だれかに話したくなる本の話

現代病「脳が休まる時がない」を解決する口癖は?

以前と比べたら私たちの日々の生活はとても便利になったし、過度な働き方は少しずつではあるにせよ是正されつつある。これで、身体的な負担も、精神的な負担も少しずつ減っていくはず…だったのだが、疲労の度合いは変わらない。むしろ、脳に限っては以前よりも疲労を感じるようになった。 「体はともかく、頭が疲れている」 こんな感覚を持っている人は少なくないのではないか。

脳疲労が蓄積されると、幸福感を得られにくくなり、労働のパフォーマンスを落としてしまう。

メンタルヘルスの臨床医として日本とアメリカで25年以上のキャリアを持つ精神科医の久賀谷亮さんは、『ロスの精神科医が教える 科学的に正しい 疲労回復最強の教科書』(SBクリエイティブ刊)の中で次にように警鐘を鳴らす。

私たちは疲れています。特に身体を休めても癒えない「脳疲労」が深刻です。デジタル社会はログカーブのスピードで脳に負荷を与え、ストレスは脳をネガティブな色に染めます。もう脳にはスペースが残っていないのです。疲れるのも当然でしょう。(p.1より引用)

久賀谷氏が言うには、現代に生きる私たちの脳は常に満杯状態であり、いつも負荷がかかっている状態なのだそうだ。
コンピューターはマルチタスクが当たり前だが、人間の脳はそうではない。タスク数が増えれば、それに比例して脳のスペースは奪われる。また、老後の心配など未来についてのネガティブな情報も脳のスペースを奪ってしまうという。

では、脳にスペースを作り出し、疲労状態から抜け出すにはどうすればいいのか? 本書から2つほど紹介しよう。

■笑顔を作って感情と記憶を操作する

これは、笑顔を無理やりに作るという方法だ。
本書によれば、表情を意図的に作ることで感情をコントロールできるという。例えば人為的に口角を引っ張り上げて笑顔を作ると幸せな気分に、口角を下げて悲しい顔を作ると悲しい気分になるのだという。つまり、幸せな気分を自ら作り出し、脳にスペースを作るのだ。

ただ、無理に笑顔を作るということに、だんだんと疲れてくるかもしれない。
そういうときは、「過去に幸せだった瞬間」「過去にとても愉快だった瞬間」を思い出そう。心が落ち込んだ時、助けになるのはそうした瞬間を思い出すこと。笑顔と思い出が、脳の疲労を和らげるのだ。

■「まいっか」を口グセに脳のバーストを防ぐ

久賀谷さんによれば、「まいっか」という言葉は苦難を乗り切った人々が期せずして口にする言葉なのだそう。

この言葉が示すのは「完全主義」からの脱却だ。常に右肩上がりを求められる私たちは常に理想を追い求め、失敗は許されないと感じる。しかし、だんだんと理想と現実に乖離が生まれ、ギャップを感じてしまうと、精神的に追い詰められてしまう。
そこで、「まいっか」「しょうがない」「なるようなるさ」といったフレーズで、今の自分を受け入れるのだ。完全を求めることをやめれば、脳が鎮まり、新たなスペースが生まれるはずだ。

 ◇

常に何かを考えていて、頭が休まっていないという状態は、もはや「現代病」といえるものなのかもしれない。

本書ではこのほかにも様々なスペースの生み方、脳の疲労を取り除く方法が紹介されている。その中には「笑顔を作る」というように、すぐに実践できるものも多い。頭がすっきりした状態を保つために参考にしてみてはいかがだろう。

(新刊JP編集部)

ロスの精神科医が教える 科学的に正しい 疲労回復 最強の教科書

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究極の疲労回復に至るステップを、25余年の経験を持つ精神科医が科学的エビデンスに基づいて紹介。

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