だれかに話したくなる本の話

松井・清原に匹敵 掛布雅之が期待するタイガースの四番候補

3月25日に開幕するプロ野球。
2021年シーズンのセ・リーグは、阪神タイガースが77勝56敗10引き分け、貯金21という好成績を残しながらもゲーム差なし、勝率5厘差で2位に終わるという大激戦だった。

2005年以来、16年ぶりの優勝を惜しくも逃したタイガース。その理由の一つとして挙げられているのが「四番打者の不在」だ。伝統ある球団の四番打者は誰にでも務まるものではない。タイガースで四番を務めた経験が豊富な掛布雅之さんは、著書『阪神・四番の条件 タイガースはなぜ優勝できないのか』(幻冬舎刊)でその資質を語る。

■掛布雅之が期待する「5代目ミスター・タイガース」の最有力候補

本書では、四代目「ミスター・タイガース」と呼ばれ、1985年には阪神タイガース不動の四番打者として球団初の日本一に貢献した掛布雅之さんが、2021年シーズンの敗因を分析するとともに、チームの中核を担う四番打者とは何か、なぜ次なる「ミスター・タイガース」が育たないのか、ライバルの巨人との違いについて、過去の強打者や他球団の四番打者を振り返りながら解説する。

昨シーズン、阪神が優勝を逃した大きな原因は、「4年連続リーグ最多エラー」や「真の四番打者不在」といったことが挙げられる。村上宗隆選手(ヤクルト)、岡本和真選手(巨人)、鈴木誠也選手(広島)と、近年優勝している球団には、例外なく不動の四番打者の存在があった。阪神には、真の四番打者であり、「ミスター・タイガース」と呼ばれるチームの顔となる選手が不在だったのだ。

掛布さんは「ミスター・タイガース=四番打者」について5つの定義を挙げている。

1.孤高に耐えうる精神力を持っていること
2.タイトルを複数回獲得していること
3.試合に出続けていること
4.相手チームの四番とエースからリスペクトされていること
5.チームリーダーとして優勝を経験していること

では、今の阪神で5代目ミスター・タイガース候補は誰なのか。掛布さんがその筆頭に挙げているのが、2020年のドラフト会議で4球団から1位指名を受け、競合の結果阪神に入団した佐藤輝明選手だ。

2021年シーズン前のキャンプで佐藤選手の打撃練習をチェックした掛布さんは、佐藤選手のアッパースイングを見て「大丈夫だろうか」と心配したという。ただ、2日目にはレベルスイングに変わっていて、打球の角度も修正され、飛距離も伸びていた。

わずか1日で問題点を「修正する能力」、初めてのプロ野球に「対応する能力」に掛布さんは驚かされたそう。このとき、佐藤選手の潜在能力は清原和博氏や松井秀喜氏に匹敵する素材だと感じたという。

結局、佐藤選手はルーキーシーズンで126試合に出場し、24本の本塁打を放つ。この本塁打数は、1998年に高橋由伸が打った19本、「青バット」で人気を博した大下弘が1964年に残した20本を抜く、新人左打者の歴代最多本塁打となる。プロ1年目に18本塁打以上した選手の約半数が新人王を受賞し、即戦力プレーヤーから、打撃タイトルを獲得する名選手に飛躍している。

打率は.238と一流打者の証といわれる3割には届かなかったが、2022年以降さらにどうやって対応していくのかに注目だ。佐藤選手は将来「5代目ミスター・タイガース」に自然になっていき、バースのような三冠王を獲れる打者になる、と掛布さんは期待を寄せる。

本書の中では辛口な評価もしているが、それもすべては愛する阪神タイガースのため。2022年のペナントレースでの阪神はどうなるのか。掛布さんが阪神復活への道標を示した本書とともに、プロ野球を楽しんではどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)

阪神・四番の条件 タイガースはなぜ優勝できないのか

阪神・四番の条件 タイガースはなぜ優勝できないのか

1985年、バース・掛布・岡田の強力打線が原動力となり、初の日本一となった阪神タイガース。
しかし、これを最後に頂点の座から遠ざかり、2006年以降はリーグ優勝もない。
この長い不振は、「ミスター・タイガース」と呼ばれた藤村、田淵、掛布に続く「不動の四番」が現れないことに一因がある。

一方のライバル・巨人は大補強を行いながらも、四番は原、松井、阿部、岡本ら生え抜き中心だ。
なぜ阪神では四番が育たないのか?
自身の経験や歴代強打者との比較、ライバル巨人との関係性を通して四番打者について論じるとともに、タイガース復活への道標を示す。

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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