だれかに話したくなる本の話

2021年マスターズ制覇 松山英樹が明かす胸の内

2021年、プロゴルファーの松山英樹選手は、アジア人初となるマスターズ・トーナメント制覇。優勝者に贈られるグリーンジャケットに袖を通した。

ゴルフの世界には、メジャートーナメントという長い歴史をもつ大会がある。男子では、マスターズ・トーナメント、全米プロゴルフ選手権、全米オープン選手権、全英オープン選手権、の4大会が毎年行われ、プロゴルファーたちは、このメジャー大会でのタイトル獲得を目標にする。

松山選手が制覇したマスターズは、4日間72ホールで争われるこの大会は世界中のゴルフファンが熱狂する祭典。そして、優勝者にはこのクラブの名誉会委員として大会への生涯にわたる出場権が与えられるとともに、その証として、グリーンジャケットが贈られるのだ。

■ゴルフは「うまくいかない」を楽しむスポーツ

マスターズ制覇や成功体験が取り上げられがちだが、何をやってもうまくいかないときもあったという。『彼方への挑戦』(松山英樹著、徳間書店刊)では、松山選手が長い時間、自分なりに悩み、考えたこと。ゴルフへの向き合い方や、普段メディアではあまり語らない本当の自分の姿、本当の心の声を綴る。

子どもたちには、ゴルフをプレーするうえで、楽しむ気持ちだけは絶対に忘れないでほしい、と松山選手は語る。好きでないと、楽しいと思えないと、ゴルフはなかなか続けられないからだ。

世界で活躍する松山選手でも、完璧だと思ったショットが、芝が削られたディボット跡に入ったり、突風に吹かれて池に入ってしまうこともある。思い通りにならないことのほうが多い。「すべてが完璧だ」と思えるショット、パットはすべてのストロークのうちで10分の1に満たないという。つまり、ゴルフはたくさんの「うまくいかない」をつなぎ合わせてスコアをつくるゲームといえるのだ。

しかし、こうも言える。ほとんどのショットうまくいかないから、うまくいったときが楽しいのだ。うまくいかないから、うまくいったときを想像する。なぜ、うまくいかないかを考え、それを突きつめるのが楽しい。ゴルフは「うまくいかないを楽しむ」スポーツであると、松山選手は述べている。

ゴルフの技術はもちろんだが、精神的なプレッシャーや重圧とどのように向き合い、打ち勝ってきたのか。「日本人には無理だ」と言われ続けたマスターズ優勝を成し遂げた松山選手がゴルフを通じ、どのように人間性を高め、メンタルを鍛えたのか。ゴルフだけでなく、他のスポーツや勉強、仕事をするうえでも学ぶべきところは多いはずだ。

(T・N/新刊JP編集部)

彼方への挑戦

彼方への挑戦

語らないトップアスリートが、初めて明かす心の内側――。
ゴルフとの出合いからマスターズ制覇までの知られざるエピソードを自らと向き合い余すところなく綴った唯一無二の自叙伝。

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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