっといやらしい質問なんですが(笑)、「ゲームバブル」という言葉がありまして、「今はゲームバブルだ」みたいに世の中で言われているんですけども、このバブルというのは本当にまだまだ弾けないで続いていくのでしょうか。またですね、ゲーム業界の好況を享受しているのは大手の任天堂とか他数社だけなんじゃないかという懸念があるのですが、そのあたりはどうですか?
上床
もしこれが、ゲームバブルなら必ず弾けると思いますが、僕らはゲームバブルだと見ていませんね。
矢島
なるほど。バブルではない、と。
上床
つまり、中身がある。中身がないものはいずれ弾ける。
矢島
弾けます。
上床
だから、中身があるんですというふうには考えていますね。
矢島
なるほど。その中身を1つ例えて言うとすると?
上床
先ほど言ったように、新しいユーザー層が入ってきて、さらにまたコアなユーザー層も遊び方が広がる。つまり、その中で、ユーザーの遊び方の選択肢というのはどんどん広がっているわけですよね。ある人たちだけが楽しむためのものから、色んな人たちが、Aという人がAという人なりに、Bという人がBという人がBという人なりに楽しめる、いろんな遊び方のゲームが広がってきたのかな、と。
それを開拓してきたのが任天堂さんです。任天堂が開拓してきたそういう新しい層です。普通に考えて、当然それを有効に利用しない手立てはないので、他の会社も、絶対頑張ってくると思います。
矢島
マーケティングに見ると、任天堂が開拓した、ベンチャーだったとかフロンティアだったという層が、今、アーリーステージからさらにその上に行こうとしているっていう感じなんでしょうかね。
上床
おそらくそうだと思います。
矢島
他の会社が参入しやすいというか、参入できるチャンスなんですね。
上床
そうだと思います。もっと正直に言うと(笑)、「ニンテンドーDS」というのは、やはりタイトル数とかいろんな部分でいくと、2006年に相当、任天堂がいろんなタイトルを押し込んできたんですよ。テレビの出稿量だとかを見てもそれは明らかです。ですが、去年の後半…年末にかけて、それが「Wii」にシフトしていって、良い言い方をすると、サードパーティーのメーカーさんに道を開けたみたいなかたちにも見えるような、タイトル数とか宣伝の力の入れ方になってきている、そういう風にもデータから見て取れることはできるんですね。
矢島
なるほど。そうか、その辺りは注目のポイントですね。

編集長プロフィール

上床 光信
mitsunobu uwatoko

株式会社 エンターブレイン
ファミ通ゲーム白書 編集長
(マーケティング企画部 チーフアナリスト)

エンターブレイン発足時の2000年より、マーケティング業務を担 当。
『ファミ通ゲーム白書』は、創刊時より編集長として関わっている。
好きなゲームは、ベタだが『ポケモン』シリーズ。